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様子見姿勢強まる可能性あり-今週の暗号資産を読み解く。

暗号資産市場の動向(5/30-6/5)

先週の暗号資産(仮想通貨)市場の動きは、神経質な展開となりました。

週初堅調な動きから始まったビットコイン(BTC)は400万円台およびドルベースで3万ドル台でのもみ合いでしたが、6月1日に発表された米国ISM製造業景況指数(5月)が56.1と、4月の55.4を上回る堅調なものとなり、改めてインフレに対する警戒感が強まり、株式市場とともに暗号資産市場は弱含みとなりました。

週末6月3日には米国雇用統計の発表があり、失業率は3.6%と3ヵ月連続の水準を維持し、非農業就業者数は39万人の増加と予想の31.8万人を大きく上回りました。この発表によりインフレへの警戒が強まり、株式市場、暗号資産市場ともにさらに弱含みの動きとなりました。

その後、ビットコインは390万円前後、イーサリアム(ETH)は23万円台の動きとなっています。ただし、ビットコインは先週も言及していた29,000(約378万円)ドルをキープしています。

今週は様子見姿勢が強まるか

今週は、6月9日にECB(European Central Bank)理事会が開催されます。ラガルド総裁が公式ブログで①量的緩和の早期終了の見込み②7月の理事会で利上げが可能になる③9月末までにマイナス金利政策を終える意向などを公表しています。

特に対ドルを中心として弱含みとなっているユーロの動きがEU域内のインフレを助長していると考えられ、利上げによるインフレへの対処が注目されます。ちなみに、5月31日に発表されたユーロ圏の消費者物価指数(速報値)は前年同月比で8.1%上昇しています。4月の改定値7.4%から加速し1997年以降の最高を更新しています。

また、6月10日には米国CPI(消費者物価指数5月)の発表がありますので、暗号資産市場の動きは株式市場とともに様子見姿勢が強まると思われます。全体としてもみ合い状況の中、ビットコインの水準が引き続き注目されます。

政府による暗号資産に対する動きが活発化

岸田文雄首相は英国で行ったスピーチで「資本主義をバージョンアップするために官民連携で社会課題を解決し、課題とされる分野に新たなマーケットをつくる」との意向を示し、その上で、重点分野の一つ「グリーン、デジタルへの投資」の一環として、Web3.0の推進にも触れました。首相は、「ブロックチェーンやNFT(非代替性トークン)、メタバースなどWeb3.0の推進のための環境整備も含め、新たなサービスが生まれやすい社会を実現する」と発言しています。

こうした動きを受けて国民民主党の玉木雄一郎代表は予算委員会において、Web3.0の経済圏を推進するため、暗号資産への課税制度の改正を提案しました。

具体的には以下について提案を行っています。

  • 暗号資産(仮想通貨)の課税を雑所得ではなく20%の申告分離課税とする。
  • 発行法人が保有するトークンは、期末時価評価の対象から除外し、実際に収益が発生した時点で課税する方式に見直す。

このような玉木代表の提案に対して、岸田首相は「慎重に検討する」と答弁しただけでしたが、補正予算成立後に玉木代表と挨拶した際、Web3.0の減税を進める趣旨の発言をしたそうです。今後の政府の取り組みが注目されます。

ステーブルコイン規制含む改正資金決済法成立

世界的に市場規模が膨らむステーブルコインについて、金融システムリスクを抑え、投資家保護を強化するための改正資金決済法が6月3日に参議院本会議で可決成立しました。

政府は世界で広がるWeb3.0経済圏への取り組みを推進するため、支援体制を整備強化するとともに、世界の潮流となりつつある規制の強化についても体制を整えつつあります。

Profile ◉倉本 佳光(くらもと よしみつ)
慶應義塾大学法学部法律学科を卒業後、山一証券株式会社に入社し金融業界でのキャリアをスタート。
その後メリルリンチ日本証券株式会社、岡三アセットマネジメント株式会社で手腕を発揮。
これまでにリテール及び機関投資家への営業、上場企業の資金調達、IPO、M&Aなどの業務を担当し、現在では「株式会社J-CAM」にて総合的な金融コンサルタントとして活躍している。