2022.05.02
米国の動向が市場を左右する-今週の暗号資産を読み解く。
暗号資産市場の動向(4/25-5/1)
先週(4/25-5/1)の暗号資産(仮想通貨)市場は、週初にイーロン・マスク氏によるツイッター社買収の話題からドージコイン(DOGE)が買われる場面などがありましたが、基本的には週を通じて全体的に軟調な展開となりました。
特に米国株式市場がアマゾンなどの企業の決算発表を受けて、週末4/29(金)にはNYダウ平均▲939ドル、S&P500▲155、NASDAQ▲536と大幅な下落となりました。こうした米国株式市場の動きを受けて、ビットコイン(BTC)は510万円台を付ける場面もありましたが490万円台へ下落し、イーサリアム(ETH)やリップル(XRP)も35万円台、76円台へ調整しています。
今週は5/3-5/4にFOMC(米連邦公開市場委員会)が開かれ、FRB(米連邦準備委員会)が「0.5%の利上げと保有資産の縮小」を決める見通しです。FRBによる金融引き締めの姿勢が明確となり、市場はより警戒感を強めると思われ、慎重な市場展開が想定されます。
米国フィディリティ、退職金口座でビットコインへの投資可能に
米国の大手資産運用会社であるフィディリティ社が確定拠出年金の口座でビットコインをはじめとした暗号資産への投資を可能とする方針を4月26日に発表しました。
これは確定拠出年金の「401(k)プラン」の利用者を対象としたもので、拠出額の最大20%までビットコインへの投資をすることができ、今年の夏にサービスを開始する予定です。
米国フィディリティ社は、約23,000社に対して「401(k)プラン」のサービスを提供しています。運用資産の総額は約4.2兆ドルと資産運用会社として世界的な大手企業です。
今回の仕組みによりフィディリティ社からサービスを受けている「401(k)プラン」の加入者は、暗号資産の取引所に口座を開かなくてもビットコインへ投資をすることができるようになり、また退職金口座として課税を繰り延べることができる利点もあります。すでにチャールズ・シュワブ社など数社で同様なサービスが始まっています。
米国労働省が懸念を表明
米国労働省の従業員給付保険局は「暗号資産市場のボラティリティの高さに懸念」とコメントしています。米国労働省は4月10日に「401(k)プラン」サービスの退職金口座での暗号資産投資について調査すると発表していました。
労働省は「暗号資産のボラティリティの高さや未整備な規制環境など」をポイントとして退職金口座での暗号資産投資に懸念を表明し、「401(k)プラン」サービスを提供している運用会社などが「提供する商品のリスクについて投資家へ知らせる責任がある」としています。
労働省の方針は、すでに発表されたバイデン大統領の「暗号資産に関する大統領令」に則するものと考えられ、「デジタル資産の責任ある発展の実現」を目指すものと思われます。
厚みを増す暗号資産市場
暗号資産市場の投資家として、すでに多くの機関投資家が参入していますが、今回退職金のファンドとはいえ、個人が自身で考え投資する「401(k)プラン」で投資ができる事は画期的と考えられます。
日本国内の企業型DC(企業型確定拠出年金)やiDeCo(個人型確定拠出年金)での暗号資産への投資はかなりハードルが高いものと思われますが、ビットコインが登場してからの価格の推移を見ると暗号資産の代表的な銘柄であるビットコインやイーサリアムなどは長期投資に適しているのではないかと思われます。
昨年11月の高値以降や高値周辺の価格で暗号資産へ投資した方は、現在評価損となっている方が多いと思われますが、それ以前に投資されて長期に保有している方や積立投資をしている方などは現在評価益となっているのではないでしょうか。
今後、米国労働省などによる規制が整備され安全性も高まり、米国内での暗号資産の認識がより広がるものと思われ、暗号資産市場の厚みが質量ともに増していくと考えます。
米国での確定拠出年金制度等での暗号資産への規制が整備され、制度の安全性、信頼が高まれば日本国内での投資対象としての検討も始まると思われ、今後の展開が期待されます。
Profile ◉倉本 佳光(くらもと よしみつ)
慶應義塾大学法学部法律学科を卒業後、山一証券株式会社に入社し金融業界でのキャリアをスタート。
その後メリルリンチ日本証券株式会社、岡三アセットマネジメント株式会社で手腕を発揮。
これまでにリテール及び機関投資家への営業、上場企業の資金調達、IPO、M&Aなどの業務を担当し、現在では「株式会社J-CAM」にて総合的な金融コンサルタントとして活躍している。