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不安定な相場続くも底固めに動くビットコイン-今週の暗号資産を読み解く。

暗号資産市場の動向(5/9-5/15)

先週の暗号資産(仮想通貨)市場は、米国株式市場に振り回されるような展開となりました。週初9日(月)はNYダウ平均▲653ドル、S&P500▲132P、Nasdaq▲521Pと株式市場が大きく下げ暗号資産も大きく下げる動きとなりました。週央にかけても軟調な動きが続き、週末13日(金)には米国株式市場が反発したことから堅調な動きとなったものの、14日-15日(日)には軟調な動きとなりビットコイン(BTC)385万円、イーサリアム(ETH)26万円、リップル(XRP)54円周辺での動きとなっています。

最近の暗号資産市場は、米国株式市場との連動制が高まっています。米国の株式市場はウクライナ戦争、中国ゼロコロナ問題、インフレ対応と大きな問題に直面していますが、まだその内容を消化しきれていません。これらのどの問題についても長期化すると考えられ、当面は神経質な展開が続くと思われます。

「あってはならない」ステーブルコインの価格崩壊

先週は他にも驚くことが起きました。米ドルなどの法定通貨と価値が連動するように設計されたステーブルコイン「TerraUSD(UST)」がステーブルコインとして機能すべき米ドルとの1:1の価値を外れてしまい急落となりました。これは価格を安定させるためのアルゴリズムが市況の急悪化と流動性を提供していた大口売りなどの影響により機能しなくなったためです。現在も25円程度で推移していて、前週比80%程度安い水準にあり、回復には程遠い状況です。

5/9-5/15のTerraUSDチャート
引用元:CoinGecko

このような動きにより他のステーブルコインに対しても「ステーブルコインへの安全性」への疑いが強まり、12日にはテザー(USDT)も一時下げる場面がありました。テザーは裏付け資産として米ドルを保有していますが、その米ドル資産は現金、預金のほかは米国国債や社債となっています。その債券類や譲渡性預金で運用損が発生するリスクがあると懸念が発生し、売られる場面がありました。

TerraUSDに関わる「LFG」とその対応

ステーブルコインに対する市場の動揺を受けて、暗号資産テラ(LUNA)の非営利組織である「Luna Foundation Guard(LFG)」は今月9日、「金融市場の下落が暗号資産市場にも広範な影響を及ぼした」として、累計2,000億円(15億ドル)相当のビットコインとTerraUSDを貸し出していく方針を発表しました。LFGは、TerraUSDに関連するLUNAなどの準備金を保有する団体で、シンガポールに拠点を置き、主にテラ経済圏の支援を行っています。

米議会をも動かす展開に

ステーブルコインについては、イエレン財務長官が下院金融サービス委員会の公聴会で、暗号資産などデジタル資産に関して「新しい製品や技術がイノベーションを促進し、効率性を向上させる機会を提供する可能性がある」と述べました。その一方で、「金融システムにリスクをもたらす可能性があるため、規制を広げていくことが重要だ」とコメントし、改めて規制策定の重要性を強調した格好です。

またすでに問題が発生していたステーブルコインについて「(ステーブルコイン市場は)金融安定性について懸念がある規模に達しているとは言えないが、テラが米ドルからのディペッグを起こし(1ドルの価値を保てなくなり)、テザーも同様の圧力を受けている状況だ」「こうした現在の規模では、金融安定性に対する本当の脅威とは言えないが、ステーブルコイン市場は非常に急速に成長していることも確かで、従来の取り付け騒ぎと同じような種類のリスクを示している」とコメントしています。

特に、決済用ステーブルコインについては、「包括的な規制枠組みの対象にしていきたい」としています。

今後、ステーブルコインに限らず暗号資産全体に対しての米国政府による規制が整備され、投資家にとっての安全性が増していくものと考えられます。日本政府も追随することになると思います。

今週の相場はどうなる?

結論から言うと、今週も不安定な相場感が続くものとみられます。ビットコインをはじめとした暗号資産はTerra USDの問題よりも、やはり米国の株式市場に左右される可能性が高いと考えられます。

状況によってはビットコインが再び3万ドル(約386万円)を割り込むことも十分に考えられます。しかし、現在のビットコインは下値固めの第1弾とも言える状況で、3万ドル付近では厚いサポートが機能しています。この状況からも、3万ドルを下回った際にはビットコインの購入を選択肢の1つとして考えてもいいのではないかと現状では言えます。

いずれにしても、当面の間は暗号資産にしろ株式にしろ、様々な金融資産が不安定な推移を見せると思います。投資をする際にはくれぐれも熱くなりすぎないよう、気をつけてください。

Profile ◉倉本 佳光(くらもと よしみつ)
慶應義塾大学法学部法律学科を卒業後、山一証券株式会社に入社し金融業界でのキャリアをスタート。
その後メリルリンチ日本証券株式会社、岡三アセットマネジメント株式会社で手腕を発揮。
これまでにリテール及び機関投資家への営業、上場企業の資金調達、IPO、M&Aなどの業務を担当し、現在では「株式会社J-CAM」にて総合的な金融コンサルタントとして活躍している。