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景気後退の動向が市況を左右する-今週の暗号資産を読み解く。

暗号資産市場の動向(5/16-5/22)

先週の暗号資産(仮想通貨)市場は引き続き米国株式市場の動きに左右される展開が続きました。

17日(火)に米国小売売上高(4月)が6,777億ドル(約87兆8,000億円)と発表され堅調な消費が確認。また中国上海のロックダウン(都市封鎖)が6月中にも解除されるというニュースも好感され、米国株式市場は堅調な展開となりました。こうした動きを受けて暗号資産もビットコイン(BTC)が388万円台、イーサリアム(ETH)が26万6,000円周辺のしっかりした動きとなりました。

しかし翌18日(水)、ウォルマートやターゲットなどの小売り関連企業の決算が思わしくなく、米国株式市場は大幅安となりました。NYダウ平均は▲1,164ドル、S&P500は▲165ポイント、Nasdaqは▲566でした。

週末にかけての株式市場は小安い展開となりましたが、暗号資産市場は逆に落ち着いた様子となり、ビットコインが376万円台(29,300~29,400ドル)と3万ドル割れの水準でのもみ合いから382万円台(30,000ドル近辺)の動きとなっています。暗号資産のビットコインやイーサリアムはこの数年で投資家層の幅を広げ、機関投資家や大手企業も加わり伝統的な金融市場との連動制を高めてきましたが、先週末にやや異なった動きを見せつつあるように見受けられます。

景気後退(リセッション)を意識するマーケット

米国経済は、これまでインフレ対処に向けた金融引き締めを大きなポイントにしていましたが、引き締めが始まってからは終わりの見えないインフレが基とはいえ、この後に来る景気後退(リセッション)を強く意識し始めています。株式市場の下げもリセッションによる企業業績の悪化を懸念し始めたと考えられます。

FRB(連邦準備制度理事会)は、今後2回にわたり0.5%の利上げを表明していますが、米国景気が後退となれば金融引き締めはインフレに対処するとはいえ、その後はやや手綱を緩めることになるかもしれません。引き締めが緩和されるとドル高も止まり、金や暗号資産への投資意欲が高められる可能性が出てきます。

今週(5/23〜5/29)の暗号資産

米国では、24日(火)に米国製造業PMI、25日(水)に米国耐久財受注の発表があり、さらに25日に連邦公開市場委員会(FOMC)の議事録が公表されます。これらの内容によってFRBの今後の動きが左右されると思われ注目されます。米国景気のリセッション懸念が膨らむような様子になると、株式市場はさらに調整色を強めると思われますが、金利はやや緩み、為替もドルが少し弱含みになるかもしれません。

先週の当欄で、ビットコインの3万ドル割れ水準に注目するコメントをしていますが、今週もこの水準を固めるような動きとなるのではないでしょうか。

Profile ◉倉本 佳光(くらもと よしみつ)
慶應義塾大学法学部法律学科を卒業後、山一証券株式会社に入社し金融業界でのキャリアをスタート。
その後メリルリンチ日本証券株式会社、岡三アセットマネジメント株式会社で手腕を発揮。
これまでにリテール及び機関投資家への営業、上場企業の資金調達、IPO、M&Aなどの業務を担当し、現在では「株式会社J-CAM」にて総合的な金融コンサルタントとして活躍している。