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各国のインフレ対策動向がカギに-今週の暗号資産を読み解く。

暗号資産市場の動向(6/6-6/12)

先週の暗号資産(仮想通貨)市場は、前半は中国株式市場の上昇や7日に公開された「米国超党派の包括的暗号資産法案」の内容が好感され堅調な展開となりました。しかし週末の米国消費者物価指数(CPI)の発表を控え、徐々に慎重な動きとなり、そして11日に発表された米国消費者物価指数は前年同月比+8.6%と40年ぶりの大きさとなりました。

この結果を受けて金利上昇リスクが高まり、金融市場は大きく荒れる展開となりました。株式市場ではNYダウ平均が880ドル安と大きく下げ、米国10年債利回りは3.16%に上昇、ドル円は134円台となりました。暗号資産市場もリスクオフが進む状況となり、ビットコイン(BTC)は29,000ドル(約390万円)を割れ、円ベースで370万円前後の動きとなりました。

今週も15日に米国連邦公開市場委員会(FOMC)、16日に英国中央銀行政策金利決定会合、17日に日本銀行金融政策決定会合と主要国での中央銀行の会議が相次ぎますので、インフレに対しての各国の対応について注目が集まります。

先週10日に欧州中央銀行(ECB)が11年ぶりに利上げを決定しており、米CPIの結果もあり各国中央銀行のインフレに対する姿勢はより強まると思われるだけに、金融市場のリスクオフムードは継続すると考えられます。

今週の暗号資産市場の動きは、こうした影響を受け弱含む可能性が高く、ビットコインなど中心銘柄の下値が注目となります。

公開された米国包括的暗号資産法案

この法案は、シンシア・ルミス上院議員(共和党)とカーティス・キリブランド上院議員(民主党)による超党派の取り組みで出されたもので、暗号資産規制の土台となるものと見られています。

法案の役割としては、以下のようなものが挙げられます。

  1. 市場の監督担当機関と規制の明確化
  2. ステーブルコイン独自の枠組みの提供
  3. 暗号資産の既存税法および銀行法の統合

1.については米商品先物取引委員会(CFTC)に現物市場での規制の権限を付与するとしているのが大きな特徴となっています。この法案については、暗号資産に関連する諸団体、各取引所などが歓迎する声明を発表しており、法案が早期に成立し、暗号資産に対する米国政府の姿勢がより積極化する事が期待されます。

グレイスケールのETF申請

大手暗号資産運用会社のグレイスケールは、運営している「グレイスケール・ビットコイン・トラスト」を現物ベースのビットコインETFに変更するため、承認に向けて申請の姿勢を積極化しています。

この件に対応するため有力な法律顧問を採用し、強力な法律チームを組成したようです。米国証券取引委員会(SEC)の決定期日7月6日に向けて注目が集まります。

グレイスケールによるこの申請で「グレイスケール・ビットコイン・トラスト」をETFに変更出来れば、現物のビットコインに裏付けられた米国発のビットコインETFとなり、ビットコイン価格ならびに暗号資産市場全体への大きなインパクトになると考えられます。

Profile ◉倉本 佳光(くらもと よしみつ)
慶應義塾大学法学部法律学科を卒業後、山一証券株式会社に入社し金融業界でのキャリアをスタート。
その後メリルリンチ日本証券株式会社、岡三アセットマネジメント株式会社で手腕を発揮。
これまでにリテール及び機関投資家への営業、上場企業の資金調達、IPO、M&Aなどの業務を担当し、現在では「株式会社J-CAM」にて総合的な金融コンサルタントとして活躍している。