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利上げ幅縮小と円高意識の展開−金融のプロが教える“経済の見方” 第33回

米FRBが0.5%の利上げ

12月13日-14日に米国公開市場委員会(FOMC)が開催され、FRBによる0.5%の利上げが発表されました。会議後のパウエルFRB議長は会見で、「物価安定を回復させるには、景気抑制的な政策スタンスをしばらく維持する必要がある」と述べ、「FOMCが来年に政策を反転させる」との市場の見通しを退けました。

FOMCによる今後の予測では、「フェデラルファンド・レート(FF)の水準が2023年末に5.1%で終了し、2024年には4.1%まで低下する」との見通しが示されました。予測した通りに利上げ幅が0.75%から0.5%へ縮小し減速したものの、金融引き締めの時期が長期化し、FFレートの最終レベルも引き上げられるものとなりました。

こうした発表を受けて、米国株式市場では3指数が揃って下落し、NYダウ平均33966.35ドル(▲142.29)、S&P500 3995.32(▲24.33)、Nasdaq11170.89(▲85.92)となっています。

CPIから見えたインフレのピークアウト

一方で、FOMCの前日に発表された米国消費者物価指数(11月)は前年同月比+7.1%となり、市場予想の+7.3%、前月の+7.7%を下回る急減速を示し、インフレがピークを越えつつある感触を与えています。この結果は、翌日に発表した利上げ幅を0.5%に決定した大きな要因になったかと思われます。

このように、米国の金融環境は大きな転換点へ徐々に向かいつつあると思われますが、引き続き利上げが継続され、金利圧力が徐々に経済へ影響を及ぼすと見られます。今後利上げが企業業績へどの程度影響を与え、米国株式市場がどこで落ち着くのか注目されます。

その反面、インフレのピークアウトを見込み米国長期金利は落ち着いた動きを見せています。これを受け、外国為替市場ではドルの弱含みが進みつつあります。来年に向けてドル安が進展する事が考えられ、日本にとってももう一段の円高水準を意識した展開が期待できるのではないでしょうか。

Profile ◉倉本 佳光(くらもと よしみつ)
慶應義塾大学法学部法律学科を卒業後、山一証券株式会社に入社し金融業界でのキャリアをスタート。
その後メリルリンチ日本証券株式会社、岡三アセットマネジメント株式会社で手腕を発揮。
これまでにリテール及び機関投資家への営業、上場企業の資金調達、IPO、M&Aなどの業務を担当し、現在では「株式会社J-CAM」にて総合的な金融コンサルタントとして活躍している。