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金融市場を左右する「3要素」- 金融のプロが教える“経済の見方” 第5回

インフレ懸念が顕著となっている金融市場

5月17日、4月の米国小売売上高が6,777億ドル(約87兆8,000億円)と発表されました。これは前月比+0.9%、前年同月比+8.2%で4ヵ月連続でのプラスとなりました。引き続き堅調な消費を示していますが、4月の消費者物価指数は前年同月比+8.3%と高く、家賃や食品など幅広く値上がりをしています。こうしたインフレの兆候が徐々に消費に影響を示すのではないかと懸念されます。

堅調な消費の動向や中国上海のロックダウン(都市封鎖)が6月中に解除される見通しとの発表を受けて米国マーケットは反応しました。米国10年国債の利回りは2.99%と0.1%上昇し、株式市場はNYダウ平均+431.17ドル、S&P500+80.84ポイント、Nasdaq+321.73と大きく上昇しました。また米国株式市場の上昇を受けて国内の株式市場も日経平均株価で一時27,000円台を回復するなど……となりました。

しかし、18日のウォルマートやターゲットの決算が予想外の悪化となり、小売り関連株を中心として大幅安となりました。NYダウ平均▲1164.52ドル、S&P500▲165.17ポイント、Nasdaq▲566.36で3指数とも年初来安値を更新しています。

このように世界のマーケットで懸念している材料である「ウクライナ戦争」、「中国ゼロコロナ対応」、「世界的なインフレ」などの影響は、徐々に景気に影響を及ぼしていると考えられます。懸念材料に関しての見通しは依然として不透明であり、長期化が想定される事態となっています。

今回はこれらの懸念材料について、改めて整理したいと思います。

【ウクライナ戦争】

欧米による軍事支援の強化が続いており、ウクライナ軍による反撃も見られています。ウクライナとロシアで行われた停戦交渉も現在は停止している状態ですので、この戦争のさらなる長期化は避けられないと思われます。

【中国ゼロコロナ対応】

6月中に上海でのロックダウン(都市封鎖)が解除されるとの発表がありましたが、今までに多くの都市がロックダウンとなり、中国国内での経済活動が大きく減速しています。

5月16日に発表された4月の失業率は6.1%で、2020年2月の6.2%以来の高さでした。また小売売上高(4月)は前年同月比▲11.1%で2020年3月以降での最大の落ち込みとなり、鉱工業生産(4月)も前年同月比▲2.9%となっています。

上海の方向性が示されたとはいえ、中国のコロナ対応に落ち着きが見え、経済活動がいつ正常化するのか全く予想がつかない状態です。中国の減速は、当然世界経済へ影響を与えていくことになります。

【世界的なインフレ】

昨年から顕著となった世界的なインフレ傾向は、ウクライナ戦争の勃発とともにエネルギー関連、穀物関連など各種商品市況へ広がりを見せています。このような状況から、商品関連への投資に一段と注目が集まり始めています。

既に大きく上昇している物が多い現状ではありますが、原材料となる商品を中心とした価格上昇は長期化すると考えられます。商品に投資する公募投資信託や上場ETFをポートフォリオに加えるのも良いのではないでしょうか。

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Profile ◉倉本 佳光(くらもと よしみつ)
慶應義塾大学法学部法律学科を卒業後、山一証券株式会社に入社し金融業界でのキャリアをスタート。
その後メリルリンチ日本証券株式会社、岡三アセットマネジメント株式会社で手腕を発揮。
これまでにリテール及び機関投資家への営業、上場企業の資金調達、IPO、M&Aなどの業務を担当し、現在では「株式会社J-CAM」にて総合的な金融コンサルタントとして活躍している。