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中国経済の今と今後 – 金融のプロが教える“経済の見方” 第2回

中国のGDP 2022年1-3月期

4月18日、中国の2022年1-3月期の実質経済成長率(GDP)が発表されました。前年同月比で+4.8%と増加しましたが、3月の全国人民代表者会議(全人代)で発表された今年の目標値+5.5%には届かず、また3月に限ると小売売上高などが減少になるなど減速感が感じられる内容となっています。

具体的には社会消費品小売総額(小売売上高)が▲3.5%となり、その中で特に飲食店収入が▲16%となっているのが目を引きます。これは上海、深セン、西安、蘇州などへ拡大している都市封鎖(ロックダウン)による影響が出てきているものと見られ、外出ができないために外食が大きく減少したと考えられます。

今年は北京でのオリンピックとパラリンピックの開催があり、その前の春節と合わせて消費の拡大に弾みをつけようと年初1月17日に「最近の消費促進活動の適切な実施に関する通知」を発布しました。これは10項目にわたる消費促進策でしたが、コロナの影響を受けて大きな成果をあげる事が出来なかったようです。

一方、消費とともに成長の源泉のひとつである固定資産投資では、地方のインフラ投資に重点が置かれているようです。これはAI、5G向けのITのインフラ投資を促進するもので地方への大手のデータセンター設置などを行っているようです。

中国経済成長の推移

今年の経済成長率の目標値は+5.5%ですが、今までの成長率はどうだったのでしょうか。

中国の最近の経済成長率推移は上記の表のとおりで、1990年代から2000年代は世界の工場として、2010年以降は世界の市場としても高い成長を続け、今や世界経済を米国とともにけん引する経済大国となっています。2020年は新型コロナ発生による影響があり、低い成長となりました。2021年はその反動により高い成長になったと言えます。

中国経済力の位置

中国は過去約30年間にわたり高い成長を続けてきた結果、2021年のGDPは世界第2位となりました。上位3ヵ国とGDPの規模は次の通りです。

中国の経済規模は今や非常に大きく、また世界各国と貿易を通じて深く関りを持っています。中国の経済が停滞することは世界経済全体が停滞することへ繋がります。

都市封鎖(ロックダウン)

3月以降、上海をはじめとして40を超える都市で都市封鎖(ロックダウン)が実施されています。上海市は人口約2,500万人の大都市で、中国GDPの4%を占める経済力を持っています。また中国の輸出に占めるシェアも6%あり、都市封鎖は中国国内ばかりでなく世界各国へ影響が出ています。

表のように多くの有名企業に影響が出ているほか、上海市の日系企業7割で物流が停止しているとのことです。

2022年の中国の経済成長については、国際通貨基金(IMF)が+4.4%と予想し、厳格な新型コロナ政策に起因するパンデミック関連の混乱と不動産デベロッパーの間で長期化している金融ストレスおよびIT(情報技術)業界や学習塾への規制などによる減速を加味し、昨年発表していた数値を下方修正したものとなります。

しかし、新型コロナへの対応による都市封鎖およびロシアとウクライナの戦争による世界経済減速などの経済的な影響は、これから本格化すると考えられ、成長率はさらに下方修正される可能性が高くなっていると思われます。

また年初に発表されたユーラシア・グループの「2022年10大リスク」第1位が「No zero Covid」と、中国のゼロコロナ政策の失敗を上げていました。世界経済への影響が大きいだけに、今後の中国の対応が注目されます。

Profile ◉倉本 佳光(くらもと よしみつ)
慶應義塾大学法学部法律学科を卒業後、山一証券株式会社に入社し金融業界でのキャリアをスタート。
その後メリルリンチ日本証券株式会社、岡三アセットマネジメント株式会社で手腕を発揮。
これまでにリテール及び機関投資家への営業、上場企業の資金調達、IPO、M&Aなどの業務を担当し、現在では「株式会社J-CAM」にて総合的な金融コンサルタントとして活躍している。