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米指標から見る株式市場の行方- 金融のプロが教える“経済の見方” 第6回

米国株式市場の行方

米国では、24日に総合購買担当者指数PMI(5月)と新築住宅販売件数(4月)が発表され、25日にFOMC議事録が公表されました。

総合PMIは、53.8で前月比▲2.2となりました。3月は56.0、4月は57.7であったため、4ヵ月ぶりの低水準となった形です。

新築住宅販売件数(4月)は、591,000戸(年率換算)で前月比▲16.6%、前年同月比▲26.9%で2020年4月以来の低水準でした。ちなみに3月新築住宅販売件数は763,000戸(年率換算)です。中古住宅販売件数も3ヵ月連続で減少しており、住宅価格の高騰と住宅ローン金利の上昇が影響しています。また株価など資産価格の下落で資金が不足するような影響もあったと考えられます。

FOMC議事録では、6月と7月に0.5%ずつ利上げが必要と大部分の当局者の考えが一致していました。

こうした発表を受けて、米国株式市場の24日の動きはNYダウ平均こそしっかりでしたが、S&P500とNasdaqは安くなり、25日は3指数とも堅調な展開となりました。

24日の経済指標に見られるように米国経済にはブレーキがかかって来ています。一方、25日の議事録からはマーケットが警戒している過度な引き締めが遠のいた感触を好感したものと考えられます。しかし、FRBの金融引き締め政策が変わるわけではなく、これから金利の引き上げと資産の圧縮が淡々と行われて行くことになります。

そうなるとすでに下がってきている米国株式市場の調整は、いつまで、どこまで続くのでしょうか?

調整の値幅としてNYダウ平均、S&P500そしてNasdaqの3指数はある程度の水準と見られるところまで下がりましたし、FRBの金融引き締めについてのスタンスも明らかになりましたので、少し様子を見たいという市場参加者の考えも出てくる頃かと思います。実際、FRBが金融引き締めを開始し、今後のスケジュールも想定できる状況が提供されているため、市場参加者は次の展開を予想し始めてしまいます。

しかし、ウクライナ戦争は侵攻開始から3ヵ月を経過し長期化する動きとなっています。この長期化により原油、天然ガスを中心としたエネルギー価格および小麦・とうもろこしなどの穀物類などの食糧価格は一段と上昇すると見られます。

また「ゼロコロナ政策」を進める中国も厳しい状況が続いており、中国経済だけでなく世界経済への影響も拡大していくと考えられます。

このような外部の要因を踏まえると米国経済はさらに減速感を強めると思われ、株価の調整も期間として長引くのではないでしょうか。さらなる下落もあると考えられます。

ITバブル崩壊に似た動き

ITバブル相場の調整は2000年春に高値を付けた後、約2年半にわたり調整が続きました。今回の調整も期間は長めに考えるべきと思います。Nasdaqを中心とする成長株と思われる企業は底値を確認するまで待ったほうが良いと思います。もちろん現在の環境にマッチした企業もあると思いますので、投資は十分に検討をしていただきたいと思います。

ITバブル前から活躍していたアップル、マイクロソフト、インテルなどの企業はバブル後さらに業容の拡大が進み、またこの調整局面をしのいだアマゾンなどは次の時代の主役となっています。今回の株価調整でも前回と同じような事が起きてくると考えられます。

次の時代の主役となる企業はどこか? この調整の局面で次の時代の主役となる企業を探してみるのも良いのではないでしょうか。

今月号の月刊暗号資産では、海外投資について特集をしています。こちらも参考として、ご覧ください。

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Profile ◉倉本 佳光(くらもと よしみつ)
慶應義塾大学法学部法律学科を卒業後、山一証券株式会社に入社し金融業界でのキャリアをスタート。
その後メリルリンチ日本証券株式会社、岡三アセットマネジメント株式会社で手腕を発揮。
これまでにリテール及び機関投資家への営業、上場企業の資金調達、IPO、M&Aなどの業務を担当し、現在では「株式会社J-CAM」にて総合的な金融コンサルタントとして活躍している。