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米国株式市場の楽観論も終盤か – 金融のプロが教える“経済の見方” 第17回

FOMC議事録が公開

8月17日に7月のFOMC議事録が公開されました。議事要旨では「金融政策スタンスが一段と引き締められるのに伴い、政策金利のペースを減速させ、同時にそれまで実施してきた政策調整が経済活動とインフレに与えた効果を精査する事がいずれ適切になる可能性が高い」とされ、いずれは利上げペースを減速させる必要性で合意し、それまで実施した金融引き締めのインフレ抑制効果を精査したいとの認識が示されました。

堅調に推移した米国株式市場

米国金融市場はこのFOMC以降、楽観論が台頭し、株式市場では7月26日を起点として8月16日まで堅調な展開となりました。

NYダウ平均で31,761ドルから34,152ドルへ2,390ドル上昇(約+7.5%)、S&P500で3,921から4,305へ384ポイント上昇(約+9.8%)、ナスダックで11,562から13,102へ1,539ポイント上昇(約+13.3%)となっています。

FRBの今後の対応

米国の株式市場はFRBの考え方を過度に楽観視したと考えられ、FRBは今後こうした市場の見方を修正する動きに出るものと思われます。具体的には、まず今月25日-27日のジャクソンホール会合でのパウエル議長の講演で市場の考えが打ち砕かれるのではないでしょうか。

また9月に開催されるFOMCで次の利上げが予定されていますが、そのときにFRBの強いスタンスが再確認されるのではないかと思われます。

株式市場の行方

7月の利上げ後に「今後9月のFOMCまで楽観的なマーケットの展開になるかもしれない」と私もコメントしていますが、そうした動きも今後1ヶ月程度で戻り高値を形成し終了するとみています。

ここへ来て楽観論に警鐘をならすコメントも出始めました。バンク・オブ・アメリカ(BOA)のクオンツアナリストは、米国株の行方を完璧に予測してきた指標であるルール20から「株価はまだ底値をつけていない。今後インフレ率が0%になるか、S&P500が2,500まで下げるかしない限り、底入れを示すのに50%のアーニングサプライズが必要だが、これは達成不可能だ」とコメントしています。

このルール20はS&P500の実績PER(株価収益率)と物価上昇率を組み合わせたもので、「1950年代以降あらゆる相場の谷においてこの指標が20を割り込んできたが、今回はまだ27までしか下がっていない」と現状を示しています。

今後の米国株式市場の動きについては警戒を怠らず、また日本株についても注意をしていただきたいと思います。

Profile ◉倉本 佳光(くらもと よしみつ)
慶應義塾大学法学部法律学科を卒業後、山一証券株式会社に入社し金融業界でのキャリアをスタート。
その後メリルリンチ日本証券株式会社、岡三アセットマネジメント株式会社で手腕を発揮。
これまでにリテール及び機関投資家への営業、上場企業の資金調達、IPO、M&Aなどの業務を担当し、現在では「株式会社J-CAM」にて総合的な金融コンサルタントとして活躍している。