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女性のWeb3.0領域進出について考える−「Women in Web3」イベントレポート

10月5日、米リップル社がスポンサーとなり、東京・渋谷のWeb3.0に特化したシェアオフィス「CryptoBase@NIB SHIBUYA」にて、女性のWeb3.0領域進出について語り合う「Women in Web3 – Web3業界の女性のキャリアを考える」が開催された。

このイベントは米リップル社戦略担当バイスプレジデントである吉川絵美氏と、「CryptoBase」の発起人で株式会社ガイアックスに籍を置く西村環希氏が意気投合し、開催に至った。

まだテック業界、しいては暗号資産(仮想通貨)業界への女性進出は少ない。それは世界共通の課題ではあるが、特に日本は遅れをとっていると指摘する声も少なくない。

こうした状況で、吉川氏は「日本のWeb3業界に何か貢献できることはないか」と思い、さらに「すでにキャリアを積んでいる女性にフォーカスを当て、実際のキャリアパスの例を話してみる事で女性進出を推進できるのではないか」と考えた。これが本イベントの核となる部分だ。

イベントは2つのトークセッションを軸として行われた。

まず最初は吉川氏と千葉工業大学変革センター所長 および株式会社デジタルガレージ共同創業者取締役兼専務執行役員の伊藤穣一氏による「Joi x Emi グローバルなweb3の動きについて」と題したセッションだ。このトークセッションでは、伊藤氏が暗号資産業界に参入するきっかけや、現在のWeb3.0を取り巻く課題について語られた。

トークセッションの様子
左:吉川氏 右:伊藤氏

技術的な面で言えば、業界全体で見た際にスマートコントラクトの改善と用途によって使い分けられるブロックチェーンの登場はポジティブなことだと伊藤氏は述べる。その上で、「リスク面もしっかり理解を深めなければならない」と自身の経験をもとに指摘した。

また女性のWeb3.0領域への参入については、まずカンファレンスなどで女性の参加率を高めることが重要になると語る。さらに、参加する女性がコミュニティに参加し、そこで発言やアクションを起こすことがカギを握ると説いた。

吉川氏もこれに関連し、「テクニカルの部分で難しいと思われがちだけど、強みを活かせるところはたくさんある」「クリプトの知識は必要になる部分もあるが、まず実際に使用することが大事な経験になる」とアドバイスを送った。

このセッションではWeb3.0と呼ばれる領域がいわゆるWeb2.0時代と比べて、女性にとっても働きやすさが増していくと強調された点が特徴的であった。働き方で言えば、暗号資産やデジタル資産を活用することでフリーランスの働き方や報酬制度に革命を起こす可能性もあるとの指摘も挙がった。

続く2つ目のトークセッションは、「国内でweb3業界でキャリアを築くためには?」と題し、吉川氏のほか4名の女性スピーカーが登壇。CoinDesk Japan・N.Avenue株式会社の代表取締役社長である神本侑季氏をはじめ、オープンハウスグループ・日本ブロックチェーン協会アドバイザーの西村依希子氏、MZ Cryptos事業開発部マネージャー・MZ Web3ファンド飯盛美季氏、そしてガイアックス社の西村環希氏が、自身の体験や実際にWeb3業界に携わって感じたことについて語った。

トークセッションの様子
左から吉川氏、西村依希子氏、神本侑季氏、飯盛美季氏、西村環希氏

最初に語られた「女性という立場から見たWeb3」では、全スピーカーの意見として「自主性の尊重」「新規参入者に対してウェルカムな姿勢」「従来の働き方と違い縛りが少ない点」などが特徴として挙げられた。その中で語られた西村環希氏の「先を走る女性がいると勇気がもらえるし、そういう人は少なからずいると思う。『私もできるかも』という考えが大事になると思う」という言葉は、女性のWeb3.0領域進出、そしてWeb3.0そのものを活性化させる上で極めて大切な考えとして印象深く残った。

また「Web3領域で働く女性へのアドバイス」では、主に「積極性」がキーワードになると捉えられる話が繰り広げられた。

神本氏は、現段階でWeb3.0領域に参入するために必要な特別なスキルはないが、「好奇心と少しの知識と学び」が必要だと指摘する。飯盛氏も「興味があれば一旦参入するといったことがあってもいいと思う」との考えを示し、その上で主体性を持つ重要性に触れた。西村依希子氏も「学歴ではなく、何ができるかが重要」と述べ、Web3.0領域の知識をつけることは、これからのキャリアに大きくつながっていくと語った。

まとめ

女性のWeb3.0領域進出について重要な意見交換が行われた本イベント。中でも「女性が働きやすい環境作り」が業界の発展にとっても重要であると再認識させられた一夜であった。例えば育休という制度ひとつを取り上げても、男女関係なく誰もが平等に持つ権利として行使しやすい環境を構築することが極めて重要となる。それが日本のWeb3.0を発展させ、働き方改革にもつながることだろう。

暗号資産取引所KuCoinが今年7月に発表したレポート「Web 3 Career Market report」では、回答者の54%がWeb3.0関連業界で働いたことはないものの、「非常に、または多少興味を持っている」と回答している。さらに、Web3.0領域に携わる女性は、同じくWeb3.0関連業界で仕事をする男性と比べてキャリア面で積極的であることがわかった。

これは女性にとって、Web3.0という領域が従来の働き方と比べ柔軟性を持ち合わせていると認識されている結果だろう。こうした調査結果から、このレポートでは「Web3.0の採用を加速させる上で女性が重要な役割を担う可能性がある」と結論づけられている。

実際、今回のイベントではオフラインの場に4割ほどの女性が参加していたことも印象的であった。従来の業界関連イベントでは男性の比率が高い傾向にあるが、これほどまでにWeb3.0領域に関心を寄せている女性が多いという点は留意すべきだ。Q&Aで様々な質問が飛び交い、現状の課題等について語り合う場面が多々見受けられた。

新たな世界を創っていく上では、現状を打破するチカラが必要不可欠となる。日本社会の成長、そしてWeb3.0領域の飛躍を目指す上でも、何が必要で何を変えていく必要があるか、自分なりに考え問いただしてみる時間を設けてみるのも悪くないだろう。