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What’s Web3.0 「Web3.0」とは?後編

2022年7月21日(木)発売の月刊暗号資産9月号Vol44より

前回「What’s Web3.0 「Web3.0」とは?前編」

「NFT×ゲーム」の可能性

証明技術からPlay to Earnというコンセプトの確立へ

2021年3月、デジタルアーティストのBepple氏が作成したNFTアートが約6,934万ドル(当時レート75億円)で売却された。同時期にはTwitter創業者のジャック・ドーシー氏によるTwitter史上初のツイートが約291万ドル(当時のレート3億円)で落札されている。これらの出来事がきっかけとなり、NFTの知名度は急上昇した。

NFTは「Non-Fungble Token」の頭文字をとった略語であり、ブロックチェーンを用いた証明技術を指す。デジタルデータが唯一無二であることを証明できる技術として、世界全体で活用が進みつつある。NFTがもたらすデジタルデータの資産価値の証明は、資産の価値移転が容易になり利便性が上がるという側面があるため、大きな注目を集めた。  

2021年後半には、NFTゲーム「Axie Infinity」が注目を集め、その頃から「Play toEarn(遊びながら稼ぐ)」という概念が暗号資産界隈を中心に広がりを見せた。NFT単体のアート的な価値とデジタルデータの唯一無二を証明できるという技術的な側面に注目が集まり高額で落札されるという現象は、NFTを実際に保有して得られる体験へと移り変わってゆく。つまり、NFTのデジタルデータの価値に付随した付加価値の部分に注目が集まり始めたのだ。NFTゲームの発展で、自身の保有するNFTをゲーム上で活用し、トークンを獲得するという仕組みが受け入れられることで、ブロックチェーンゲームが急速に普及していく可能性が一気に開花した。

代表的なNFTゲーム

●Sorare
サッカー選手のトレカを保有、実際の試合結果で報酬が決まる
Sorare(ソラーレ)は、ファンタジーフットボールというジャンルのNFTゲーム。実在する世界中のサッカー選手のトレーディングカードを売買・保有し、それぞれの選手が実際の試合で活躍するほど暗号資産が得られる仕組みになっている。Jリーグを含む世界中のクラブチームからライセンス許諾を得ており、有名選手が数多く実名で登場する。

●Illuvium
オープンワールドを飛び回り、モンスターを収集
ここ数ヶ月で多くの開発資金を投じたビッグタイトルが次々と発表されているが、そのなかでも特に注目されているのがIlluvium(イルビウム)。オープンワールドの世界を飛び回り、ポケモンのようにモンスターを集めて戦うゲームとなっている。まだリリースされていないが、独自トークンILVの取引などはすでに可能となっている。

●元素騎士オンライン
累計ダウンロード800万を超えるオンラインゲームのNFT版
元素騎士オンラインは、オンラインゲームとして人気を博したゲームにNFT要素を追加したゲーム。基となるゲームがあるため、開発が順調に進む可能性が高く、クオリティも十分な作品になることが期待されている。また、オンラインゲームの運営ノウハウを持っている点も期待感につながっているようだ。本リリースは8月予定になっているが、事前オークションの開催や独自トークンMVの取引は開始済み

メタバースは別世界の「自分」を映し出す

メタバースが主となる未来もそう遠くない

前項でも触れた通り、日本においてもデジタル社会を実現するための政策が「重点計画」として盛り込まれた。具体的な内容としては、2021年9月にデジタル庁発足後、初めて策定した重点計画の中に、ブロックチェーンを基盤とした次世代インターネット「Web3.0」を推進していく項目が盛り込んだのだ。この文脈におけるWeb3.0では、「分散型インターネット」という定義を明確にした。

一方で、VRやXRなど、仮想空間の領域を含む文脈でWeb3.0が定義されることもある。つまり、ブロックチェーンの特徴である非中央集権的な仕組みが映し出す景色には、自ずとデジタル上に浮かぶもう一つの世界、いわゆるメタバースにおける人々の活動が加速するという可能性が秘められている。

メタバースは「超越」を意味する「Meta」と「世界」を意味する「Universe」が組み合わさった造語だ。このメタバース、正確には「Virtual Reality(仮想現実)」とは似て非なるものであり、メタバースにおいてはVR機器の有無に関係なく利用できる世界を指す。イメージしやすい例として、有名なミュージシャンのイベントに自身が作り出したアバターを通じて参加することができる「FORTNITE」や「あつまれどうぶつの森」を思い浮かべてもらうといだろう。

今までデジタル上の世界では、デジタルのアイテムの交換を含め所有権の証明が困難であったため、価値を担保することができなかった。しかし、ブロックチェーンを基盤技術としたNFTの登場により、デジタルデータにおける所有権の証明を可能にしたのだ。これは、メタバース内にもうひとつの経済圏ができることも意味する。現実世界と同等規模に留まるどころか、制限なく広がるメタバースでも遥かに大きな経済圏を確立する可能性を大いに孕んでいるのだ。

Web3.0、メタバースを語る上で、暗号資産の存在が切っても切れないことはすでにわかり切っているかもしれない。では、具体的に2022年執筆時点で注目を集める関連銘柄はどのようなものがあるのだろうか。これからの未来を形成する可能性をも秘めた暗号資産を見ていく。

メタバースでできること8選

  1. 他のユーザーと交流する
    メタバース空間上でアバター同士がチャット機能などを通じてコミュニケーションを図ることができる。すでに同様のサービスが提供されているメタバースもあり、従来のSNSと比べ、より直接的に世界中のユーザーと交流することが可能だ。
  2. イベントに参加する
    メタバース内ではアーティストによるライブや作品の展覧会など、様々なイベントがすでに行われている。これらのイベントはリアルに近い体験ができるほか、世界中のあらゆる場所から参加することができるため、今後さらに広がりを見せる可能性がある。
  3. イベントを主催する
    リアルの世界でも各々が自由にイベントを開催できるが、その性質はメタバースでも変わらない。中には、専用のチケットに相当する特定のNFTを所有することで参加できるものもある。
  4. NFTを売買する
    メタバースとNFTの親和性は極めて高い。メタバースの内外で作成されたデータやアートなどをユーザー同士が直接取引することが可能だ。これはブロックチェーンが活用されることで成立する。
  5. NFTを展示する
    メタバースでは美術館のようにNFTを展示することも可能だ。特定のスペースにNFTを配置し、誰もが作者や取引履歴などの詳細を閲覧できる。従来のSNSのように、誰もが自由に展示できる点も強みだろう。
  6. メタバースを探索する
    メタバースは世界中どこからでもアクセスすることができる。そして、世界中のどこにでも世界が広がっているのもメタバースだ。様々なブロックチェーンにおいてブリッジ機能が搭載されれば、その世界はより広がっていく。
  7. メタバースで仕事をする
    メタバース内にオフィスを構築し、リアルの世界で出社することなく仕事を行うスタイルが今後確立する可能性がある。すでにMeta社などはその取り組みを始めており、こうした仕事のスタイルが徐々に広がりを見せていく可能性がある。
  8. メタバースで商売をする
    メタバースでリアルの商品を閲覧し、購入することができる仕組みが世界的に検討されている。ブロックチェーンを活用することで商品の輸入経路や作業工程を追うことができるため、より安心して商品の販売、そして購入が可能となる。

クリプト銘柄紹介

NFTの最新トレンドとは? ヒントは付加価値にある

現在では、アート要素の強いNFTコレクションと人気NFTゲームで活用されるNFTコレクションが人気を集める傾向にある。当然の如く、Web3.0という観点から見た暗号資産はこれらのNFTに関連する銘柄が注目される。

フロリダ州マイアミに拠点を置くYuga Labsが手がけるBAYC(Bored Ape Yacht Club)というアート要素の強いNFTコレクションは、The APE Foundationが発行するERC-20トークン「Apecoin(APE)」との相関性が高い。

ApeCoin はThe ApeCoin DAOのガバナンストークンとして使えるほか、ユーティリティトークンとしての利用も想定されて開発が行われている。Apecoinの初期分配を見ると、Yuga LabsとBAYCのファウンダーに総発行量の23%、BAYCとMAYCの所有者に15%が割り当てられている。

MAYC(Mutant Ape Yacht Club)もBAYCと同じくYuga Labsが手がけるNFTコレクションだ。このNFTアートには、BAYC会員限定の特典イベントへの参加権や、会員限定のコミュニケーションチャットに参加できる権利が付与されている。また、BAYCのNFTアートコレクションを購入することで、自身の保有するNFTアートをプリントアウトして商用利用することなども可能だ。

一方、人気NFTゲームで活用されるNFTコレクションでは、STEPNが一際目を引く存在となっている。「Move to Earn(動きながら稼ぐ)」をコンセプトに、自身が保有するNFTスニーカーをアプリにセットしてGMT、GSTというトークンを獲得できる仕組みを有している。STEPNの人気から、現在ではMove to Earnのコンセプトを主としたNFTゲームが多く排出されている。過去には、組織的にNFTスニーカーを増やすといった投機的かつ組織的なNFTゲームの運用も問題となったが、現在では健全かつユーザーフレンドリーな設計にすべく、様々なプロジェクトが試行錯誤を繰り返している。

現時点でWeb3.0およびNFT等の関連銘柄の特徴としては、やはり主要基盤として利用されているかどうか、さらにはコミュニティにおいて自らの存在感を示すガバナンストークンが挙げられる。これらはプロジェクトの方向性や未来を大きく左右するため、極めて注視すべき点であると言えるだろう。

関連銘柄の価格が上がる要因

  1. 「面白そう」
    GameFiが流行するための必須条件は多くのプレイヤー・投資家が参入し課金することである。そのため、多くの人を魅了するGameFiはリリース前からトークンやNFT価格が高騰していく。リリース前に公開される情報や動画などから、魅力的な作品を見つけよう。
  2. 「稼げる」
    GameFiをプレイする人の最大の動機は「稼げること」である。よってSNSなどで「稼げる」と話題になったGameFiには多くの人が参入し、より稼げるようになる。ただし、新規参入速度が鈍化して稼げなくなったときは多くのプレイヤーが資金を引き上げるため、一気に「稼げない」状況になる。

Web3.0は「SNS2.0」だ

必ずくる大変革は、自分自身の存在自体にも大きな影響を及ぼす。

SNSでもNFTの活用が広がりつつある。Twitterでは自身の保有するNFTアートを、自身のプロフィール画像に設定することができる機能が2022年1月に実装された。現時点でプロフィール画像にNFTアートを設定できるのは、Twitterのサブスクリプションサービス「Twitter Blue」に登録しているユーザーのみ。この「Twitter Blue」は2022年7月現在、アメリカ、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドで提供されており、日本では未提供であるため、原則として国内在住ユーザーがNFTアートをTwitterのプロフィールに設定することはできない。Twitter社は随時、導入範囲を拡大するとしているため、公式アナウンスが待ち望まれる状況だ。

実際にプロフィール画像を設定するとプロフィールのシルエットは六角形になる。プロフィールに設定しているNFTを販売、転送した場合、画像はそのまま表示されるが、シルエットが従来の丸に戻り、所有権に関する情報が表示されなくなる。

NFTアートをプロフィール画像に設定できるようになった背景には、作品の無断転用や無許可のアイコン使用が横行しており、クリエイターが苦しめられてきた過去がある。こうした課題の改善に向け、ブロックチェーンを用し価値証明を実現したNFTを活用するに至った。

また2022年5月、アメリカ・Meta社が提供しているInstagramでも、NFTをシェアすることを可能にした「デジタルコレクティブ」という機能が一部のクリエイターやコレクターを対象に試験導入されている。これらのSNSにおいてNFTが導入されるというのは、NFTの認知拡大に大きく貢献するはずだ。

NFTアートのプロフィール画像への設定や自分アイデンティティを表現する場所のひとつであるSNSとブロックチェーンの融合によって、無断転用や無許可のアイコン使用を取り締まる流れから、自身のクリエイティブがより多く露出することを求める流れへ変化していく事が予想される。ブロックチェーンという技術がもたらした新しい概念だと言えるだろう。

徐々にブロックチェーンの導入が進みつつある現在、リアルな世界とは異なるアイデンティティをSNS上で表現している人々は少なくない。性別や年齢などの多くの概念はグラデーションになっているため、一概にまとめて表現することが非常に困難であるが、SNSではそのグラデーションになっている個人のアイデンティティを細かく表現することができる。

ブロックチェーンの導入により、SNSがデジタルデータの所有権、強いては、地球上に留まらずメタバース空間内でもデータの唯一無二を証明できるとなれば、個人をより正確に表現できる可能性を秘めたデジタル空間での活動が主になり、現実世界での活動が従となるよう事象が発生することも大いにあり得るのではないだろうか。

「社会」は「経済」はどうなる?
大改革によって変化する「私たちの日常」

近い将来、リアルとバーチャルの境界線は溶け合う。メタバース内での活動は自身のアイデンティティを最も正確投影する機会となるやもしれない。

 

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