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What’s Web3.0 「Web3.0」とは?前編

2022年7月21日(木)発売の月刊暗号資産9月号Vol44より

今や世界全体で取り組みが始まっているWeb3.0−−

それは人類が生み出した「Web」という世界を、新たなステージへと昇華させる可能性を秘めている。

Web3.0 が創り出す世界、そしてそこから生み出される日常、真実とは何か

「Web3.0はSNS2.0だ」
「社会」は「経済」はどうなる? 大改革によって変化する「私たちの日常」

2022年の最重要ワードとなりつつある「Web3.0」。今や国内外問わず様々な取り組みが進められるようになり、政府までもが自国の優位性を高めるべく、積極的な姿勢を見せつつある。いわばWeb3.0の覇権争いに向け、国際競争が激しさを増す前兆が表れつつある。

国内では、時の政権が重要課題と政策の方向性を示す「骨太の方針」において、Web3.0をはじめメタバースやNFT、そして暗号資産やブロックチェーンという言葉が並んだ。これはすなわち、現政権が世界に対し、Web3.0というカテゴリにおいて勝負を挑むという意思表明を行ったことになる。

そもそもWeb3.0とはどんなものなのか。言葉は聞いたことあるが、その正体は謎めいたままになっている人も少なくないはずだ。まずは順を追ってWeb3.0に迫っていく。

世界を拡張したWeb1.0

自由に発信が可能になるWorld

Web3.0という言葉がある以上、当然「Web1.0」と「Web2.0」が存在する。まずその走りとなるWeb1.0とはどのようなものなのだろうか。

Web1.0はいわゆるWebの「起源」にあたる。1989年に欧州合同原子核研究機構(CERN)のティム・バーナーズ・リー氏が考案した「World Wide Web」というシステム構想が基礎となり、1990年代初頭に実装された。個人が自由に情報発信を行うことが可能なり、また第三者が情報を得やすくなるなど、人類史を大きく変える発明になったと言える。

この時のコンテンツはHTMLで作成されたテキストベースのものがほとんどで、なおかつ閲覧者がプラットフォーム内でコミュニケーションを完結させることはできなかった。そのため、一方的に情報発信を行う「一方通行型」のWebサービスであったと言っていいだろう。Web1.0とは、いわばひとつの方向だけに向かって伸びる直線だけが存在した一次元的なものであったと考えていい。

日常に革命をもたらしたWeb2.0

ビック・テックの登場で可能になった「双方向型」のコミュニケーション

少数が利用し、一方通行型であった黎明期のWeb。このままでは世界に広がりをもたらすことは叶わなかったが、巨大プラットフォーマーの誕生により状況は一変した。

今では人々の生活に深く根付いている「Google」「Amazon」「Facebook」「Apple」の4社からなる「GAFA」や、ビック・テックと呼ばれる企業らの存在により、Webは「特定の誰かが使うもの」から、「誰もが利用するもの」へと姿を変えたのだ。Web1.0時代では個人が情報を発信することが主流であったが、Web2.0では企業がプラットフォームを構築し、そこに集まるユーザーが自由に言葉を紡ぎ、自らの考えを表明することが可能となった。その代表例がSNSだ。

Facebookをはじめ、TwitterやInstagramなどのSNSでは、第三者が発信した情報に対し「いいね」や「リプライ」などを行うことで、相手に対し何らかのアクションを行うことができるようになった。これまで一方通行で情報発信を行なっていた世界とは異なり、ひとつのプラットフォームでコミュニケーションを行い、なおかつそのやりとりが完結する。Web1.0とは別の性質を持ったWebができあがったのだ。

そしてWeb1.0との大きな違いは、「動画」や「画像」コンテンツが充実し、Webを構成するカテゴリとして確立された点だろう。誰もが閲覧でき、誰もが動画・画像を投稿することができるというのは、日常に彩りをもたらした革命と表現しても過言ではない。

誰もが考えを発信することができ、そしてコミュニケーションを図ることができるようになるこれらの形態を、一方通行型と比較して「双方向型」と表現することも少なくない。つまりWeb2.0とは、一次元的なWeb1.0を様々な方向へ展開し、そして着地点でさらに広がりを見せていく様を描いた世界と言える。

民主制を実現する次世代型インターネット「Web3.0」

分散化されたインターネットは発明か否か?

情報発信を可能とした一方通行型のWeb1.0、そしてそれに自由と拡散性が含まれた双方向型のWeb2.0。では、Web3.0とは一体どんなWebなのだろうか。

一言で表現するならば、Web3.0とは「分散型」だ。サトシ・ナカモトによって生み出されたビットコイン、そしてそれを成り立たせるブロックチェーン。これらは、いずれも民主主義的な富の流れと情報の共有・透明性をもたらした。そしてWeb3.0では、ブロックチェーンを活用して次世代のインターネットを創りだす。

どんなものがWeb3.0に該当するかというと、ブロックチェーンを活用したSNSをはじめ、管理者のいない金融サービス、GameFiなどが挙げられる。一言で表せば、「ブロックチェーンを活用したサービス」は現状Web3.0に含まれると考えても差し支えないだろう。

人々に革命をもたらしたWeb2.0で留意すべきは、GAFAをはじめとしたビック・テックがそのシェアを圧倒的に握っている点だろう。現在のWebサービスを利用する上ではプラットフォーマーが圧倒的な力を有していることから、極端に表現すれば「絶対王政」に近い状況だ。特定のプラットフォーマーの意に反する意見、もしくは行為を見せれば、Webの世界にいる自分は凍結され、実質的に死を迎えることになる。「インターネットの人格は第2の自分である」との考えが広まりつつある中で、こうした状況は民主主義とは相反するものと捉えられることも少なくなくなってきた。

Web3.0ではWebの世界に民主主義をもたらすべく、ブロックチェーンを活用して透明性のある世界を生み出そうとしている。その大きな特徴としては、「非中央集権的なWebの構築」が挙げられる。

通常のWebサービスでは管理者がおり、そこにデータが集中する。しかしWeb3.0の概念では特定の管理者がおらず、自らがデータを所有・管理することになる。これにより、特定のプラットフォームへの情報集中を避けることができるほか、万が一情報漏洩などが発生したとしても、その被害はより軽減される可能性が高まる。そもそも、ブロックチェーンは現在のネットワークに比べ堅牢性は高い。一方で、自分で管理するとなると自己責任という言葉がつきまとうことになるため、リテラシーの向上は最大の課題になると言えるだろう。

そして大きな利点のひとつとしては、ブロックチェーンを活用することで自由度が増した経済圏での活動が可能となる点だ。

ビットコインやイーサリアムなどの暗号資産に加え、昨今アートやゲームなどの分野を中心に、活用の幅が広がっているNFTの最大の特徴は、ブロックチェーン上で構築することで透明性を確保し、対改ざん性の高さを誇る点。そして、第三者を介することなく直接取引を行える点も金融をはじめ既存の世界に大きなインパクトを与える。

元々ビットコインは直接的なやりとりを表すPeer to Peer(P2P)での金銭の送受金を実現するべく生まれたものだ。Web3.0でもこの考えを踏襲し、自由度の増した経済活動の実現を目指す。

民主的であるという特徴がより強まったWeb。これがWeb3.0の世界と言えるだろう。

各国のWeb3.0に関する動き

始まる。Web3.0の覇権争い。

Web2.0が世界を変えたように、Web3.0にも変革に対する期待感が高まりつつある。すでに各国の首脳らもWeb3.0を「重要政策」のひとつに位置付けており、覇権争いはスタートしている。

Web3.0関連の動きとしては、世界の中心であるアメリカのバイデン大統領が2022年に入り暗号資産をはじめとしたデジタル資産に関する規制整備を行う大統領令に署名した。この大統領令では「アメリカはデジタル資産分野で世界のリーダーでなければならない」と明言するなど、国を挙げて取り組む姿勢を明確にした。

また、フランスのマクロン大統領はWeb3.0やメタバース、NFTについて「必要条件的なものかつ見逃すことのできない機会だ」と発言。フランスおよび欧州において、Web3.0政策に取り組み、次世代Webにおける主権を握ることは「絶対的命題である」との認識を示している。

そして日本では、与党・自民党においてWeb3.0関連政策への取り組みが加速している。同党のデジタル社会推進本部らが中心となり、Web3.0やメタバース等に関する提言が示されている。岸田政権において初めて発表された「骨太の方針」、そして参院選の公約等にWeb3.0やそれに付随する政策が盛り込まれた要因とも言える。

日本は2021年のGDPにおいてアメリカ、中国に次ぐ3位に位置する経済大国とされているが、ことデジタル競争力ランキング(IMD)では、2020年時点で63か国・地域のうち27位と、年々後退している状況だ。世界的にデジタル化が進み、「技術大国」とも言われた日本が遅れをとっている。片や世界では競争が激化し、次世代インターネットであるWeb3.0の覇権争いも始まった。日本がデジタル後退国になることへの強い危機感から、政府は腰を上げ取り組みを強化する姿勢を打ち出したと言える。

自民党に限らず、野党においてもWeb3.0をはじめ暗号資産やNFT等に関する主張が目立つようになってきているため、国内における動きはさらに加速していく可能性がある。

取り組みを進める国内外の企業

全世界で加速するメタバース、NFTに関する取り組み

すでにWeb3.0に関する取り組みを進める企業は国内外に存在する。その代表的な存在が、2021年に社名をFacebookから変更したMetaだ。

社名を変更した背景には、メタバースの存在がある。CEOのザッカーバーグ氏は、メタバースを「重要な成長分野」として位置づけ、世界的な企業へと成長したFacebookの名を変えてまで意思表明をした。

現時点でメタバース構築に多額の資金を投入しているほか、既存のFacebookやInstagramにおいて試験的にNFT対応を行うなど、メタバースのリーディングカンパニーとして存在感を放っている。

日本でも多くのIP(知的財産)を持つ任天堂がメタバースへの取り組みに前向きな姿勢を見せているほか、ソニーやパナソニックなどをはじめ、様々な大企業が注力する意向を示している。日本ならではの強みとして、世界的なIPを活かしたメタバースやNFTに関する取り組みが加速していることから、今後世界をリードするようなコンテンツが生まれる期待感は日に日に高まっている。

メタバースやNFTに取り組む国内外の企業

メタ(アメリカ)
社名をFacebookからメタへ変更する形で、メタバースブームの火付け役となった。既存のFacebookやInstagramといった巨大SNSに加え、独自の技術と決済システムを組み合わせることにより、メタバース分野のリーディングカンパニーとしての地位を確固たるものにする。

任天堂(日本)
言わずもがな多くのIPを保有する世界的なゲーム企業。NFTはもちろん、メタバースにおいても独自の世界観を創出することに期待がかかる。具体的な取り組みについては進んでないものの、古川代表取締役社長(2022年6月時点)は「驚きと楽しみを提供できるか」が重要との認識を示し、前向きな姿勢を見せている。

ソニー(日本)
ソニーは2022年5月にメタバースを成長領域と位置づけ、注力していくことを表明した。ゲームや音楽、アニメなどのエンターテインメント分野において「感動空間」を構築していく。また、人気オンラインゲーム「フォーナイト」などで知られるエピックゲームスに出資し、メタバース分野での影響力拡大を睨む。

●パナソニック(日本)
世界的にも知られる電機メーカーのパナソニックは、2022年1月に子会社を通じてVRヘッドセットやメタバース対応音漏れ防止機能付きマイク等の3商品を発表した。メタバース空間をよりリアルに感じるための工夫を凝らしており、将来的なビジネス領域での活用も視野に入れる。

 

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