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学生からWeb3とメタバースを広げる「学生Web3&Metaverse超会議」イベントレポート

学生が主体となりWeb3とメタバースをマスに広めることを目的とする学生団体「WeCreate3(ウィクリ)」が1月29日、東京・渋谷のシェアオフィス「CryptoBase@NIB SHIBUYA」にて、「学生Web3&Metaverse超会議」を開催した。

イベント概要

今回のイベントは「Web3&Metaverseの正しい知識を初心者にも伝えることが目的」として行われた。

Web3領域は「金儲けの手段の1つではないか」「暗号資産(仮想通貨)が絡んでいるから怪しいのではないか」など、不信に思われていることが多く、特に日本ではその気が強い。こうした背景を踏まえ、主催者の雨蛙氏と井上進哉氏はオープニングの挨拶で「誤解が多いWeb3の正しい認識を広め、業界を成長させたい」と述べた。

イベントは「Web3セッション」と「Metaverseセッション」の二部構成で行われ、最後には交流会が行われた。このセッションには暗号資産業界やメタバース業界の第一線で活躍するスピーカーたちが登壇し、イベント参加者も学生を中心に募集参加者数を超える数が集まるなど、会場は熱気に包まれていた。

イベントの様子

Web3セッションではまず、RainbowChainのCEOで住友商事オープンイノベーションラボPALETTEのNFT部長である雨弓氏が登壇した。同氏はニュースサイトなど情報を一方的に伝えるWeb1、SNSに代表されるWeb2について噛み砕きながら解説かし「Web2ではGoogleやFacebookがあまりにも大きくなりすぎていて、情報を大量に所持することに対して皆が疑問に持ち始めた」ことから、「情報は自分で管理した方が良い」という発想につながりブロックチェーンを中心とするWeb3時代が始まったと述べた。NFTについては、自分の所有物であるということがデジタル上で初めて証明できるようになったと述べた。

セッションの様子
雨弓氏

次に国内最大級のスタートアップカンファレンスIVS Crypto運営責任者のWhiplus氏が登壇した。同氏はWeb3ファンドを主催し、180社に投資を行っている。昨年7月、沖縄で開催されたIVS Crypto NAHAでは2000人超が参加した。同氏も「NFTの画期的な点は所有の証明にある」と語った。学歴、職歴、チケットなど様々なことに応用ができるとし、「未来を予測する最良の方法は、未来を創ることだ(ピーター・ドラッカー)」の言葉を引用して、「好きな生き方ができる時代になる」とWeb3の展望を述べた。

セッションの様子
Whiplus氏

セッションでは東大在学時に株式会社キャンドルを創業し、現在は株式会社LightのCEOを務めるkin氏が加わった。同社は現在、ライブ配信アプリ「Palmu」を開発・運用している。

kin氏はNFTと暗号資産について「既存の証明と異なり、誰にも依存せず証明できること、ポイントが現金化できるところが面白い」と述べた。また、雨弓氏は「Web3は学問としてまだ体系化していない。私も好きなことをやって遊んでいたら有識者となっていた。Web3の良さはコスパの良さ」と語る。

Whiplus氏は参加者からの「Web3は海外で展開すべきか」との質問に対して、「海外経験はした方がいい」とした上で、自身が中国出身で米国、英国、カナダなど世界5都市8大学に通った経験から、「私自身は日本に来て良かった。情報格差というのはどこの国にもあり、経験が活きる部分がある」と述べた。シリコンバレーで1年半過ごした経験を有するkin氏も「Web3の領域による」と前置きした上で、「日本のマスに向けて展開するのなら日本で行うべき」とした。今年は日本の暗号資産関連税制に大きな変化が生まれる可能性があり、環境もかなり改善されるということもポイントとして挙げた。日本の暗号資産市場は海外に比べると非常に勢いがあり、パワーも持ちつつあるとしている。

kin氏はWeb3の勉強法として、アスターネットワーク(Astar Network)のホワイトペーパーを読むことを勧めた。1つのホワイトペーパーを読み込むことで知識が蓄えることができるからだという。また、Whiplus氏は何でも良いのでWeb3のプロジェクトを立ち上げることが1番身につくと述べた。「暗号資産の冬」について、kin氏は「自分たちの創る未来に備えておくべき」、Whiplus氏は「自分たちが楽しめればいつでも春」と述べ、参加者からは拍手が上がった。

セッションの様子
左からWhiplus氏、kin氏、雨弓氏

Metaverseセッションでは、株式会社クラスターの創業者兼CEOの加藤直人氏が登壇。「バーチャル渋谷」「ポケモンバーチャルフェスト」「ディズニーツイステッドワンダーランド」など年間160件のイベントを開催している日本発かつ日本最大のメタバースプラットフォーム「cluster」を開発、運営している。加藤氏はメタバースを構成する3つのプレイヤーとして、「体験」「空間」「デバイス」の3つのレイヤーを挙げた。

同氏は、日本でメタバースのプラットフォームを創る企業が現状少なく、「日本発のメタバースプラットフォームがもっと出てくるべきだ」と語った。「ゲーム・アニメIP」×「アバター文化」×「クリエイター文化」の観点から見ても日本ほどメタバースが成長するに適した国はないという。バーチャルユーチューバーが成功したのは日本のみであり、「メタバースは日本の最後の砦となるだろう」と述べた。

セッションの様子
加藤直人氏

このセッションではクラスター社に投資したSkyland VenturesのKinoshita Yoshihiko氏も参加し、両者でメタバースの未来について語り合った。加藤氏は「Web2時代は動画がネットのメインだった。今後30年かけてゲームがネットのメインになる」と予測。そして、現在メタバース内で生活をする人が増加傾向にあると指摘し、「高いお金を払ってアバターを買ったり、月に数万円ほど使う人は多くいる」と述べた。ここではNetflixのCEOであるリード・ヘイスティングスが株主向けに語った「Netflixの敵はHBOのような動画サイトではない。フォーナイトだ」という言葉も例として挙げている。clusterも現在ではイベントのみならず、好きなアバターでユーザー同士が集まり、様々な交流ができるプラットフォームへと進化している。

現在、世界で大流行中のゲーミングプラットフォーム「ロブロックス(Roblox)」はユーザーが2億人を超えて話題となっている。しかし、Web2時代の代表格であるFacebookのユーザーは30億人であり、それを踏まえればメタバースはまだ発展途上の段階にあると加藤氏は述べる。デバイスの点で言えば、現在VR関連で人気のあるMeta社の「Meta Quest」は2000万台売れているが、ゲーム機と比較すると「ニンテンドー64」の売れた台数とほぼ同じで、プレステーション2やSwitchが1億台以上を売り上げたことと比べると、まだ初期の段階にあると語った。

また、インターネット領域で過去に大きくマネーが動いたのは、広告とコマースであり、それぞれ80兆円と500兆円であるが、どちらも将来的には2倍の成長率が限界であると指摘。それに比べればインターネットゲームの規模はまだ20兆円であり、今後10年間で「デジタル上では数百兆円に成長する可能性がある」と見解を述べた。そのためにはクリエイターのハードルを下げることが必要であるという。例えば、「TikTokに投稿している女子高生などは自分がクリエイターなどとは思っていない。マインクラフトなどはユーザーが全員クリエイター。クリエイターは今後、プリミティブな1次とそれを利用して新しいものをつくる2次に分かれるだろう」と述べた。さらに、「メタバースが成長するには、ハードウェアーに3つほどのイノベーションが必要である」と述べる。業界的な問題として「Webアプリ作成者とゲーム作成者の対立問題があるため、両者のブリッジになるものが必要になる」とした。

また、現在の暗号資産の冬を引き合いに出し、「景気が悪い時の利点として、どこも雇ってくれないから自分で創業しようという人が増えることが挙げられる。つまりスタートアップが増えることが利点だ」と言及。「Web3領域のスタートアップ増加は日本のWeb3を発展させる。メタバースの領域では、今年は凪の年となるだろう。ビジネスはタイミングがとても重要で、入るタイミングは誰にも予測できなくて、運の要素もある。ただ、準備をしてひたすら待つことが重要だ」と述べた。

セッションの様子
左からKinoshita氏、加藤氏

まとめ

WeCreate3による初の大規模イベント「学生Web3&Metaverse超会議」は、Web3業界の第一線で活躍する起業家やVC、そしてWeb3領域への関心が高かったり起業を目指す学生、社会人が参加し、熱狂のうちに幕を閉じた。会場に集まった人々のWeb3への熱、そしてその交流は時間が足りないと感じるほど密なものであった。

日本のWeb3領域はまだ初期段階にあり、これから成長していずれ世界に通じる企業も出てくることだろう。また、日本ではWeb3での人材がまだ少ない、足りないと指摘されているが、本イベントでは熱意を持った未来ある人材が多いと感じることができた。

京セラを立ち上げた実業家の故稲盛和夫氏は、かつて「情熱だけが新しい時代を開くことができる」と語った。新しいモノへ取り組む意欲。そしてやり遂げるといった強い意志。こうした姿勢はWeb3の発展においても極めて重要なものと言える。

熱気に包まれた「学生Web3&Metaverse超会議」。将来、このイベントがきっかけとなり人々を驚愕させるようなイノベーターが出現するかもしれない。

画像:WeCreate3提供および月刊暗号資産