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Vol.54ニュースから見る暗号資産・Blockchain業界

6月11日(金)メールマガジン配信号より

アジア最大のブロックチェーンカンファレンス「Japan Blockchain Conference」の事務局より提供を受け、業界に関する事務局独自の見解を隔週で配信させていただきます。

〜エルサルバドルがもたらした暗号資産の「通貨」としての価値〜

暗号資産の歴史にまた新たな一ページが刻まれた。

9日、中米・エルサルバドルにおいてビットコインが法定通貨として採用されることが正式に決まった。ビットコインが法定通貨として認められた世界初の事例だ。

現在エルサルバドルでは米ドルが法定通貨として用いられているが、国民の7割が銀行口座を持っていないことや、国際送金に頼っているという背景がある。同国のブケレ大統領は、このような問題を解消し、金融包摂を進めていく上でビットコインの力が必要だと考えた。

この一件は世界に衝撃を与え、特に中南米諸国を中心に賛同の声が集まった。

ハイパーインフレやその他政治的問題を抱える国々にとって、ビットコインに活路を見出すことはメリットが大きい。

一方で、ビットコインの性質を考えた際に政府や中央銀行による管理というのが非常に難しいという側面もある。特にビットコインは24時間365日価格が変動し続けるだけでなく、ボラティリティが高いという点が通貨としてのリスクになる。

しかし、リテール決済の観点からみればその影響は限りなく低いと言えるだろう。それどころか、国際送金を多用することや現金を狙った犯罪等のリスクを天秤にかければ、その恩恵が大きいことは一目瞭然だ。

ビットコインの法定通貨化については、米国や日本、EU圏などの法定通貨価値が確立された国々からは歓迎されるものではないだろう。

こういった国々では暗号資産はあくまでも「投機商品」にすぎないとの見方が強いのはたしかだ。しかし今回の出来事を通じてエルサルバドルなどの経済的弱者とも呼べる国々では「通貨」としてみられているということを認識しなければならなくなったことだろう。

今後この波が広がれば安定通貨を持つ強国の焦りが見え隠れするが予想される。その中で、ビットコインや暗号資産を導入するというムーブメントが加速度的に展開されるのかどうか、注目したい。