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0.75%の利上げから見る今後の見通し- 金融のプロが教える“経済の見方” 第9回

米国FRBが0.75%の利上げを決定

米国の中央銀行FRB(米連邦準備制度理事会Federal Reserve Board)は6月14日-15日にFOMC(米連邦公開市場委員会)を開催し、0.75%の利上げを決定しました。これは1994年以来の大幅な引き上げです。当面のFF金利(フェデラルファンドレート)の誘導目標は1.50%~1.75%となります。

7月にも0.5%もしくは0.75%の利上げを行うとし、FF金利を12月までに3.40%、2023年末までに3.80%にすると表明しています。

またFRBは6月1日より保有証券の圧縮を開始しており、月額475億ドル(約6兆4,000億円)の規模となっています。9月からは規模を月額950億ドル(約12兆8,000億円)に拡大する予定です。FRBはこうした対応により最大限の雇用とインフレ率目標2%の達成を目指すとしています

パウエルFRB議長のコメントから、強すぎるインフレとそれに対する決意がわかります。以下がそのコメントです。

我々は高すぎる物価上昇率がもたらす苦難を理解している。下げるために迅速に動いている。米国の家庭と企業のため、物価安定を取り戻すべく必要なツールと決意がある。最大雇用と物価安定の促進という我々が議会に与えられた使命に照らせば、現在の状況は一目瞭然だ。労働市場は極めて逼迫し、インフレは進みすぎている

FRBの今後の経済見通し

今回FRBの経済見通しは大きく変更されました。直近に発表された米国消費者物価指数(CPI)とインフレ予測データを基に今年のインフレ率が前回の4.3%から0.9%引き上げられ5.2%となり、GDPも2.8%から1.1%引き下げられ1.7%となりました。特にGDPについては来年2023年も1.7%と低いものとなっています。

 2022年2023年2024年
FF金利3.4%(1.9%)3.8%(2.8%)3.4%(2.8%)
GDP1.7%(2.8%)1.7%(2.2%)1.9%(2.0%)
インフレ率5.2%(4.3%)2.6%(2.7%)2.2%(2.3%)
失業率3.7%(3.5%)3.9%(3.5%)4.1%(3.6%)
※インフレ率:米国個人消費支出物価指数

こうしたFRBの経済見通しを見ると、FRBの当面の考えはインフレ抑制へさらにウェイトを置くと思われます。その結果として成長率が鈍化すると予測していると思われますが、ウクライナ情勢も引き続き継続している中で、この程度の減速で済むのでしょうか?

非常に難しい予測となりますが、1970年代のインフレ局面以降、約40年続いた金融緩和時代が終焉を迎えた状況ですので、我々投資家サイドとしては先行きの見通しについて警戒心を強く持たないといけないのではないでしょうか。

米国経済の今後について十分にリセッションを警戒し、またマーケットについても引き続き調整を意識した対応を考えなくてはいけないのではないかと思われます。

Profile ◉倉本 佳光(くらもと よしみつ)
慶應義塾大学法学部法律学科を卒業後、山一証券株式会社に入社し金融業界でのキャリアをスタート。
その後メリルリンチ日本証券株式会社、岡三アセットマネジメント株式会社で手腕を発揮。
これまでにリテール及び機関投資家への営業、上場企業の資金調達、IPO、M&Aなどの業務を担当し、現在では「株式会社J-CAM」にて総合的な金融コンサルタントとして活躍している。