2022.06.03
ロシアへのエネルギー制裁が及ぼす影響- 金融のプロが教える“経済の見方” 第7回
EUのロシアへのエネルギー制裁
5月30日~31日にEU(欧州連合)臨時首脳会議が開催され、ロシアへのさらなる制裁強化について話し合われました。その結果、かねてより懸案となっていたロシア産原油の輸入禁止について合意されています。
内容は、ロシア産原油の大半を輸入禁止とするもので、具体的には全体の2/3を占める海上輸送がメインで陸上パイプラインを経由する一部を除くものとなっています。これは国内石油消費の約6割を陸上パイプライン経由で調達しているハンガリーへ配慮したものですが、ドイツやポーランドはパイプライン経由も輸入禁止とする方針です。
EUはすでに天然ガスについてもロシアからの輸入について、今後の方針を固めています。2022年末までにロシア産天然ガスの需要を2/3に削減し、2030年までにロシア産天然ガスから脱却するとしています。また石炭については輸入禁止を決定しています。
各国によるロシアへのエネルギー制裁
今回はEUがロシア産原油や天然ガス、石炭について方針を打ち出しましたが、日本をはじめ、世界ではすでに対応を明らかにしている国々があります。今一度、各国がどのような対応をしているか把握しておきましょう。
値上がりを続けるエネルギー価格
このようなロシアへの経済制裁を受けて、昨年から上昇をしているエネルギー価格は、さらに上昇する気配を見せています。
現在、エネルギー価格は昨年比で原油が+約60%、天然ガスが+約180%、石炭が+約240%の値上がりとなっています。
・原油
・天然ガス
・石炭
ロシアによるウクライナ侵攻がいつまで続くのかは、全く先の見通せない状況です。その間、各エネルギー価格の上昇は続くと思われます。
また地球温暖化への対応として世界的な潮流となっている脱炭素社会の実現に向けた動きもあり、石炭や原油の増産は難しい状況となっています。
今後、エネルギー価格の上昇とともに世界的なインフレが続くと考えられ、各国政府の対策が注目されるとともに、私たち自身の防衛策も考えなくてはいけないのではないでしょうか。
Profile ◉倉本 佳光(くらもと よしみつ)
慶應義塾大学法学部法律学科を卒業後、山一証券株式会社に入社し金融業界でのキャリアをスタート。
その後メリルリンチ日本証券株式会社、岡三アセットマネジメント株式会社で手腕を発揮。
これまでにリテール及び機関投資家への営業、上場企業の資金調達、IPO、M&Aなどの業務を担当し、現在では「株式会社J-CAM」にて総合的な金融コンサルタントとして活躍している。