月間暗号資産

  • HOME
  • COLUMN
  • 倉本佳光
  • 金利低下トレンド時代の終焉−金融のプロが教える“経済の見方” 第36回

金利低下トレンド時代の終焉−金融のプロが教える“経済の見方” 第36回

金利が株価に与える影響

バンク・オブ・アメリカが毎月行っている機関投資家調査によると、約60%の投資家が、今後は景気後退の中でインフレが進行するスタグフレーションに陥ると警戒を強めています。

こうした調査結果の背景には、米国で昨年からFRBによる金利引き上げが始まり、約40年間続いた金利低下トレンドの時代が終了し、「これからは低金利に代わって高金利の時期が始まる」とする考え方が出てきていることがあります。

米国10年国債利回りは、1981年秋につけた16%周辺から2020年夏の0.5%台まで約40年間低下をし、この間長期にわたり米国株式市場は上昇トレンドを描いてきました。

それではこの金利低下トレンドの前はどうだったのでしょうか。

これ以前の米国10年国債利回りは、1962年末の3.8%台から1981年まで金利上昇トレンドを描きました。こちらは約20年間でインフレの時代と捉えられます。

この間の米国株式市場の動きは、NYダウ平均で1962年520ドル台の安値をスタートとして、1000ドル台まで上昇しましたが、その後は概ね700ドルから1000ドルまでのボックス相場を長く続けました。

このように1960年代前半は、戦後を受けた1950年代の経済と中間層の拡大による好景気を引き継ぎ株価も大きく上昇しました。しかし、1960年代後半に入るとベトナム戦争長期化による影響から米国は債務が拡大しインフレが進行します。さらに1971年ドルと金の交換を停止するニクソンショックが起こり、ドルの信認が揺らぎます。この結果、ドルの下落が進みインフレが加速して景気後退に陥り、株価は低迷する事になりました。実際、1972年から1974年にかけての下落はNYダウ平均で1000ドル台から約300ドル下落したほか、S&P500では121ポイントから60ポイントへ半値となる大きな下落となっています。

現在の状況

現在は政府債務増加の時代となっており、ウクライナへの支援や対中国などを意識した国防費のための財政赤字拡大、クリーンエネルギー転換に向けた設備投資が増加するなど政府から積極的にお金が使われ、バラマキとも言える状況になっています。

今回のインフレ発生の入り口は対コロナ対策として出された政府からの支援金によるバラマキです。ドル高がピークアウトしたと見られる中、今後のインフレの状況が警戒され、景気と株価の動向が注目されます。

Profile ◉倉本 佳光(くらもと よしみつ)
慶應義塾大学法学部法律学科を卒業後、山一証券株式会社に入社し金融業界でのキャリアをスタート。
その後メリルリンチ日本証券株式会社、岡三アセットマネジメント株式会社で手腕を発揮。
これまでにリテール及び機関投資家への営業、上場企業の資金調達、IPO、M&Aなどの業務を担当し、現在では「株式会社J-CAM」にて総合的な金融コンサルタントとして活躍している。