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崩れ去った金融市場の楽観論−金融のプロが教える“経済の見方” 第32回

楽観的なシナリオは崩れ去る

今週に入り米国株式市場は調整色を強めています。11月30日に行われたパウエルFRB議長の講演を受けて、当初はコメントを好感しNYダウ平均は30日に約730ドルの上昇を見せました。その後、12月2日発表の雇用統計では非農業就業者数が26.3万人となり、予想値を大きく上回っています。このことからも、依然として雇用情勢は堅調に推移しており、賃金も高い水準を続けていることがうかがえます。

さらに、12月5日にはISM非製造業景況指数が発表され、サービス業が引き続き堅調で、サービス業でのインフレの勢いが依然として強い事が示されました。

これらの経済指標の状況はFRBの引締め政策の継続を示唆するものとなり、直近で囁かれていた「2023年早々に利上げが終了し、来年後半にも利下げが行われる」との楽観シナリオの可能性は、かなり厳しいものとなりました。

マーケットの関心と慎重な姿勢

現在マーケットの関心は、14日に行われるFOMC(連邦公開市場委員会)の結果、「政策金利の最終的な水準の見通しがどのようなレベルになるか、そしていつまで利上げが続くのか」になっています。

今後の株価見通しについて主要証券会社は、企業業績見通しに下方修正の余地があると見て慎重な予想をしており、「市場が弱気に戻る前に、利益の確定を推奨する」と述べるストラテジストも現れています。このような発言からも、企業業績の先行きについて不透明感が強まっている状況と言えるでしょう。

現在のフェーズは「FRBによる今後の利上げが企業業績へどれほどの影響を与えるのか」が重要なポイントになっています。私は米国経済の減速の本格化が「これから始まる」と考えていて、引き続き慎重な姿勢で見ていく必要があると見ています。

Profile ◉倉本 佳光(くらもと よしみつ)
慶應義塾大学法学部法律学科を卒業後、山一証券株式会社に入社し金融業界でのキャリアをスタート。
その後メリルリンチ日本証券株式会社、岡三アセットマネジメント株式会社で手腕を発揮。
これまでにリテール及び機関投資家への営業、上場企業の資金調達、IPO、M&Aなどの業務を担当し、現在では「株式会社J-CAM」にて総合的な金融コンサルタントとして活躍している。