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歓迎ムードを見せる金融市場に注意−金融のプロが教える“経済の見方” 第31回

利上げペース緩和の公算高まる

パウエルFRB議長は11月30日にブルッキングス研究所のイベントで講演し、今後の利上げペースの緩和についてコメントしました。また、利上げについては今後も継続し「金利はしばらくの間、景気抑制水準にとどめる必要がある」ともコメントしました。

フェデラルファンド・レートの終着点の水準に関しては、FOMC参加者による9月時点での予測中央値4.6%を上回る公算が大きいとし、マーケットでは5%前後の水準を想定して来年4-6月頃で利上げが止まるのではないかと見ています。

金融市場は歓迎ムード

米国株式市場では、今回の講演でパウエル議長からタカ派的な発言で冷や水を浴びせられるのではないかと懸念し、今週に入り慎重な動きを見せていましたが、予想に反したコメントにより、NYダウ平均+737ドル(+2.18%)、S&P500+122(+3.09%)、Nasdaq+484(+4.41%)と大幅な上昇を見せることになりました。こうしたマーケットのリスクオンのムードにより商品市場、暗号資産(仮想通貨)市場も堅調な動きを見せています。

講演でパウエル議長は「景気のソフトランディングは可能」だとしていましたが、今後さらなる金利の上昇から来年のリセッション入りの可能性は高まりを見せており、株式市場の動きはやはりベア・マーケット内での戻りと見る向きが多いと思われます。そのため、来年に向けては引き続き慎重な対応が必要と考えています。

暗号資産にとって前向きな動きも

このような中、FTXの破綻によりさらなる規制強化が叫ばれるなど、不安が大きく台頭していた暗号資産市場において、11月29日にブラジル議会でビットコインを決済手段として認める法案が可決されました。また、米国では同日にフィディリティが手数料無料でのビットコイン(BTC)とイーサリアム(ETH)の取引の提供を決定しています。

米国でのインフレ抑制に向けた金融引き締めにより厳しい環境となっていた資産運用の各市場の中で、徐々に次のステップに向けた動きが見られ始めていることは注目に値するのではないでしょうか。

Profile ◉倉本 佳光(くらもと よしみつ)
慶應義塾大学法学部法律学科を卒業後、山一証券株式会社に入社し金融業界でのキャリアをスタート。
その後メリルリンチ日本証券株式会社、岡三アセットマネジメント株式会社で手腕を発揮。
これまでにリテール及び機関投資家への営業、上場企業の資金調達、IPO、M&Aなどの業務を担当し、現在では「株式会社J-CAM」にて総合的な金融コンサルタントとして活躍している。