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利上げペース緩和も景気後退懸念高まる−金融のプロが教える“経済の見方” 第30回

FOMC議事録の発表

11月23日にFOMC(米国連邦公開市場委員会)の議事録が発表されました。11月2日に出された声明では「長期にわたって最大限の雇用と2%のインフレ率の達成を目指す。フェデラルファンド(FF)金利の誘導目標レンジを3.75-4%に引き上げる事を決めた」としていました。

今回の議事録発表はその内容を裏付けるものでしたが、「金利の利上げ幅を0.5%に減速する方向へ傾いていること」「フェデラルファンド金利の最終的な水準は、従来の見通しを幾分か上回ると見ていること」が確認されています。

利上げペース減速とリセッション

議事録要旨として「金利引き上げペースの減速が近く適切になる可能性が高いと判断した」とまとめられています。

しかし、今回FRBのスタッフエコノミストから金融当局に対して、個人消費支出の鈍化や世界経済を巡るリスク、追加利上げなどを背景として米国経済が今後1年間にリセッション(景気後退)に陥る可能性が50%程度に高まったとの予測を示しました。このような指摘は、3月の利上げ開始以降で初めてのことになります。

この発表を受けてマーケットでは金利先高感が後退し、米国10年国債利回りは3.69%へ低下。23日のNYダウ平均は95ドル上昇し34,194ドルとなりました。

マーケットはこのように反応しましたが、FRBスタッフエコノミストが指摘したリセッションに陥る可能性について、Bloombergがエコノミストに対して行った調査では、中央値で65%、またBloombergエコノミクスのモデルで100%となっています。

来月には利上げペースが減速する可能性が高まったとは言え、少なくとも0.5%の利上げが行われる予定であり、今後のインフレの動向はまだ楽観できるものではありません。

米国経済のリセッション入りが確実となってくれば、企業業績は下方修正される可能性もあり、今後の株式市場には十分なる警戒が必要と考えます。

Profile ◉倉本 佳光(くらもと よしみつ)
慶應義塾大学法学部法律学科を卒業後、山一証券株式会社に入社し金融業界でのキャリアをスタート。
その後メリルリンチ日本証券株式会社、岡三アセットマネジメント株式会社で手腕を発揮。
これまでにリテール及び機関投資家への営業、上場企業の資金調達、IPO、M&Aなどの業務を担当し、現在では「株式会社J-CAM」にて総合的な金融コンサルタントとして活躍している。