月間暗号資産

  • HOME
  • COLUMN
  • 倉本佳光
  • 米国のインフレにピークアウトの兆し−金融のプロが教える“経済の見方” 第29回

米国のインフレにピークアウトの兆し−金融のプロが教える“経済の見方” 第29回

米CPI+7.7%に鈍化

11月10日に発表された米国10月の消費者物価指数(CPI)は前年同月比で7.7%の上昇と4ヵ月連続で鈍化しました。前月の+8.2%から鈍化し予想の+7.9%を下回った形です。エネルギーと食品を除いたコア指数でも+6.3%と9月の+6.6%から鈍化しています。

一方で、米国のインフレはピークを打ったのでしょうか?

内訳を見ると、インフレの大きな要因であるエネルギーは前年同月比で+17.6%と、前月の+19.9から鈍化しました。しかし、サービスは若干ではありますが+6.8%と前月の+6.7%から加速しました。また住宅関連では+7.9%と前月の+8.0%から減速となっています。

住宅がピークを打ち、雇用も今月に入りIT大手を中心にレイオフの発表が相次いでいることから、賃金についても弱まりつつあると見られます。

期待膨らむ金融市場の動き

今回の発表を受けて当日の金融市場は大きく反応しました。今までのCPIショックとは逆の反応で株高、債券高となり、NYダウ平均が約1,200ドル上昇し、米国10年債利回りは3.81%と0.3%近く低下しました。また為替相場も強く反応し、ドル円で146円台から140円台へ大きく進みました。

今回の発表を受け、米国のインフレはピークを打った可能性がありますが、引き続き高い水準を維持すると思われます。FRBの金利引き上げについては、引き上げペースを緩める事は考えられますが、まだ続くとして見るべきと考えています。

しかし、債券市場はその後も落ち着いた動きとなっており、11月16日の米国10年債利回りは3.68%とさらに低下しています。こうした状況を受けてドル円相場も少しずつ円高に振れ、139円台の動きとなっています。ドル高相場の終焉が近づいたと見られています。

ドル円相場については、一時は150円台から160円台へ動くのではないかとの議論も出ていましたが、その懸念は無くなりつつ有ります。まだ円安へ一時的に振れる場面は想定されるものの、先日の為替介入前に付けた150円台をピークとする可能性が高まりました。

2020年末の103円台から50円近くも進んだ円安も新たな局面を迎えることになりそうです。来年に向けて今後の日本銀行の動きが注目されるとともに、国内経済の立て直しに向けた政府の対応が期待されます。

Profile ◉倉本 佳光(くらもと よしみつ)
慶應義塾大学法学部法律学科を卒業後、山一証券株式会社に入社し金融業界でのキャリアをスタート。
その後メリルリンチ日本証券株式会社、岡三アセットマネジメント株式会社で手腕を発揮。
これまでにリテール及び機関投資家への営業、上場企業の資金調達、IPO、M&Aなどの業務を担当し、現在では「株式会社J-CAM」にて総合的な金融コンサルタントとして活躍している。