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不動産不況に追われる習近平政権−金融のプロが教える“経済の見方” 第26回

GDP発表を延期した中国

中国は10月18日(火)に発表予定だった7-9月期GDPの発表を延期しました。10月16日(日)から開催されている共産党大会を意識したものと考えられます。

中国の7-9月期GDPは今回の市場予想で+3.5%前後と言われています。前回4-6月期で前年同期比+0.4%と、ほぼ「ゼロ成長」の結果でしたので注目されていました。

中国は2020年に不動産開発業者への融資に対して制限を行いました。その結果、不動産開発業者に信用不安が発生し、不動産大手の中国恒大集団など30社を超えるデフォルトが起こりました。中国のGDPに占める不動産の比率は30-40%と言われており、今回発生した不動産不況は経済全体へ大きく影響を与えていると思われます。

中国ではこうした不動産不況やゼロコロナ政策による経済停滞に対しての景気刺激のため、地方政府がインフラ投資へ充てられる資金として5,000億元(約10兆円)の債券を8月に発行しました。しかし、こうした刺激策は年初からも強化しており、以前のように効果を上げる事が難しくなっています。

本来なら中国政府は債務問題が深刻になった不動産関連企業や金融機関に公的資金を注入して不良債権の処理を進め、また成長期待の高い先端分野に規制緩和などで再配分する事が求められます。しかし習近平政権では「共同富裕」を掲げており、そうした取り組みを進めることは難しいと考えられます。

10月16日の習近平総書記の講演では新たな対策はコメントされませんでした。中国経済の低迷は世界経済への大きなリスクであり、今後の動向が注目されます。

Profile ◉倉本 佳光(くらもと よしみつ)
慶應義塾大学法学部法律学科を卒業後、山一証券株式会社に入社し金融業界でのキャリアをスタート。
その後メリルリンチ日本証券株式会社、岡三アセットマネジメント株式会社で手腕を発揮。
これまでにリテール及び機関投資家への営業、上場企業の資金調達、IPO、M&Aなどの業務を担当し、現在では「株式会社J-CAM」にて総合的な金融コンサルタントとして活躍している。