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インフレへの意思表明を行った利上げ−金融のプロが教える“経済の見方” 第22回

米国FRB、0.75%利上げを実施

米国FRB(連邦準備理事会)は21日のFOMC(連邦公開市場委員会)の会合後に0.75%の利上げを発表しました。具体的には政策金利であるFF金利の誘導目標を3.00%~3.25%へ0.75%引き上げるもので、今後の政策金利の見通しについては中央値として2022年末4.4%、2023年末4.6%、2024年末3.9%、2025年末2.9%としています。

インフレへの対処に強い意志を表明

パウエルFRB議長は今までよりも景気が悪化し、インフレが長期化する見通しから、「景気が減速しても、早期に利下げに転じることはない」と強く示唆するとともに「我々はインフレを過去のものにする必要がある。痛みを伴わずにそうする方法があれば良いが、それはない」とインフレに対処する強い意志を表明しました。

長期金利上昇と景気悪化へ

今回の利上げにより長期債利回りも上昇し10年国債が3.5%台に上昇していますが、今後の政策金利の上昇に伴い10年国債利回りも4.5%~5.0%程度への上昇が見込まれます。

こうした金利上昇を受け、今後景気の悪化および失業率の増加が想定され、FRBは失業率の見通しについて、2023年末4.4%、2024年末4.4%とし本年6月末時点の見通しであった2023年末3.9%、2024年末4.1%から引き上げました。

脱グローバル化によるインフレを警戒

今後、米国の景気後退が現実のものとなり、それに伴い株式市場の調整はインフレの長期化とともに長引くと考えられます。特にインフレについては、現在行われているロシアへの経済制裁により世界経済は脱グローバル化の流れとなっており、グローバル化により進んだ生産性の向上と低インフレの動きが逆流するものとなるため、今までにない物価上昇についてさらに留意する必要があります。

一方で、FRBの長期見通しは2024年の大統領選挙を意識して甘めに見ている節もあり、米国経済および米国株式市場の今後の動向については余談を許さず注意が必要と考えています。

Profile ◉倉本 佳光(くらもと よしみつ)
慶應義塾大学法学部法律学科を卒業後、山一証券株式会社に入社し金融業界でのキャリアをスタート。
その後メリルリンチ日本証券株式会社、岡三アセットマネジメント株式会社で手腕を発揮。
これまでにリテール及び機関投資家への営業、上場企業の資金調達、IPO、M&Aなどの業務を担当し、現在では「株式会社J-CAM」にて総合的な金融コンサルタントとして活躍している。