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日本で約35年続いた円高が終了−金融のプロが教える“経済の見方” 第20回

144円台へ進んだ円安

9月7日のNY市場で1ドル=145円間近まで進んだドル円相場は、8日東京市場でも144円台で推移しました。

円相場は、7月後半から米国でのFRBの金融政策への楽観的な見方を受け、130円台での落ち着いた動きとなっていましたが、ジャクソンホール会議でのパウエル議長の講演を意識し始めた8月半ばから楽観論が徐々に後退し、円安への動きが再度強まり始めていました。

ジャクソンホール会議でのパウエル議長講演の内容が「インフレを抑制するための強い引き締め政策」と確認され、円安の動きが加速しています。

日米インフレの違い

米国のインフレは、コロナ対策として支給された給付金や賃金上昇による消費拡大からの国内需要の増加が大きな要因となったと考えられ、(いわゆるデマンドプッシュ・インフレ)加熱した経済を冷やしインフレを抑える引き締めとなります。

一方、日本国内のインフレは、昨年から少しずつ進展していた円安による価格上昇と、ウクライナ侵攻に伴う価格上昇で起こったコストプッシュ・インフレと考えられます。こうした中でも日本の金融政策に変更はなく、また世界で唯一のマイナス金利国にまもなくなる事などを踏まえて円が売られている状況となっています。

これまでの円相場

第二次世界大戦後の円相場は、ブレトンウッズ体制での360円固定相場からニクソンショック後(ドル切り下げ)のスミソニアン協定の308円を経て、1973年4月に変動相場制へ移行しました。そしてプラザ合意後の超円高や1995年の79.75円、2011年の75.52円と2回の70円台の高値を経て今に至っています。

これまでの円相場の動きを見ると、円高や円安のトレンドは通常3-5年程度続いていますので、来年も円安の動きは続くと思われます。米国では約40年続いた金融緩和が終了したと考えられ、日本では約35年続いた円高が終了したと考えて良いかもしれません。

来年に向けて

今年はすでに30円程度振れていますが、年内150円あるいは160円があるかもしれません。また来年4月には日本銀行総裁の任期切れに伴う交代が予定されていますので、その前に投機筋による「金利引き上げ催促の円売り」が出てくる事も考えられます。

今後の円相場については、常に緊張感を持って注視する必要がありそうです。

ドル円相場(1971-2022年 年足)
移動平均線(13年、26年)
引用元:かぶれん

Profile ◉倉本 佳光(くらもと よしみつ)
慶應義塾大学法学部法律学科を卒業後、山一証券株式会社に入社し金融業界でのキャリアをスタート。
その後メリルリンチ日本証券株式会社、岡三アセットマネジメント株式会社で手腕を発揮。
これまでにリテール及び機関投資家への営業、上場企業の資金調達、IPO、M&Aなどの業務を担当し、現在では「株式会社J-CAM」にて総合的な金融コンサルタントとして活躍している。