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極めて重要なジャクソンホール会議 – 金融のプロが教える“経済の見方” 第18回

8月25日(木)から27日(土)の期間に米国ワイオミング州ジャクソンホールで米カンサスシティ連銀主催による国際経済シンポジウム、いわゆる「ジャクソンホール会議」が開かれます。

今年のテーマは、「経済と政策への制約を再評価する」(Reassessing Constraints on the Economy and Policy )となっています。

注目されるパウエルFRB議長の講演

今回最も注目されている講演は、26日(金)現地時間10時(日本時間:26日23時)に行われるパウエルFRB議長の講演です。ジャクソンホール会議は政策決定の場ではありませんが、今までに何度か重要な政策の転換を示す発言が出された事があり、今回は世界的なインフレに対して金融政策を引き締めている米国FRBの考え方について注目が集まっています。

パウエル議長は、昨年のこの会議で「米国内のインフレは一過性に留まる可能性が高い」と発言しましたが、米国内のインフレは収まらず、その3ヵ月後に発言を修正しました。

今回、そうした経緯や今年始めたインフレ抑制に向けた金融引き締め政策の経過を踏まえ、今後の方向性を示す重要な講演と考えられています。

7月利上げ時のコメント

7月に0.75%の利上げが行われた際のパウエル議長のコメントでは、「ロシアのウクライナに対する戦争の影響で、ガソリンや食料の価格が上がり、インフレ率のさらなる上昇圧力となっている。食料や住宅など人々の生活に不可欠なものの物価上昇は人々に大きな苦痛を与えている」とし、インフレ抑制に向けた強い意志を示しました。そして9月にも大幅な利上げが適切になる可能性を示す一方、「金融政策のスタンスがさらに引き締まるにつれて、これまで積み重ねてきた政策効果を見極めながら、利上げのペースを緩めることが適切になる可能性がある」と、意図せずリセッション(景気後退)に陥るリスクを考え、利上げペースを緩める可能性にも言及しました。

マーケットは、こうした発言のうち「利上げペースを緩める可能性」に注目し、楽観的な考え方を持って株価を押し上げました。各連銀総裁はそうした動きに対して牽制するコメントを発しています。

今回の講演内容

今回の講演では、マーケットの持った誤った認識を正すとともに改めて米国内のインフレ抑制に向けたFRBの強い意志を示すと考えられますが、基本的に7月にコメントした内容や先日発表されたFOMCの議事要旨と同様のメッセージを繰り返す内容となるのではないでしょうか。

米国株式市場は、先週からジャクソンホール会議を過度に意識して調整してきましたので、パウエル議長の講演がこうした内容であるならば、しばらく落ち着いた動きとなるのではないかと考えます。

しかし、これから本格化する量的引き締め(QT)も合わせて、金融引き締めの効果はより強まると思われ、景気減速に対して警戒が必要です。

Profile ◉倉本 佳光(くらもと よしみつ)
慶應義塾大学法学部法律学科を卒業後、山一証券株式会社に入社し金融業界でのキャリアをスタート。
その後メリルリンチ日本証券株式会社、岡三アセットマネジメント株式会社で手腕を発揮。
これまでにリテール及び機関投資家への営業、上場企業の資金調達、IPO、M&Aなどの業務を担当し、現在では「株式会社J-CAM」にて総合的な金融コンサルタントとして活躍している。