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楽観論が広まりつつある米国市場 – 金融のプロが教える“経済の見方” 第16回

楽観論に流れる米国市場

8月2日ペロシ米国下院議長が台湾を訪問しました。訪問前には中国から牽制するコメントが出されており、この訪問により今後米国と中国のデカップリングが加速し、サプライチェーンへの圧力や世界の商品価格への影響などが懸念されています。

しかし翌3日の米国株式市場は、NYダウ平均+416ドル、S&P500+63ポイント、Nasdaq+319ポイントと大幅高となりました。

これは台湾周辺で実施する実弾演習などの中国の対抗措置が想定内のものであった事が要因になったかと思われますが、それ以上に米国市場が先月末より楽観的な思考になっているのが大きな要因ではないでしょうか。

FRBも見通しも要因に

7月27日にFRBは0.75%の利上げを実施し、パウエル議長は「当面の目標を達成するためには景気減速が必要」と繰り返し述べました。しかし市場は、「利上げペースをいずれ落とすことになるだろう」とのコメントを強く意識し、今後の見通しについて楽観的な方向性を見いだしています。

このような状況を意識した連銀筋は、「物価上昇がピークを越えたか確認はできていない。我々にはさらにやることがある」(クリーブランド連銀メスター総裁)、「利上げの終わりにはほど遠い」(サンフランシスコ連銀デイリー総裁)と相次いでコメントを発表しました。

しかし市場はこうしたコメントにはほとんど反応を見せず、「ウクライナの穀物船がレバノンへ出航」や米労働省が発表した「6月の雇用動態調査の非農業部門求人件数が3ヶ月連続減少(▲60万5,000件)」、ISM非製造業景況指数が「予想中央値(53.5)を56.7と上回った」などの経済的動きを好感しています。

米国金融市場はこうした楽観的なムードに浸り、今月を過ごすのではないかと思われます。

CPIの発表など重要イベントが焦点

今後、株式市場などに大きな影響を与える要因としては、来週発表される米国消費者物価上昇率(CPI)が挙げられます。先月発表されたCPIは前年比で9.1%もの上昇と、非常に強い数字となりました。インフレの歯止めがきかない場合にはFRBもさらなる対応を迫られることになるかもしれません。

そして、月末にはジャクソンホールでのパウエル議長の講演、9月にはFOMCなどが控えていて、どちらも金融市場に大きな影響を与えることが考えられます。

これらの重要イベント前後における市場の反応にも注目すべきでしょう。

Profile ◉倉本 佳光(くらもと よしみつ)
慶應義塾大学法学部法律学科を卒業後、山一証券株式会社に入社し金融業界でのキャリアをスタート。
その後メリルリンチ日本証券株式会社、岡三アセットマネジメント株式会社で手腕を発揮。
これまでにリテール及び機関投資家への営業、上場企業の資金調達、IPO、M&Aなどの業務を担当し、現在では「株式会社J-CAM」にて総合的な金融コンサルタントとして活躍している。