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数字から見る中国経済の今 – 金融のプロが教える“経済の見方” 第14回

中国経済を数字から読み解く

7月15日に中国のGDP(4-6月期)が発表されました。第2四半期のGDPは前期比▲2.6%と減少、前年比では+0.4%でした。上半期では+2.5%となり、本年の目標値+5.5%から大きく下方へ乖離した形となったほか、新型コロナウイルス対策のロックダウン(都市封鎖)による産業活動や個人消費への影響が鮮明となっています。

地域経済では、上海市が第2四半期に前年比▲13.7%とマイナス成長、北京市も▲2.9%のマイナス成長となっています。鉱工業生産は6月前年比3.9%増加し、5月の0.7%増から伸びが加速しましたが、市場予想の4.1%増は下回っています。

また小売売上高はコロナ規制の緩和を受けて6月に前年比3.1%増加し、5月の▲6.7%から大きく増加しました。上海市のロックダウン解除がプラスに出たと見られています。中核の一つである固定資産投資は上半期で前年比+6.1%で予想は+6.0%、1-5月は+6.2%増でした。

不動産投資は振るいません。上半期は前年比▲5.4%で1-5月(▲4.0%)よりも落ち込み幅が拡大しました。6月は▲9.4%と5月の▲7.8%から減少ペースが加速しました。主要都市の新築住宅価格は、6月は前年比0.5%下落。住宅購入支援策が導入されていますが、5月(0.1%下落)よりも悪化しました。

6月の統計にはやや明るさが見られましたが、ゼロコロナ政策の堅持、不動産市場の低迷、世界経済の見通し悪化などから先行きへの不透明感が続いています。

世界経済フォーラムでの李克強首相

中国の李克強首相は19日に世界経済フォーラムで次のように話しています。

高すぎる経済の成長目標達成のために、大型の景気刺激策や通貨を過剰に供給するなどの政策を実施することはない

政府が定めた経済成長率の目標について目標未達でも容認する姿勢を示したと考えられます。

中国共産党は、「通年の目標を達成するよう注力しなければならない」と4月に中央政治局会議で強調していましたが、今春からの景気悪化に加え、「ゼロコロナ政策」による景気の失速から目標達成が厳しくなってきていました。

中国景気悪化の影響 

景気悪化による不動産の不振は、地方政府の土地売却収入の大幅減少を引き起こしており、地方政府の財政状況悪化につながっています。地方政府は金融機関に対して「返済繰り延べ、金利引き下げ、借り換えなど」の措置による支援を要請しています。今後こうした動きが広がる可能性が高まっています。この問題は、昨年起こった中国恒大集団の破綻を始まりとした中国の不動産バブル崩壊と考えられるのではないでしょうか。

中国の人々にとって資産形成、資産運用の中心は不動産ですから、不動産価格が崩壊すると中国の人々の今後の消費に大きな影響を及ぼすと考えられます。世界の企業は中国の大きな購買力に向かって生産し輸出してきましたので、それが大きく減少する事になります。

かねてより懸念されていた中国経済の動向ですが、「不動産バブルの崩壊」と「ゼロコロナ政策」による景気悪化に対して、中国政府による強力な景気刺激政策が期待できないとすると、「ウクライナ侵攻問題」「世界的な物価上昇」に加えて、「中国経済の動向」についてより注視をしていく段階に入ってきたと思われ、各国政府ならびに各企業の対応が注目されます。

Profile ◉倉本 佳光(くらもと よしみつ)
慶應義塾大学法学部法律学科を卒業後、山一証券株式会社に入社し金融業界でのキャリアをスタート。
その後メリルリンチ日本証券株式会社、岡三アセットマネジメント株式会社で手腕を発揮。
これまでにリテール及び機関投資家への営業、上場企業の資金調達、IPO、M&Aなどの業務を担当し、現在では「株式会社J-CAM」にて総合的な金融コンサルタントとして活躍している。