2022.07.15
猛威を振るうインフレと市場の動き – 金融のプロが教える“経済の見方” 第13回
米6月CPIは記録的な水準
7月13日に米国消費者物価(CPI)6月が発表され、前年同月比+9.1%と、1981年11月以来の高い伸びとなりました。今回の予想値+8.8%、5月の+8.6%をも上回る高いものです。また前月比でも+1.3%と2005年以来の高さとなりました。
この結果を受けて米国市場では7月に+1.0%さらに9月に+0.75%の利上げをFRBが行うとの予想が支配的になりつつあります。
最近の考え方は7月に予定通り+0.75%の利上げを行った後はインフレの沈静化を見ながら利上げの幅を0.5%ずつとしていくものでしたが、全く違った展開になりつつあります。
期間 | 前月比(市場予測) | 前月比(結果) | 前年比(市場予測) | 前年比(結果) |
2022年6月 | 1.1% | 1.3% | 8.8% | 9.1% |
2022年5月 | 0.6% | 1.0% | 8.3% | 8.6% |
2022年4月 | 0.2% | 0.3% | 8.1% | 8.3% |
2022年3月 | 1.2% | 1.2% | 8.4% | 8.5% |
2022年2月 | 0.8% | 0.8% | 7.9% | 7.9% |
2022年1月 | 0.4% | 0.6% | 7.2% | 7.5% |
EU経済見通し
一方、欧州連合(EU)では14日に発表する今後の経済見通しについて欧州委員会が草案をまとめました。その見通しではユーロ圏のインフレ見通しを2022年+7.6%、2023年+4.0%と従来の+6.1%、+2.7%から大幅に上方へ修正する見込みです。経済成長率(GDP)についても従来の2022年+2.7%、2023年+2.3%から+2.6%、+1.4%と下方修正になる見込みです。
欧州ではすでにリセッション(景気後退)入りは避けられないと考えられており、米国でも欧州からの影響や今後の強烈な利上げによりリセッション入りは確実になりつつあると思われます。
米国株式市場の行方
今回40年ぶりのインフレ環境に遭遇し、40年続いた金融緩和時代の終焉を迎えたと考えられます。企業は今後景気の減速、あるいは景気後退により業績の下方修正を行うことになると思われます。すでに大手金融機関ではそうした考えの基に株式市場の底値メドを想定し始めています。
1970年代のインフレ対処後の下落やドットコム・バブル後の下落での株式市場の底値はS&P500で高値の半分程度の水準でした。もし今回も同様に考えるならS&P500で2020年3月20日の安値2300ポイントあたりの水準となります。
現在、一部では今年の年末水準としてS&P500の3400ポイントがあげられていますが、ここが下値とはコメントされていません。かつての下落相場は底値に届くまで2年以上にわたり、上下を繰り返しながら下落を続けました。今回もウクライナ侵攻やコロナ対応などの影響も見ながら長期になる可能性が高いと考えています。
国内株式市場はどうなる?
国内の株式市場では、輸出関連企業など欧米の影響を受けると思われますが、物価上昇の程度および金融政策が異なり、欧米の株式市場とは異なった動きになると思われます。インバウンド関連や内需関連に着目した展開が期待されます。
しかし、世界的なインフレの進展に留意し、慎重な投資態度が求められると思われます。
Profile ◉倉本 佳光(くらもと よしみつ)
慶應義塾大学法学部法律学科を卒業後、山一証券株式会社に入社し金融業界でのキャリアをスタート。
その後メリルリンチ日本証券株式会社、岡三アセットマネジメント株式会社で手腕を発揮。
これまでにリテール及び機関投資家への営業、上場企業の資金調達、IPO、M&Aなどの業務を担当し、現在では「株式会社J-CAM」にて総合的な金融コンサルタントとして活躍している。