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リセッションを意識する金融市場 – 金融のプロが教える“経済の見方” 第12回

リセッション(景気後退)を意識する米国経済

7月6日のNY株式市場は、NYダウ平均・S&P500・Nasdaqの3指数ともに小幅高で終了しましたが、NYダウ平均に見られるように高値安値の上下幅は430ドルもあり、米連邦公開市場委員会(FOMC)の議事要旨発表の前後で大きく振れる展開となりました。

議事要旨の内容では、「インフレへの対処を優先しインフレ阻止に向け積極的に金融引き締めを行う姿勢」が確認されましたが、想定内の内容として米国の金融政策に対する不透明感が後退しました。

米債券市場は引き締めを意識した動きとなり、利回りは上昇しドルが買われる展開となりました。一方、商品市場では景気後退懸念から今週甘い動きとなっていた原油や金が一段安となるなど、供給が逼迫している中で不透明感が増している状況です。

リセッション(景気後退)を意識するマーケット

2022年上半期(1-6月期)が終了し、マーケットの動きを総括する記事が見られますが、今週の日本経済新聞では「世界株、IT・資源主導に幕」「世界REIT『全部売り』」などの見出しが注目されました。

急速に進み出した世界的な金融引き締めを受けて、世界的な景気後退リスクが高まり、インフレに比較的強いと言われる不動産でも需要の減少を意識した動きとなったことから、全てのセクターが「売り」の対象となりました。景気後退が徐々に現実味を帯びてきている表れと考えられ、資金の逃避先となる投資対象がなくなりつつあります。

しかし、景気後退リスクのマーケットへの織り込みはまだ不充分とも思われ、世界的に各企業の業績の下方修正が始まるかもしれません。今月後半から本格化する米国企業4-6月期の決算発表が注目されます。

株式市場ではこうした決算動向に注意し、引き続き慎重な対応が求められると考えています。

景気後退と金融緩和

FRBはインフレへの強い対処に向け金融引き締めへと動いていますが、インフレがどのレベルまで引き締めが続くのでしょうか。今回のインフレは1970年代以来のものであり、ウクライナ侵攻・コロナ対応さらにサル痘の広がりなどで簡単に終息するとも思えません。

しかし、第二次世界大戦後の米国で景気後退は12回ありましたが、その時期に株価上昇となったのがS&P500で6回、NYダウ平均で9回あります。これは当時の米国政府による景気刺激策とFRBによる金融緩和措置がポイントとなり、結果として「不景気の株高」が起こりました。

現在のFRBのスタンスから安易な金融緩和観測は出来ませんが、今後の「インフレ動向」「米国景気動向」「米国株価水準」などに引き続き注視が必要であり、今週末発表の米国雇用統計が注目されます。

Profile ◉倉本 佳光(くらもと よしみつ)
慶應義塾大学法学部法律学科を卒業後、山一証券株式会社に入社し金融業界でのキャリアをスタート。
その後メリルリンチ日本証券株式会社、岡三アセットマネジメント株式会社で手腕を発揮。
これまでにリテール及び機関投資家への営業、上場企業の資金調達、IPO、M&Aなどの業務を担当し、現在では「株式会社J-CAM」にて総合的な金融コンサルタントとして活躍している。