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要人3名が示す金融政策の方向性 – 金融のプロが教える“経済の見方” 第11回

インフレ下で開催のECB年次フォーラム

6月29日、ポルトガルのシントラで開催されたECB(欧州中央銀行)年次フォーラムにおいて、ECBラガルド総裁、FRB(米国連邦準備委員会)パウエル議長、英国中央銀行ベイリー総裁が「持続的な物価上昇圧力と経済成長の減速にどう対処するか」について討論を行いました。

直近に発表されている5月の各国・地域の物価上昇率は、前年同月比でEU(欧州連合)+8.1%、米国+8.6%、英国+9.1%と非常に高いものとなっています。このような状況を受けて次のようにそれぞれがコメントをしています。

米国経済はかなり強い状態

FRBのパウエル議長は、「米国経済のソフトランディングは可能だが、その達成はかなり厳しい」と認め、「米国経済はかなり力強い状態にある」としました。

また、「現在の需給はバランスを欠いた状態でインフレを低下させるため、その均衡を取り戻す必要がある。引き締めについては経済の成長ペースを落とし、供給が追いつけるようにすることが目的で、本当の危険は『高インフレが長期化し、インフレ期待が制御不能になる』こと」と述べ、その上で「現在は長期のインフレ期待が制御不能になる状況ではない」とコメントしました。

インフレ抑制に向け強力な選択肢がある

英国中央銀行のベイリー総裁は、「物価上昇が問題となる持続的兆候が見られる場合は、インフレ抑制に向けさらに強力な選択肢がある」として、次回の金融政策委員会での0.5%利上げの可能性を排除しませんでした。

低インフレの環境に戻るとは思わない

そしてECBのラガルド総裁は、「インフレが加速し、インフレ期待の抑制が脅かされるような場合、もしくは潜在的経済力がより恒久的に失われ、資源利用を制限する兆しが表れる場合には、早急に緩和策を引き揚げる必要があるだろう」とし、インフレ抑制に必要な場合にはさらなる行動をする用意があることを示しました。

また、「今後低インフレの環境に戻るとは思わない」とし、「新型コロナウイルスの世界的な流行と、地政学上の大規模な衝撃の結果として起きている動きは、われわれの政策運営の状況と風景を変えていくだろう」と述べています。

要人3名が示した金融政策の方向性

このような3人の発言は、今後の金融政策の在り方が今までとは大きく変化する可能性を示唆しており、インフレに対する強固な姿勢が感じられるものとなっています。

欧米の中央銀行首脳のコメントから、今回のインフレの強さとその長期化を懸念している事がわかります。経済成長への影響は読み切れませんが、株式市場を中心としてマーケットは引き続き影響を受けていく事になると思われます。

Profile ◉倉本 佳光(くらもと よしみつ)
慶應義塾大学法学部法律学科を卒業後、山一証券株式会社に入社し金融業界でのキャリアをスタート。
その後メリルリンチ日本証券株式会社、岡三アセットマネジメント株式会社で手腕を発揮。
これまでにリテール及び機関投資家への営業、上場企業の資金調達、IPO、M&Aなどの業務を担当し、現在では「株式会社J-CAM」にて総合的な金融コンサルタントとして活躍している。