2022.11.10
大手暗号資産(仮想通貨)取引所バイナンス(Binance)は10日、同業大手FTXの買収を撤回すると発表した。買収に向けた基本合意からわずか1日での決定となった。
バイナンスは9日にFTXと結んだ基本合意書に法的拘束力はなく、いつでも撤回できる権利を行使できるとしていた。買収に向け正式契約するまでに一定期間を要するとしていたが、一夜にして白紙に戻った格好だ。
バイナンスはTwitterで、「企業のデューデリジェンスの結果、顧客資金の誤った取り扱いが発覚したことや、米国政府機関による調査の疑いに関するニュース報道などを考慮した結果、買収の可能性を追求しないことを決定した」と述べた。さらに、バイナンスは「流動性を提供して、FTXの顧客をサポートできるよう望んでいたが、もはや事態は我々の管理、支援能力を超えている」と続け、FTXの状況が極めて深刻であることを強調した。
これを踏まえ、「業界の主要企業が失敗するたびに多くの個人投資家が苦しむ。ここ数年、暗号資産のエコシステムが回復する力を増しているのを見てきた。顧客の資金を悪用する企業はいずれ自由市場によって取り除かれていくだろう」と付け加えた。
なおBloombergによると、米規制当局はFTXが顧客資金を適切に取り扱っているか調査を開始したようだ。
さらにサム氏は9日、「FTXは緊急の資金調達を必要としており、この状況が続けば破産申請しなければなるだろう」と投資家達に語ったとしている。関係者によれば、バイナンスがFTX買収の撤回を発表する前に、サム氏は「最大80億ドル(約1兆1,700億円)の資金不足に直面している」と投資家達に伝えたという。
また、バイナンスが買収を撤回した今、FTXはエクイティファイナンスかデットファイナンス、あるいは2つを組み合わせる形での資金調達を試みているようだ。
今回の買収が撤回されたことにより、暗号資産市場はさらなる混乱に陥った。ビットコイン(BTC)は続落し、一時1万6000ドル(約233万円)を下回った。記事執筆時点でも1万6000ドル近辺を推移している。
また、アルトコインも大幅に下落しており、中でもFTXの独自暗号資産であるFTXトークン(FTX)は前日比約60%マイナスの2.4ドル(約350円)ほどまで暴落した。
急成長を遂げ世界的な暗号資産取引所となったFTXは、今まさに危機的状況となっている。今回の一件を通じて、サム氏の財産260億ドル(約3兆8,000億円)のうち94%がすでに消失したという。
バイナンスCEOであるチャンポン・ジャオ(Changpeng Zhao:CZ)氏は声明で、「悲しい日だ。やってみたんだが」と述べた。
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