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日本ORACLE株式会社 独占インタビュー

世界のオラクルが目指しているエンタープライズ・ブロックチェーン

ブロックチェーン業界にいても、どうなっているか分からないのがエンタープライズ・ブロックチェーンの世界。
エンタープライズ、つまり企業向けのクラウドサービスやITソリューションの提供を行っている日本オラクルに、エンタープライズ・ブロックチェーンの世界を聞いてみた。

2019年11月21日(木)発売の月刊仮想通貨1月号Vol.22より

 オラクルは既にOracle Blockchain Platform Cloud(オラクル・ブロックチェーン・プラットフォーム・クラウド)というエンタープライズ・ブロックチェーンのサービスを、2018年7月から日本国内で提供を始めており、これにより企業同士が独自のブロックチェーンネットワークを構築、そしてオラクルのクラウド上にある他のサービスやアプリケーションなどとの統合を可能にしています。
 今回お話を聞かせていただいたのは、日本オラクル株式会社クラウド事業戦略統括の本部長、佐藤裕之氏と、ブロックチェーンのビジネスディベロップメントを担当しているシニアマネジャーの大橋雅人氏。貴重なお時間をいただきエンタープライズ・ブロックチェーンの世界の話を深く聞くことが出来ました。

─日本だけに限らず、オラクルとしてブロックチェーンという領域にどのように関わっているのかを教えていただけますか?

大橋「オラクルとしては、仮想通貨や金融といったユースケースのみならず、様々なユースケースに活用できる、ブロックチェーン・クラウドプラットフォーム、所謂Blockchain as a Service(BaaS)というサービスをご提供させていただいています。すでに世界で150以上のお客様に利用されており、ユースケースも従来の金融業界における国際送金やKYCのみならず、様々なユースケースに広がりを見せています。最近では、国際貿易業務、米国の紛争鉱物法に対応するためのタンタルのトレーサビリティー対応への活用や、電気自動車のバッテリーに使われるコバルトのリサイクルトレーサビリティー、グループ会社間での決済や受発注業務に使われたりしています」

佐藤「企業のビジネスインフラとして、情報をよりセキュアに管理しつつ、企業間で迅速にデータ連携する領域へのブロックチェーン活用が非常に期待されているというのが、オラクルのグローバルの傾向だと思います」

大橋「エンタープライズのユースケースは突拍子もない斬新なアイデアは、実は最近それほど多くなく、適切な適用領域が見え始めてきていると感じています。逆に何が面白いのかというと、あの企業とあの企業が共創のために手を組んでいるといったビジネス面の話が、面白く感じています」

 エンタープライズの世界では、ブロックチェーンの適用領域、ユースケースが既に出来上がり始めているようです。これからは奇抜なブロックチェーンのユースケースでアイデアを練るよりも、どのようなビジネス上の問題を解決するか、そしてブロックチェーン上でどのような企業がコンソーシアムを組んでいるのかが焦点のようです。ここに今まで想像できなかった企業同士の組み合わせが出てきたり、企業だけではなく、政府や省庁などが企業とブロックチェーンで繋り、データを共有したら非常に面白いものになりそうです。

─ブロックチェーンで日本オラクル独自のイニシアティブなどはあるのでしょうか?

大橋「グローバルでは、Retail Blockchain Consortiumという小売業界でのコンソーシアムを様々な企業と一緒に実施していますし、日本でもいくつかそのようなイニシアティブ活動を始めつつあります。一方で、日本での課題の一つとして、エンタープライズ・ブロックチェーンを普及する技術者不足を感じています。従来の基幹システムやデータベースに携わっていたエンジニアにとって、ブロックチェーンはよくわからないがゆえにハードルが高い。そのハードルを下げることを目的に、〝Blockchain GIG〟という、エンタープライズ・ブロックチェーンに特化した技術的なミートアップを開催し、コミュニティ活動を通じて技術的な普及にも取り組んでいます」

 やはりブロックチェーン以外の既存のエンタープライズ技術を扱っていた技術者には、ブロックチェーンはとっつきにくい技術のよう。知らないから心理的な抵抗感があるというのは、しょうがないといえばしょうがない。
どの様な人でも新しいものをゼロから勉強することは抵抗感を感じるものです。しかし、エンタープライズの世界は奇抜な考えよりも、経験と業務知識がものをいう世界だと思いますので、今までの経験とブロックチェーンという
新しい技術に対する知識を身につけることが出来れば、技術者としてさらなる可能性を広げられそうです。

─ブロックチェーンは、沢山のプレイヤーをつないで企業間業務の無駄を省くというイメージがありますが、伸びていく分野はあるのでしょうか?

大橋「個人的にはデータ共有基盤だと思います。他企業とデータを共有することによって、共創が生まれ、どのような新たなビジネス価値が生まれるのかという観点が面白いと思っています。もう1つは必ずしもビジネスじゃなくて、社会的な意義や社会的課題、SDGs(持続可能な開発目標)に企業同士で連携して何が出来るのか、且つビジネス・インセンティブとしてどういうビジネス設計が生まれるのかという側面に個人的な興味があります」

大橋「とはいえ、最初のステップは現状の企業間業務の無駄を省くことからです。Think Big, Start Small とよく言われていますが、最初にまず大きな絵をが描き、賛同者を集め、できることから始めていく。これって今まであった新規事業と同じやり方だと思っています」

佐藤「少し前は、やれハイパーレッジャーだ、やれイーサリアムだってベーシックなところでしか話がされていなかったのですが、じゃあビジネスのこういう領域や課題に適用しようというケースが徐々に明確になってきて、お客様の認識も醸成されてきた。今後の1年2年でビジネスとしてより一層期待値が高い領域ではありますね」

 これを聞いて、データ共有基盤としてのブロックチェーンを使うことで共創が生まれ、新たな価値を創造する可能性の高さを実感しました。ブロックチェーンはビジネス価値のみならず、SDGsの観点での価値も生み出し、利益以外の価値を企業が社会に対して与えていくことも可能になるでしょう。そうなった時、企業はブロックチェーンを取り入れる、あるいはそれら業界や業種をまたいだコンソーシアムの中に入らないと、ビジネスの優位性を確保できなくなるかもしれません。企業はより、共創でのビジネス優位性確立と同時に、独自領域でのビジネス優位性確立を両立していかないと死活問題になるでしょう。持ち株会社などは、企業の価値を高めるためにブロックチェーンを利用して、子会社の連携を高め、さらなるビジネスの優位性を作れます。逆に共有されていないデータの価値が高まる可能性もありますし、それら両方のデータを組み合わせ、どんどんAIなどテクノロジーを使って有効活用していかないと死活問題になるでしょう。
 今回のインタビューで、ブロックチェーンは企業の世界では当たり前になりつつあり、インタビュー中に大橋氏が言った一言が印象的でした。「段々表に出ないところでブロックチェーンが使われています。企業がビジネスにデータベースを活用してもプレスリリースを出さないと同じです」既にエンタープライズの世界では、ブロックチェーンは当たり前になり始めています。