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日本IBM株式会社 独占インタビュー 

IBM ブロックチェーン×ビジネス実用化の現状と未来

世界最大級のグローバルITカンパニーであるIBMはブロックチェーンのビジネスへの適用を早くから推し進めてきた。
そんなIBMの日本法人にして、日本を代表するSI (ITシステム戦略の立案、設計、開発、運用といった広範な事業)企業である日本IBM社でブロックチェーン事業に携わる3名に、独占インタビューを実施!

2019年10月21日(月)発売の月刊仮想通貨12月号Vol.21より

IBMは、ブロックチェーン技術が現在ほど注目を浴びる以前の2015年からブロックチェーン技術の研究開発、そしてビジネスへの適用に取り組んできた。そして現在では、Hyperledger Fabric を企業向けに強化した独自のブロックチェーンプラットフォーム「IBM Blockchain Platform」をはじめ、国際貿易、国際決済、食のトレーサビリティといった多くの分野でブロックチェーンを活用したサービスを生み出している。

─御三方のブロックチェーン事業における職務を教えて下さい。

高田「私はブロックチェーン事業全体の責任者にあたります。ブロックチェーンソリューションのマーケティング、お客様への提案、さらにIBMブロックチェーンソリューションの訴求やコンソーシアム(複数の企業からなる共同組織)の立ち上げや運営など、技術よりも営業側に近い立場といえます」

中鹿「私はブロックチェーンに限らずAI、IoTといった最新のテクノロジーを使って、あらたなシステムを必要とするユーザーと一緒にサービスを作り上げていくポジションです。ビジネスにおいて必要となるシステムのアイディアを、具体的に実現化するためのコンサルティング、開発手法の検証やリソース管理などを担い、より早くユーザーにとって最適なユースケースを作り上げています」

高木「実際に稼働するサービスの責任者にあたります。本番実装をする開発
側の責任者です」

─ブロックチェーンソリューションの実現化に必要不可欠なポジションをそれぞれ担ってらっしゃるということですね。IBMは比較的早い段階からブロックチェーンの実用化に取り組んでいる企業ですが、ここ数年でビジネスへのブロックチェーンの適用はどのように進んでいますか?

高田「初期のころは、やはり金融分野でブロックチェーンを活用するというお話がよくありました。そこからブロックチェーンの活用が広まっていき、最近では流通業界や製薬業界、食のトレーサビリティ(情報の追跡しやすさ)といったさまざまな分野でブロックチェーンを実用化しようという動きが進んでいます」

─ブロックチェーンはビジネスにおいてどのような使われ方をするのでしょうか?

中鹿「ブロックチェーンには透明性や信頼性などのさまざまな特徴があり、
使われ方もさまざまです。なかでもビジネスとの親和性が高い面をひとつ挙げるとすれば、トレーサビリティでしょうか。『農産物を生産し、それを輸送して、小売店が消費者に販売する』といったように、ステークホルダーが多く、全体の流れをひとつの仕組みで管理することによるメリットが大きい分野ではブロックチェーンの特徴がうまく発揮されます。もちろんそれだけではなく、今では多くのユースケースが出来上がっています」

高田「ビットコインなどのように誰もがネットワークに参加できるブロックチェーンはパブリック型と呼ばれますが、私達が取り組んでいるブロックチェーンはビジネス向けのコンソーシアム型と呼ばれるブロックチェーンです。言い換えれば、不特定多数に向けてサービスを展開するのではなく、多くの企業やステークホルダーが使うためのブロックチェーンですね。多くの関係者が公平にデータを利用・管理して、同じシステムを活用することでビジネス全体の流れを効率化するためのものです。たとえば国際貿易プラットフォームの「TRADELENS」は、荷主・輸送・海運・税関などの多くの関係者がいる分野でブロックチェーンを導入して、ビジネス全体を効率化するサービスです。多くの関係者がいるので、技
術開発をするだけではなく、実際にビジネスにおいてどう役立つのか、既存の仕組みの課題をどう解決するのかといった全体最適化の視点が必要になります」

─実際にいまIBMのブロックチェーンを使っている企業やプロジェクトの数はどの程度ですか?

高木「実際に稼働しているものだけでも100社、実証実験を含めれば500社以上になります。具体的には国際貿易、国際決済、フードトラスト(トレーサビリティによって食の信頼性を担保する仕組み)、さらにダイヤモンドのトレーサビリティに関するサービスなど、実用例は多岐にわたります。どの分野においても、参加するすべての関係者がブロックチェーンを活用したサービスによって公平に利益を得られるようにすることが重要です」

─すでにブロックチェーンの実用化は進んでいるのですね。今後、ブロックチェーンはどのような分野で活用されるのでしょうか?

中鹿「先に挙げた分野以外では不動産、医療製薬業界、電力、証券……『価値
があるもの』を取引しているさまざまな分野で使われていくはずです。個人の情報やアイデンティティといった、『無形で価値があるもの』をブロックチェーンに記録してそれを保証するという活用方法も考えられます」

─お話を聞いているだけで期待感が湧き上がってきます。最後にブロックチェーンとビジネスの融合について今後の抱負を聞かせてください。

高木「ブロックチェーン技術を通じて現状を打破していき、国や業界の垣根を超える巨大なネットワークを作る仕事はとても難しいですが、チャレンジングで日々楽しさを感じています」