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DMM Bitcoin 田口仁氏 独占インタビュー エンタメからブロックチェーンのユースケースを構成する。

信用不安で求められる実社会でのユースケースと信頼性

DMM Bitcoinがジパングコイン(ZPG)の取り扱いを決めた理由と、そこに至るまでの過程で皆さんの間でどのようなやり取りがあったのかお訊かせください。

田口仁氏(以下、田口):暗号資産交換業界で競争力を持って特に個人向けのサービスを展開していくという点では、他社で取り扱いがない銘柄に対応することがすごく重要な鍵になると捉えています。その中で、DMM Bitcoinに独自性を持たせるにはどうしたらいいだろうかと考えていた時に、20年来の知り合いであるデジタルアセットマーケッツの西本さんから、ゴールド(金)の価値に裏付けられた新しい暗号資産を作るという話をうかがいました。

DMMグループでは、当社の兄弟会社であるDMM.com証券においてコモディティ商品に対する投資サービスの取り扱いをしているところ、暗号資産交換業のカテゴリーでも同じような投資手段ができるといいなという思いを私自身抱いていました。それに加えて、日本では暗号資産の資産領域から金に投資できる手段がなかったので、他の暗号資産交換業者が取り扱っていない銘柄に対応することで競争力を強化する、という考えともマッチし、取り扱いに至りました。

従来の暗号資産では裏付けとなる資産価値や価値形成の透明性が十分に図られていないという指摘もあるところ、ジパングコインは、現物の金取引に対して強いプレゼンスを有しながら事業展開をなされている三井物産のグループ企業が全面的に参画し、価値の正当性を裏付けているという点は、大きな特徴と差別化要素を持っていると感じます。そのような信頼性のもと、将来的にはさまざまな形で代物弁済のユーティリティとしての役割が拡大する可能性を有しているのではないかという点も、取り扱いの決め手となりました。ジパングコインの有しているリアルな世界での価値に裏付けられた特徴は、DMM Bitcoinの利用ユーザー層を拡大することに寄与するという考えもありました。

DMM Bitcoin社とデジタルアセットマーケッツ社だからこそ生み出せる強みは何ですか?

田口:デジタルアセットマーケッツさんは他の暗号資産交換業者とは明確に事業コンセプトが異なることから、相互補完できる領域が大きいことが強みだと感じています。今後、金以外のさまざまなコモディティに裏付けされ、価格に連動した新たな暗号資産が開発されていくと、暗号資産の口座の中で証券口座に近いようなさまざまな資産クラスに対する投資の取引ができる時代が来ると思います。多様な資産クラスに対する投資機会を、DMM Bitcoinのユーザーに提供することを、しっかりと取り組んでいきたいと思います。

また、当社の次年度に向けた事業コンセプトとして、暗号資産自体をさまざまな決済用途に利用できる場面を増やしていきたいと考えています。DMMグループのサービスや「WEB3」事業などで、当社が扱っている現物の暗号資産を使って利用者が決済できるようにサービスを拡充していくことを想定しています。決済用途の利活用という点では、値動きが激しく、また、現実世界の資産の裏付けなどのないビットコインのような暗号資産などよりも、ジパングコインのような比較的ボラティリティの低く、価格形成が現実世界の資産に裏付けられているような暗号資産の方が利活用しやすいという側面があるといわれています。

私個人としては今後、電力や石油、ガスなどといったエネルギーに連動したトークンが出てきて、それが利用できるようになるのもいいなと思いますね。電力や石油、ガスなどを横断的にカバーできるという意味では、メガジュールやメガワットアワーというような、エネルギー量の単位自体が暗号資産の通貨名称になっているようなトークンが生成され、実際に多様なエネルギーの決済に対応できるとなると、法定通貨が担っている役割の一端を担うことができる存在になれそうな気がします。

西本一也氏(以下、西本):私自身もエネルギーに連動したトークンがあったらいいと思いますし、最終的に行き着くところはそこだと個人的に考えています。将来的には電力の小口決済もさらに広がりを見せていくことが想定される中で、エネルギー連動型トークンが取引されたり、決済手段として使われたり、というユースケースがあってもいいと思います。

このような画期的なアイデアを持っている田口さん率いるDMM Bitcoinさんと、私たちデジタルアセットマーケッツが共通のものを通じて融合していくような取り組みができれば、一つの形ができると思います。

—デジタルコモディティの認知・利用者拡大に必要であると考えていることは何ですか?

田口:5年前くらいから現在にかけて、法律や税制の整備・ビットコインの半減期などさまざまなイベントがありました。価格の上下も一巡したような感じもしています。これからは実社会において、暗号資産自体が決済手段として多様に使われるものに現実的になってきたという認知であったり、強烈な重力を持ったコンテンツなどで暗号資産が利活用されているというようなユースケースが出てくることだったりが必要だと思います。目に見えない期待先行で市場が成長する時代は、過去の5年間でレガシーになったという危機感を、強く感じています。

DMMグループとしては、動画やゲームなどのエンターテイメントコンテンツを提供するサービスが、最も強みのある事業領域ですので、来年はブロックチェーンゲームやNFTをはじめとする「WEB3」事業やメタバース空間の創出に、グループとして本格的に力を入れていきます。ブロックチェーンゲームという領域においては、NFTが販売されたり、アイテム課金などに、独自性のあるトークンの創出を含め、ブロックチェーン技術が利活用されていくことになり、多様な暗号資産を用いた決済、暗号資産同士の交換、ゲーム内で流通する独自のトークンの付与や交換の取り扱いなどを、当社として積極的に取り扱うようになるかもしれません。こういった形で、一般消費者を惹きつける重力を持ったエンターテイメントコンテンツを中心に、具体的なブロックチェーンのユースケースを構成できることが、「なんでもやってるDMM」のグループの強みであると思っています。その過程で、暗号資産交換業者の役割も少しずつ変わっていくかもしれませんね。

—認知拡大をしていく上で、デジタルコモディティに限定した場合、どのような取り組みをする必要があると思いますか?

西本:Web3とは何かといわれていますが、ブロックチェーン技術をしっかりと理解することは難しくて、デジタルとコピーできるとかできないとか、そういう単純な話ではありません。

だからこそ、”百聞は一見にしかず”といいますが、商品の追加やさまざまなユースケースを提供し、実際に利用する際の流れを理解してもらうことが重要であると思っています。

「ご利用いただく方々が安心できるモノを」と考えた時に、無形のモノよりも有形のモノ。エネルギーやゴールド、企業のクレジットなど、頼れるものがある方が普及すると思っています。暗号資産のトークンの可能性はこれからですから、わたしたちは形にするために頑張りたいと思っています。

田口:ラインナップが増えるというのは、要件として出てくると思います。ただ認知拡大は、1つの出来事でガラッと変わる可能性もあります。例えば、マイナポイントとは別に、ジパングコインも選べますというようなことが実現した場合、瞬時に認知されることもあるように思います。国をあげてというのは難しいかもしれませんが、流通に根ざした大きな事業者の方々と、例えば、大きな消費エコシステムを構成しているメガコンビニエンスチェーンにおいて、来店時や商品購入時にゴールドの破片が貰えるようなキャンペーンを行うことになるならば一気に認知が広まる可能性はありますよね。

商品やサービスのラインナップがしっかりした上で、空中戦的なキャンペーンで一気に知れ渡るということは十分にありえます。

—デジタルをコモディティに限定した際に、デジタルコモディティの流動性を高めるための政策でどのようなものが考えられると思いますか。

田口:まず、本当に多くの方が使って、持つようなモノになった場合に、原資産側の流動性枯渇が出る可能性が少なからずあると思います。

現在では、ゴールドの延べ棒はほとんどの方が持っていないし、アクセスする方法もない。しかし、デジタルコモディティにおいては、小口化ができてしまいます。1グラムという単位から、より細分化されて持つ人が相当数になった場合に、デジタルコモディティの仕組みがきっかけとなり、現物の価格を押し上げる可能性が出ると思っています。

そうすると、通貨としての活用をする時に、少しやりづらい面も出てきます。ですから、デジタルコモディティのラインナップの調整が必要だと思います。

加藤次男氏(以下、加藤):将来的な課題としてたしかにご指摘の通りだと思います。一方で、その課題を真剣に考える必要があるような状況になれば、事業としては大成功だと思いますので、今の段階ではまずそこに持っていくということを優先して取り組んでいます。そして、田口さんがおっしゃったように、ゴールドだけではなくてさまざまな商品の選択肢を提供することを前提として分散していきたいと思っています。

–––皆様の中で透明性がどの程度必要なものと認識し、どのレベルまで実現可能と考えているか教えてください。

田口:このようなことをいってしまっては元も子もないですが、本音をいってしまえば、二律背反することを市場は求めてしまっているように思います。もともと、通貨危機的なことを背景に、通貨のいいところ取りをしたようなモノが、ビットコインをはじめとした暗号資産で実現できる可能性があるとされて生み出されたとされています。しかし、暗号資産業界の信用不安や事故が起こると、その事故や信用不安の処理方法の見解を法に求める。手足をしばる法規制を望まないが、自分に損失が出たことには厳格な罰を与えてほしい、ということが大きな矛盾を孕んでいることに、薄々気付いていながら、KYにならないように知らないふりをしているような雰囲気があるのは、すごく気持ち悪い気がします。

法的な根拠を有するライセンスを持って、合法的に取引の場を提供している立場からいうと、暗号資産交換業は、まさに金融業であり、投資家の財産をお預かりして金融サービスを通じて取引の場を提供する立場です。その意味では、日本においては適正に法律が整備され、証券や銀行と同じような法律の体系・枠組みの中で、暗号資産についても整合性のある形で法令諸制度が整備されている状況があります。日本に限っていえば、価格面を除いて基本的に海外で起こったような信用不安等に影響を受けることはありません。しかし一方で、日本は法令諸制度が厳しすぎて、暗号資産やブロックチェーンを利活用したベンチャー企業が海外に流出するという批判的な見解をする方も多く存在します。

極論ではありますが、信用不安や透明性の確保の課題を絶対的に解決するというような方向に行けば行くほど、法令諸制度は厳しいものとなり、基本的には証券や銀行との違いもなくなっていくことになります。その場合、最終的に決済や弁済の手段として最も選択される可能性が高い「モノ」は、現実資産の価値に裏付けられた「モノ」になる可能性があり、ゴールドというには非常に有力な選択肢となる可能性が高いということになります。

今後、各国でライセンスができて、監査法人による監査を全て受けるという、日本と同じようなルールが、主要各国で整備されることになると思います。自ずと、暗号資産の投機性がなくなり、取引妙味・投機妙味が現在よりも低下していく可能性がありますが、一方で、ユーティリティ性があって、本質的に利活用できる場面があるモノに価値が見出されるようになると思います。

DMM Bitcoinは取引の場を提供させていただく事業が主力でありますが、グループのブランドを使って、グループ総力でユーティリティ性を持ったモノと、それを使う場を作っていくということ、このことが2023年からの3年間の主力になると考えています。

西本:ジパングコインはそのような透明性を実現していくために生まれたのです。そのような課題を解決するための技術を入れています。

三井物産デジタルコモディティーズ社の中で作られているシステムが特殊で、デジタルアセットマーケッツが持っているシステムも特殊。田口さんとも通ずるものがありますね。何か新しいモノを造るには、変わり者同士が良いのかもしれません。

株式会社DMM Bitcoin 代表取締役
田口 仁

埼玉県越谷市出身。早稲田大学政治経済学部を1994年に卒業し、三菱商事株式会社に入社。
その後は、ライブドア、DeNA、EMCOMなどでさまざまな事業立ち上げや運用に携わり、現在は「DMM Bitcoin」の代表取締役社長。

 

デジタルアセットマーケッツ 代表取締役
インタートレード 代表取締役社長
西本一也

日本勧業角丸証券(現みずほ証券)に入社、1999年インタートレード設立。同社は2004年東証マザーズ上場、2015年同市場第二部に変更、2022年同スタンダード市場に移行。2018年インタートレードコイン(現デジタルアセットマーケッツ) を設立。証券会社向けフロントシステムを自社開発するシステム開発のエキスパート、ジパングコインプロジェクトの責任者。

 

デジタルアセットマーケッツ 取締役
三井物産デジタルコモディティーズ 代表取締役社長
三井物産 コーポレートディベロップメント本部 理事
加藤次男

三井物産に入社、米国Mitsui Bussan Commodities(USA) Inc.CEO、英国Mitsui Bussan Commodities Ltd COO、本店商品市場部長を経て、現職。グローバルなコモディティトレーディングに精通した、ジパングコインプロジェクトの責任者。