2022.08.30
金融庁が8月末にまとめる2022事務年度における金融行政方針の全容が判明した。29日、日本経済新聞が報じた。
これまで、金融教育等は民間企業が行ってきたが、今後は「国全体として体制を検討する」と明記し、国家戦略として推進するように官邸に設置された「新しい資本主義実現会議」に提言を行うという。
今回の金融行政方針は、岸田文雄首相が打ち出す「新しい資本主義」に沿う形となった初めての方針となる。同方針では、「成長が国民に還元される金融システムを構築する」ことを念頭に置き、金融庁の政策も国民還元型の目線で再構成されるという。
金融庁は、昨今の情勢等を踏まえ、金融リテラシーの向上が国民の資産形成に欠かせないと判断した。
金融教育は現在、中学・高校の授業に盛り込まれているものの、大学以上、社会人向けの教育は民間金融機関が主に行っているのが実情だ。こうした背景をもとに、官民が連携して推進する新たな体制を作り、全世代を通じた金融教育を提供する制度について議論を行うという。金融審議会でも議論を始め「中立的立場」で金融教育を推進する体制も検討するようだ。
また、金融機関サイドの販売勧誘を巡る環境整備にも乗り出す。
2017年から顧客ニーズに沿った販売姿勢を促すため「顧客本位の業務運営に関する原則」と呼ばれるプリンシプルを策定しているが、顧客から苦情が相次ぐ金融商品が後を絶たない。そのため、販売環境を巡るルールとプリンシプルの見直しが必要と判断したという。
商品開発段階のガバナンスを強化し、原則を改定、ミスマッチな高リスク商品を販売しにくい環境を整備する。また、顧客にふさわしい商品を販売するルールについても、コンサルティングやアドバイスを通じ、健全なビジネスに見直す方針だ。
金融庁に関しては先日、2023年度税制改正要望に暗号資産(仮想通貨)課税の見直しについて盛り込む方針を固めていることがわかった。暗号資産を発行するスタートアップ企業を対象に、自社で保有する暗号資産への法人税の課税方法を見直すという。
岸田首相は過去に「Web3.0は日本の経済成長につながる可能性がある」と発言しており、今後、金融教育の中に暗号資産領域が盛り込まれることも考えられる。
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