2022.06.06
法務省が、犯罪グループなどが不正に取得した暗号資産(仮想通貨)を没収するために、組織犯罪処罰法を改正する方針を固めたことがわかった。4日、読売新聞が報じた。
組織犯罪処罰法は、暴力団やテロ組織等による組織犯罪やマネーロンダリングを取り締まるもので、犯罪収益が土地や建物などの「不動産」のほか、現金および貴金属といった「動産」、そして金銭の引き渡しを目的とする「金銭債権」である場合、没収が可能であると規定されている。
一方、暗号資産は発行主体が明確でない場合も多く、法定通貨のように国および中央銀行が関わってくるものでもないため、組織犯罪処罰法で没収可能ないずれの資産にも当たらないという解釈がなされている。そのため、ハッキング等の犯罪行為により不正取得された暗号資産を見つけたとしても、必ずしも没収できるわけではない状況となっている。
こうした状況を踏まえ、検察当局は不正取得された暗号資産の没収が確実に行えるよう、必要な立法措置を講じるべきだと指摘したという。
法務省は今年度中にも法制審議会において議論を進め、暗号資産を没収対象として明確にした法改正に向け、具体的な内容を詰めていく。併せて、没収の実効性を高める目的で秘密鍵をはじめとした暗号資産における仕組みへの対処方法も検討する予定だという。
近頃、日本では暗号資産に関する規制の策定および見直しが急速に進められつつある。
先日には、ステーブルコインの発行主体を限定し登録制を導入することを含めた改正資金決済法が可決・成立している。
また兼ねてより問題視されていた暗号資産税制についても、雑所得ではなく申告分離課税の適用が国民民主党の玉木雄一郎代表により提案され、岸田文雄首相も前向きな姿勢を見せている。
ロシア・ウクライナ情勢を巡り、マネーロンダリング対策の強化を迫られていることに加え、与党・自民党内においてWeb3.0やNFT(非代替性トークン)、メタバースなどへ注視すべきとの声が挙がっていることも国内の暗号資産に関する議論を活発化させているものと言える。
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