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SAPジャパン株式会社 独占インタビュー

企業向けアプリケーションソフトウェアのマーケットリーダーはブロックチェーンをどう使うのか?

昨今、世界中の企業でブロックチェーン技術の活用が進められている。
企業向けアプリケーションソフトウェアを中心としたさまざまなサービスを展開しているSAP社も、ブロックチェーンの活用をすでに開始しているという。
SAPはブロックチェーン技術をどのように捉え、活用していくのだろうか。

2020年1月21日(火)発売の月刊仮想通貨3月号Vol.24より

SAP社は1072年にドイツで創業し、ドイツの証券市場における時価総額ではナンバーワンを誇る、世界最大のビジネスアプリケーションソリューションのベンダーである。主な製品には基幹システムパッケージ(企業の経営資源を有効活用するために統合的に管理するシステム)などに代表されるビジネスアプリケーション群が挙げられる。会計、物流、販売、人事など、ビジネスにおいて必要となる多種多様なデジタルサービスを提供している。

 また、近年はクラウドサービス(ネットワーク経由でサービスを受ける仕組み)も幅広く展開しており、ブロックチェーンや AIなどの最新テクノロジーの活用にも積極的に取り組んでいることで知られている。

─SAP社は主に企業向けのサービスを提供しているとのことですが、どのようなサービスがあるのでしょうか?

前園氏(以下、前園):弊社は、企業活動のために必要となるあらゆるサービスを提供しています。簡単にいえば〝人・モノ・金〟を管理して、企業が正しく成長していくために必要となるサービスを幅広く網羅している点が特徴です。人材管理や物流におけるモノの管理に関わるアプリケーションだけではなく、まさにブロックチェーンなどを活用したインフラサービスまで、企業活動において必要となるピースを隙間なく提供していこうと取り組んでいます。

河口氏(以下、河口):弊社の目標は創業当時から一貫していまして、全てはお客様の〝リアルタイム経営〟を実現するために、あらゆるシステムを開発しています。基幹系と呼ばれる社内の〝人・モノ・金〟といった経営資源の情報、商品の物流や販売状況といった変動しやすい情報、さらに社内情報だけに留まらず協業他社や関係者も含めた〝人・モノ・金〟の情報。これらのような、経営に関わるあらゆる情報をリアルタイムで収集・分析するためのシステムを作り上げることが目標なのです。この目標を達成する上で、ブロックチェーン技術は重要になると考えております。

─なぜブロックチェーン技術が〝リアルタイム経営〟に活用できるのでしょか?

河口:リアルタイム経営の第一段階として、まずは〝人・モノ・金〟といった企業にとって不可欠な要素の活用があります。これらの情報を業務横断的に活用するために、ERP(Enterprise Resources Planningの略。企業経営の基本となる人・モノ・金・情報といった要素を適切に管理分配すること)パッケージやRDBMS(情報が保管されるデータベース)が活用されてきました。
このような基幹系のデータを活用するだけではなく、現在では物流情報などのように常に更新されていくデータを即時収集・分析するためのシステムも開発されています。ERPパッケージに加えてAIなどを活用した分析アプリケーション、そして弊社のSAP HANAというシステムによってそれが可能になっています。

 さらに、今後のリアルタイム経営において必要となるのが、エコシステム全体のリアルタイム化です。社内だけに留まらず、協業他社を含めたエコシステム全体で情報をリアルタイムに活用するうえで、ブロックチェーンが役に立ちます。ブロックチェーンを活用することで情報の信頼性が担保されるので、社外も含め
たエコシステム全体で安全に情報を集約・分析できるようになるからです。我々はすでに豊富なアプリケーションを持っていますので、それらとブロックチェーンを組み合わせることで、次世代のリアルタイム経営が実現可能になります。

前園:サプライチェーンのような分野は、商品の生産から販売まで、多くの企業が関わっています。それらの企業同士がリアルタイムで情報を送り合い、活用していく上でブロックチェーンは非常に有効であると考えられます。さらに国内だけではなくグローバルなサプライチェーンであれば、ブロックチェーンを用いることでこれまでよりも情報にアクセスしやすくなるのは間違いないでしょう。

─SAP社ではすでにブロックチェーンを有用な技術であると認識して活用し始めているのですね。

河口:ブロックチェーンのクラウドサービスである「SAP Cloud Platform Blockchain」や、外部のブロックチェーンネットワークを、インメモリーデータプラットフォームであるSAP HANAにつなげる「SAP HANABlockchainサービス」などをすでに開発しています。

 自社で提供しているサービスだけではなく、多くのパートナー企業と共に、エコシステム全体のコミュニティ形成なども行っています。また、医薬品のトレーサビリティや、決済、農業、サプライチェーンなど、さまざまな分野でブロックチェーンを活用していまして、ビジネスプロセスの効率化を目指した取り組みも始まっています。

前園:たとえば医薬品のトレーサビリティという点では、その医薬品を誰が作り、どのような企業によって運ばれてどこで販売されたのか、原材料は適切なものなのか、といった情報を追跡することで、消費者が安全に医薬品を入手できるようになりますし、企業も規制やコンプライアンスに則ったビジネスが可能になります。

─ブロックチェーンは今後、多くのビジネスにおいて活用されていくのでしょうか?

河口:SAP社としては、ビジネスのリアルタイム化を実現していくうえでブロックチェーンは有効であると考えています。今は多くのブロックチェーンが乱立しているので、数十年後にどのブロックチェーンが生き残るか、という点については予測が難しいのですが、ビジネスをはじめとした多くのシーンで社会をより良くするためにブロックチェーンが使われることは間違いないでしょう。

前園:時代が刻々と変化していく中で、ブロックチェーンが必要になるビジネスも増えていくはずです。マネーロンダリング対策、モノのトレーサビリティ、資源の有効活用など、時代が求めているものに対応するためにブロックチェーンを活用するという流れは今後も続いていくと考えています。