2022.10.24
国内決済大手JCBは24日、フランスのセキュリティ企業IDEMIAおよびマレーシアのフィンテック企業Soft Space Sdn. Bhd.と提携し、CBDC(中央銀行デジタル通貨)向け決済ソリューションの開発・実証実験プロジェクト「JCBDC」を開始したと発表した。
CBDCについてはすでに世界各国で検討および導入が始まっており、日本においても昨年4月より日本銀行による実証実験が行われている。
JCBは、今後「一般利用型CBDC」が導入される際、既存の決済インフラとの融合や、高齢者をはじめスマートフォンを利用しない層も含めた幅広いユーザーにとってフレンドリーな環境の提供などが課題になると指摘する。これらの課題を解決することで、利用者およびCBDC取扱い店舗の双方にとって利便性の高い決済インフラを提供することが重要だと説明した。
課題解決に向け、JCBはIDEMIA・Soft Spaceとの協業を通じ、既存のクレジットカードの決済インフラをそのままCBDC向けに開放すること、そしてカード形状のCBDC向けユーザーインターフェースを提供することの2点について技術的可能性の検討を進めてきたという。
今回、これらの実現の目処が立ったことから、3社共同で決済ソリューションの開発および実証実験「JCBDC」プロジェクトを行うことになったと述べている。
なお、JCBDCは「Japan CBDC」(日本のCBDC)と「JCB Digital Currency」(JCBによるデジタル通貨向けソリューション)を表した造語だという。
今回のプロジェクトでは、3つの機能からなるソリューションを開発すると説明している。
1つ目は「JCBの提供するタッチ決済インフラの活用」だ。JCBのタッチ決済をそのまま利用可能となるよう取扱い店舗の決済インフラや利用者のインターフェースを構築する。今回の実証実験ではタッチ決済を活用するが、将来的にはQUICPayなどのモバイル決済ソリューションを活用することも検討していくという。
2つ目は「CBDC向けのカード提供」だ。スマートフォンを利用しないユーザーであってもCBDCが利用できるよう、カード形状のCBDC向けインターフェースを提供する。カード形状インターフェースは、JCBの提供するタッチ決済機能を有しており、簡単・便利に利用できる。
そして3つ目は、「疑似的なCBDC取扱環境の構築」。今回はブロックチェーン上にバリュー管理機能を構築するトークン方式を採用し、独自に疑似的なCBDC環境を提供するという。その上で、利用者およびCBDC取扱い店舗がそれぞれの保有するCBDC残高を確認するための照会インターフェースを提供するとしている。
これらの実証実験を通じて、JCBは災害やシステムトラブルが起きた際など、オフライン環境下でのCBDCの利用を模索する。
日本経済新聞によれば、都内の飲食店の協力を得て、JCB社員らが実験に参加するという。
JCBは、2022年中に決済ソリューションを開発し、2023年3月末までの期間に実店舗での実証実験を実施する予定だとしている。実証実験を通じて、技術検証およびに課題の潰しこみ行うという。
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