2022.10.04
3日の米株式市場では、米供給管理協会(ISM)が発表した9月の製造業総合景況指数が市場予想以上に低下し、ここ2年で最低水準となった。受注の指数はここ4ヵ月で3回目の縮小となり、景気低迷へ進んでいることを示した。
このことから、11月1日と2日の両日に行われる米連邦公開市場委員会(FOMC)では利上げのペースが落ち着くとの安心感が株式市場に広がった。
また、英トラス首相が非難されていた減税策における最高税率引き下げ案を撤回する方針が伝わったこともあり、英ポンドが上昇。株式市場にも好材料として受け入れられた。
ダウ平均は3営業日ぶりに大幅反発し、前週末比765.38ドル(2.66%)高の29490.89ドルで終えた。ナスダックは金利低下を支えに前週末比239.82ポイント(2.27%)高の10815.44ポイント、&P500は前週末比92.81ポイント(2.59%)高の3678.43ポイントと、いずれも大幅増で終えている。
米株式市場上昇の影響は暗号資産(仮想通貨)市場にも波及した。ビットコイン(BTC)は1万9000ドル(約274万円)ほどから上昇し、記事執筆時点では2万ドル(約290万円)あたりまで価格を伸ばしている。
また、イーサリアム(ETH)も1200ドル台後半から1350ドル(19万6,000円)ほどまで上昇するなど、暗号資産市場では軒並み多くの銘柄が価格を伸ばしている状況だ。
ビットコインを中心に、10月は暗号資産市場にとって価格が上昇しやすい傾向がある。ビットコインの1ヵ月の騰落率は2019年から去年まで3年連続でプラスだ。2018年はわずか3%ほどのマイナスとなっており、2015年から2017年にかけてもプラスとなっている。
一方で、ここ直近ではスイスの大手金融機関であるクレディ・スイス・グループに対する懸念が広がっている。
昨年の米投資会社アルケゴス関連による巨額損失をはじめ、英金融会社グリーンシルとの共同運営のサプライチェーン・ファイナンス・ファンドの失敗など、クレディ・スイスにとって厳しい局面が相次いでいる。
現在、インフレに伴う金融引き締めが各国で行われ、世界規模のリセッション(景気後退)が懸念される中、一部ではクレディ・スイスの破綻が「リーマンショックの再来」の引き金になるのではないかとの声も挙がっている。
ウルリッヒ・ケルナー(Ulrich Koerner)CEOは先月30日、従業員に対して「今、同行にとっては正念場となっている」と文書で伝えた。従業員および市場の懸念払拭を目的として出された文書であったが、これが混乱を招き3日のクレディ・スイスの株価は一時12%下落した。記事執筆時点では反発し、前日比で4%ほど上昇している。
クレディ・スイスの動向はリスク資産とされる暗号資産市場にも波及する恐れがある。そのため、当面は動向を注視する必要があるだろう。
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