2022.03.15
金融庁と財務省は14日、暗号資産交換業者に対し、ロシアへの経済制裁措置の対応要請を行ったと発表した。
欧米を中心に各国がロシアへの経済制裁措置を行っているなか、暗号資産(仮想通貨)は制裁回避のための抜け道と成り得る可能性があると指摘されている。こうした懸念への対応として、国際的に行われている措置を日本も遵守するため、国内暗号資産取引所に対し、ロシアの経済制裁対象者などへ暗号資産の取引による移転等を行わないように求めた形だ。
今回発表されたのは、「ウクライナをめぐる現下の国際情勢を踏まえた対応について(要請)」という要請文。内容としては、「1,資産凍結などの措置対象者のアドレスには暗号資産の移転を行わないこと」「2,暗号資産移転先が凍結措置の対象者である場合は当局等に報告すること」「3,ロシアに対する暗号資産取引のモニタリングの強化」などの3点を挙げている。
財務省は2020年、外為法の解釈運用通達を改正し、暗号資産もその対象とした。金融庁は国内の暗号資産交換業者に措置要請を行うことで、取り組みを明確にする。
先進7ヵ国(G7=米、英、仏、独、伊、カナダ、日本)は、11日に表明した対ロシア制裁の追加において、暗号資産も対象にすることを発表した。制裁強化の内容としては、暗号資産を含むデジタル資産を用いた制裁逃れを監視し、これを阻止するというもの。
現在、ロシアの制裁対象となっている個人および団体は、要請した時点で44人と10の団体。ベラルーシにおいては、ルカシェンコ大統領を含む、個人19人と15の団体となる。
今回の要請を受け、日本暗号資産取引業協会(JVCEA)は以下のようにコメントした。
「当協会におきましては、暗号資産交換業を営む会員がこの要請において求められている対応に適切かつ円滑に取り組むよう、会員に対する指導その他必要な措置を講じてまいります」
金融庁とJVCEAについては、ロシアに対する制裁対象の対応などに関して協議していることがBloombergなどによって報道されていた。
松野博一官房長官は会見で「財務省と金融庁の要請は暗号資産の交換業の適切かつ確実な遂行を通じて、経済制裁の実効性の確保に資するもの」と説明。
今後については、「引き続きG7など国際社会と緊密に連携し、ロシアとベラルーシに対する経済制裁の実効性の確保に努めたい」と述べた。
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