2022.01.21
米連邦準備制度理事会(FRB)は20日、中央銀行デジタル通貨(CBDC)となるデジタルドル発行に関する初の報告書を公表した。
報告書では「政府と議会の明確な支持がなければ発行計画を進めるつもりはない」と述べ、ドルのデジタル化への是非は示してはいないが、検討に向けた「最初の一歩」と強調した。
報告書によれば、FRBがデジタルドルを発行した場合、安全で便利な金融サービスを提供することができ、国際送金や決済をより早く低コストで行えるようになると有用性を認めた。
一方、他国が利便性の高いCBDCを導入すれば、世界的にドルの利用が減少し、基軸通貨としてドルの地位が低下する可能性もあると指摘。また、銀行預金がCBDCにシフトした場合、銀行の金融仲介機能が低下すること、さらに企業や個人が融資などの金融サービスを受けにくくなる可能性があり、企業や政府の信用力の低下させるリスクや、信用コストを上昇させるリスクもあると、金融システムの安定性に関する課題を挙げた。
この他にも、利子を伴うCBDCの場合、「他の低リスク資産(投資信託、財務省証券、関連する短期金融商品)からの資産流入する可能性」や、金融政策の効率性においては、「長期的にCBDCの増加に対応しなければならないため、バランスシートを拡大させる必要性」など、多方面への影響にも触れた。
また、プライバシー保護の観点からの問題、マネーロンダリングとテロ資金提供問題、セキュリティ問題など対処が必要な問題も報告した。
これらを受けて、FRBは一般公開する討論会などを通じ幅広い意見を求めるとしている。米国内で是非を問う論議を広げていく構えであり、報告書に関する意見を5月20日まで募集するとした。
パウエル議長は声明で「デジタル通貨の検討で、国民や代表者(議員)、幅広い利害関係者との対話を楽しみにしている」と述べている。
今回、意見を募集する項目は以下の通りだ。
この他にも多岐にわたる項目があることから、FRBの本気度が伝わる。
世界的には中国がデジタル人民元の開発を進め、法定通貨のデジタル化を加速させる動きを見せている。デジタルドルの進捗も世界に多大な影響を及ぼす可能性が高いことから、FRBの今後の動向に大きな注目が集まるだろう。
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