2021.06.01
ビットコインの新たなマイニング拠点として、アルゼンチンが世界のマイニング業者から注目を浴びている。5月31日、Bloombergが報じた。
報道によると、すでにアルゼンチンは安価な電力コストに加え、国策による電気代の助成金が南米を中心としたマイニング業者や、個人のマイナーたちに高い収益率をもたらしているという。
アルゼンチンでは、通貨切り下げの繰り返し、デフォルト、年率50%と言われるインフレ、そして今回の新型コロナウイルスで悪化した景気などの経済危機が法定通貨「ペソ」の価値を揺るがしている。
近年、通貨規制により個人が合法的にペソをドルに換金できるのは月に200ドル(約2万2,000円)までと限定されているため、ヘッジ手段として暗号資産(仮想通貨)の需要が高まっていた。
非ペソ資産の価値が高まったことで、アルゼンチンのある取引所ではビットコイン価格が急上昇。今年4月30日の公式レートで約340万ペソ(約390万円)に対し、アルゼンチンの取引所ではプレミアが付き、約590万ペソ(約640万円)の価格を記録した。
また、アルゼンチンの電気代は平均月収の2〜3%程度に過ぎない。そのため、マイニングマシンを購入する国民も増えている。上述のように国策で電力に補助金が出るためマイニングの収益性も非常に高いという。
国際的なマイニング企業も、こうしたアルゼンチンの電力代の安さに着目している。先月、カナダのBitfarms社は南米最大のビットコインマイニング施設を運営するために、アルゼンチンの発電事業社と天然ガス発電電力の供給を受ける契約を結んだと発表した。
これまで電力代の安さからマイニングの拠点となってきた中国と比較しても、アルゼンチンでは半分以下のコストで済むことから、Bitfarms社は契約を結んだ模様だ。
Bitfarms社のGeoffrey Morphy社長は、「私たちは、発電システムが十分にある拠点を探していました。アルゼンチンでは経済活動が低下しており、電力が活用されていません。だからこそ、Win-Winの状況だったのです」と契約の理由を語った。
現地のアナリストはBloombergの取材に対し「エネルギーへのアクセスが容易なアルゼンチンの特定の発電事業者にとって、余剰電力を海外マイニング業社に販売することは理にかなっている。特に、インフレに苦しむアルゼンチン発電事業者が、米ドルやビットコインで支払いを受けるなら尚更のこと」と海外のマイニング事業者が今後もアルゼンチンに進出する見通しを明かした。
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