2020.12.16
中国人民銀行の前総裁である周小川氏が、「デジタル人民元(DCEP)は既存の法定通貨や金融システムを脅かすつもりはない」との見解を示した。14日、South China Morning Postが報じた。
これは13日に行われたShanghai Financial Forumで語られたもので、リアルタイムで為替や支払い情報を処理することができ、クロスボーダー取引に変革をもたらす可能性があると周氏は語った。
その際、周氏は「(デジタル人民元は)すでに広く世界で流通している米ドルやユーロなどの法定通貨の代替通貨を目指しているわけではない。その点は非常に注意すべき点だ」と述べ、各国が懸念する通貨覇権の奪取は考えていないとの考えを協調した。
また、Facebookがローンチを目指す独自暗号資産(仮想通貨)「Diem(旧Libra)」を引き合いに出し、「Libraのように、既存の通貨に取って代わるような野心を持ち合わせていない」と念を押した。
周氏は以前からデジタル人民元について「あくまでも決済能力の向上を図る一環」との姿勢を崩しておらず、世界経済の動きを尊重すべきとの考えを示してきた。その上で、「中国のデジタル人民元に対する考え方は、G7(主要7ヶ国)と焦点が大きく異なる」といった発言をしている。
デジタル人民元に関しては兼ねてよりプライバシー保護や通貨の管理体制といった透明性の部分が懸念されており、各国首脳などからの指摘も相次いでいる状況だ。今年10月には麻生太郎財務相や日銀の黒田東彦総裁なども慎重な姿勢を見せている。
しかし、そのような状況下でもデジタル人民元の開発は着実に進んでいる。
今月11日には実証実験の一環で、抽選に当選した蘇州市民10万人を対象に2000万元(約3億1,800万円)分のデジタル人民元を200元(約3.000円)ずつ配布。同日20時に配布されたにも関わらず、その日のうちに約2万件もの決済が行われたとの報告もあることから、今回の実証実験で早くも一定の効果を確認することができたと言えるだろう。
デジタル人民元に関しては2022年の北京オリンピックでも試験導入が検討されており、今後さらに大規模な実証実験を重ねていくものとみられる。
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