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デジタル人民元の試験運用、171億円相当の取引実績が判明

中国の中央銀行である中国人民銀行が発行するデジタル通貨(CBDC)「デジタル人民元」が、すでに11億元(約171億円)相当の試験的取引に利用されていることがわかった。5日、中国現地メディアのSouth China Morning Postが報じた

これは中国の中央銀行副総裁である Fan Yi Fei氏が、国際銀行間通信協会(SWIFT)主催のバーチャル会議「Sibos2020」において明らかにしたもの。

同氏はCBDCの進捗状況を報告していた際に、試験的なプログラムの一部として、「11億元以上のトランザクション処理がすでに実行されている」と述べたという。

また昨年の時点で、すでに313万件以上の取引を中国の深センおよび雄安新区などの主要都市で処理している他、今年8月下旬には請求書の支払いから政府サービスまで6,700を超えるユースケースが実施されたとのことだ。

Fan氏は、「中央銀行はCBDCを将来の重要な金融インフラであると考えている」と語り、開発が順調であることを強調した。

今まで中国のデジタル人民元に関する情報は間接的なものが多かったが、関係者が詳細を具体的に言及するのはこれが初めてとなる。また、2022年に中国で開催予定の冬季オリンピックで、デジタル人民元を試験導入する見込みであることも初めて公に発表された。

さらに、中国政府が新型コロナウイルス・Covid-19の治療などに携わる約5,000人の労働者に報酬を付与するため、深セン政府と協力しデジタル人民元で「red packets (紅包:中国の祝儀)」を支払ったと説明した。

Fan氏は今回の試験的取引で11万3,300以上の個人用デジタルウォレットと、約8,800の法人用デジタルウォレットが開設されたことも併せて公表した。

一方で暗号資産(仮想通貨)に関しては、金融不安の原因になる可能性があるとし、依然として非常に厳しく取り締まりをしているようだ。

Fan氏は上海銀行の会長や中国投資公社の副書記を務めてきた経歴も持っており、以前より暗号資産が将来的に中央銀行の貨幣印刷能力を脅かす可能性があると警告していた。同氏によると、「中央銀行はデジタル人民元によってリアルタイムに経済活動を追跡できる点を評価している」とのことで、中央銀行自体が発行・管理することが重要だと捉えているようだ。

画像:Shutterstock