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米大統領選から探る、暗号資産業界の行末 第二回

日本では報道されないトランプの功績

トランプの圧倒的経済パフォーマンス

大統領選挙では直前の10月にサプライズが起きて選挙情勢を大きく変化させることをオクトーバーサプライズという。10月2日未明(現地時間)にトランプ大統領夫妻が新型コロナウイルスに感染したことをTwitter上で表明し、まさかのオクトーバーサプライズとなった。10月8日現在、通常の執務に復帰したとのことだが、側近のミラー上級顧問の感染も確認されており、ホワイトハウスでの感染拡大は予断を許さない状況だ。

トランプ大統領の感染発覚でニューヨーク株式市場も一時400ドル急落するなど経済へも有り難くないサプライズとなった。その経済は新型コロナウイルスの世界的パンデミックで大きく様変わりしてしまった。本年大統領選挙が行われるアメリカでも2020年4月から6月期のGDP年率はマイナス32.9%という統計開始以来の最悪の水準を記録した。記憶に新しいリーマンショック時ですらマイナス8%だったことを考えても、いかに爪痕が大きいかが窺い知れるというものだろう。

新型コロナウイルスが社会経済に打撃を与える以前はトランプ大統領が圧勝すると言われてきた。その根拠は大規模な減税・規制緩和による経済成長をもたらしたことである。

ピューリサーチセンターの調査「2020年の大統領選挙で何を重視するか[1]」では有権者の79%が最も重要な政策課題は経済であると述べており、2位のヘルスケアを大きく上回った。この調査はコロナウイルスのパンデミックが続く7月27日から8月2日実施されたものであり、依然多くのアメリカ人が大統領選挙においても経済を重視していることが分かる。

トランプ減税と規制緩和

在任中、トランプ大統領は徹底した減税と規制緩和を強力に推し進めてきた。法人税を35%から21%まで引き下げ、海外での所得をアメリカに還流させても原則非課税とした。10年間で総額1.5兆ドルに上る減税で、GDPの約1%規模の減税だ。こうした減税の恩恵は雇用増や賃上げという形で波及効果をもたらし、共和党ライアン下院議長(当時)の言葉を借りれば「賞与や賃上げ、国内投資といった施策を発表した企業は160社を超え」、260万人の米国労働者の賃金が上昇することとなった。

アメリカで活動する日系企業も減税の恩恵を受けており、サントリーホールディングスやJVCケンウッドなどは業績を上方修正していた。サントリーに至っては980億円も利益が押し上げられる結果となっていた。こうした大減税はアメリカの失業率を過去最低水準の4.1%まで押し下げ、約3%の経済成長をアメリカ社会にもたらした。

規制撤廃についても「One In, Two Out」というルールを導入し、1つの規制をつくるには2つ以上の規制を撤廃しなければならないという姿勢を徹底した。アメリカ連邦政府が公示した全ての規制は連邦規則集(CFR)という書類にまとめられるのだが、2016年にトランプ大統領が就任した時点で約18万5,053ページに上り、242冊の分量に達していた。こうしたページ数は1960年の時点で2万2,877ページしかなかったわけで、半世紀を経て単純計算で規制は約9倍に増加していたことになる。

アメリカの保守派は基本的に自由主義経済が正しく、こうした規制は自由な経済発展を妨げる要因であると考える。規制自体が自由な経済活動を阻害する上に、規制を運用するため行政機関が肥大化することとなり、その維持のために税金がコストとしてのしかかってくるためだ。アメリカの企業競争研究所の試算では、連邦規則を遵守することで生じる経済的な打撃は年間1兆9,000億ドルと試算されており、規制がもたらす経済損失については保守派からも抗議の声が上がっていた。

トランプ政権は史上稀にみる規制撤廃政権であり2017年には「One In, Two Out」ではなく、「One In, 22 Out」を達成している。まだ道半ばではあるが2019年までに184の規制撤廃を実現[2]しており、こうした規制撤廃がもたらす経済効果も評価されてきた。

一方でバイデン陣営はトランプが引き下げた法人税を28%まで引き上げ、富裕層の最高税率を37%から39.6%に引き上げることを表明した。所得の再分配で経済格差が浮き彫りとなるアメリカ社会において、支持を糾合する狙いがあるとみられる。トランプ大統領は本年の大統領選挙でも更なる減税を訴えており、減税のトランプと増税のバイデンという構図が定着しつつある。

バイデン路線に舵を切ることになれば、増税・行政府の肥大化が懸念されている。

ペンシルバニア大学ウォートン校の試算によれば、バイデンの政策を実施した場合、向こう10年で合計5兆4,000億ドル(約570兆8,500億円)が追加で必要となるという。これは2030年までにアメリカの国内総生産のうち24%を連邦政府の支出が占めることを意味し、行政府は肥大化することになる。行政府の肥大化は規制強化と同義でもある。バイデン氏はリベラル派や社会主義者をブレーンに据えていることから、バイデン政権となれば「富裕層の資産」と認識されている暗号資産(仮想通貨)などへの風当たりは強くなることが予測される。

最終回となる次回はトランプ、バイデン双方の暗号資産などへの政策を見てゆきたいと思う。

脚注

[1] Election 2020: Voters Are Highly Engaged, but Nearly Half Expect To Have Difficulties Voting ”4. Important issues in the 2020 election”

[2] What Regulations Did the Trump Administration Eliminate in 2019?

Profile
文◉佐藤 正幸(さとう まさゆき)
1987年3月31日生まれ。
早稲田大学国際戦略研究所招聘研究員(アメリカ学会/日本アフリカ学会)
早稲田大学商学部卒業後、国際石油開発帝石株式会社に入社。原油営業、カナダ駐在を経て独立。2016年にケニアで開催された第六回アフリカ開発会議外務省公式サイドイベントで事務局長を務める。2018年からアメリカ共和党最大の政治集会CPAC日本開催運営委員会のメンバーとして、アメリカ保守派を多数取材。翻訳協力に「Trump’s Americaその偉大なる復活の真相」(産経広告社)など多数。

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