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第一回 元銀行員が見据える、「銀行と仮想通貨」の今後

月刊仮想通貨vol.4 2018年5月23日発売号より

銀行の存在価値を揺るがす仮想通貨

仮想通貨の過熱ぶりは、昨年からニュースでも大きく報道されたが、一番焦りを感じたのは間違いなく金融機関、特に銀行だろう。
ご存知の通り、振込や海外送金などの決済業務は長年、銀行がその役割を担ってきた。
新規参入のハードルが高い事業として、メガバンクや地方銀行などが経済における重要な役目を果たしてきたといえる。
しかし、著者も銀行員時代から痛感してきたが、銀行はいまだに旧来の決済システムに依存しているのが現実だ。
夜間や土日祝日での決済に対応できず、振込処理が翌営業日扱いになり、あなたも歯がゆい経験をした事があるだろう。
国際送金ともなると、決済に数日かかってしまうケースもある。
そして、ネットバンキングが普及してきたとはいえ、今もなお、銀行窓口に行けば、通帳や印鑑を求められ、振込のための帳票をその都度書かなければいけない慣習は変わっていない。
そんな従来の慣習に一石を投じる事となったのが、まさしく仮想通貨だ。
ブロックチェーン技術によるP2P(個人間決済)の発達により、「銀行へ依存しない決済のカタチ」は、すでに現実的な未来として注目が集まっている。
手元のパソコンやスマホから、メッセージを送るかのごとく、いとも簡単に資金決済が可能となりつつある。
それも曜日や場所、時間帯を気にする事なく、だ。
また送金コストにおいても、仮想通貨は銀行の振込手数料を大きく下回る事ができるという期待も寄せられる。
銀行の存在価値を揺るがしかねない事態は、刻一刻と迫っているのだ。

2018年は、「仮想金融元年」になるか

金融機関も仮想通貨事業へ参入するニュースは、すでに続々と発表されている。
三菱UFJ銀行は、独自の仮想通貨「MUFGコイン」の開発をリリース。
国内の銀行による初めての仮想通貨発行となるため、大きな話題を呼んだ。
MUFGコインは2018年度中の実現を目指し、同社の社員を対象に試運転も始まっている。
また大手ネット証券を持つマネックスグループも、仮想通貨取引所コインチェックの買収に乗り出した。
国内の人気仮想通貨取引所であるコインチェックをどこが傘下にするのかと注目が集まっていたが、金融事業の新しい柱にすべくマネックスが手を挙げたというわけだ。
加えて、インターネット総合金融グループの最大手SBIが手がける仮想通貨取引所「SBIバーチャル・カレンシーズ」も、サービス開始が待たれている。
仮想通貨が秘める可能性は、金融機関としても見過ごす事はできないというわけだろう。
2017年は「仮想通貨元年」といわれたが、今年2018年は「仮想金融元年」になる可能性はじゅうぶんにある。
旧来の決済システムに依存していた銀行も、急激な変革を求められているのだ。
仮想通貨を敵対視するよりは、同事業へ自ら参入しようと決断したという見方が持てる。
もちろん、ユーザーにとってはこの流れによって、さらなる利便性の向上への期待もある。
カギとなるのは、ブロックチェーン技術の活用だろう。
ご存知の通り、口座開設や住所変更などにおける本人確認業務は、金融機関ごとに行う必要あったのが従来の慣習だ。
新しい銀行や証券会社を利用する際には都度、本人確認書類を提出し、専用の帳票を記載しなければいけないという煩雑な手続きに嫌気が刺していた人も多い事だろう。
この問題を解決案として、ブロックチェーン技術を用いた個人情報の一元化に向けた取り組みがすでに動き出している。
本人確認の登録情報を他の金融機関でも活用できれば、ユーザーの使いやすさも飛躍的に上がり、冒頭でお話したような「銀行離れ」に歯止めをかける事も期待できるだろう。

金融面にて、需要の高い仮想通貨に注目を

さて、では投資家として今後の局面をどう見るかを考えてみる事にしよう。
仮想通貨市場の成長において一つ大きなポイントとなるのは、仮想通貨と相性の良い金融業界における早期の実用化だといえる。
では、金融業界において注目されている仮想通貨は何かついて、考察していきたい。
「金融×仮想通貨」と聞いてすぐ思い浮かぶ銘柄といえば、間違いなくリップル(XRP)だろう。
いわゆる仮想通貨の「非中央集権的」な特徴とは違い、リップルは米Ripple社による実質的な中央集権通貨といえるが、銀行間取引の代表的なツールとしてさらに注目を浴びていくと考えられる。
Ripple社はすでに世界中で100以上の金融機関との提携している事も強みとなっており、また日本人のリップルに寄せる関心も高く、国内取引所のbitbank(ビットバンク)にて、リップルの取引量が世界一になったニュースも記憶に新しい。
「住信SBIネット」や「りそな」など国内の銀行では、リップル技術を利用したスマホ送金アプリも、今年の秋から開始する予定である。
投資家にとっては金融業界における、実用化に向けた需要を見極める一つの好機だといえよう。
仮想通貨というと、どうしても相場の値上がりや売買の話が注目されがちだが、その根拠となる仮想通貨銘柄ごとの役割や、仮想通貨の普及による従来のシステムからの変遷にもぜひ注目してみて欲しい。
特に銀行を始めとした金融業界は、仮想通貨との繋がりが自ずと強くなっていく事は必然であり、今後の動きにも注視が必要である。
既存の金融機関は、自分たちだけの独立独歩で仮想通貨事業に取り組んでいくより、フィンテック(金融技術)のノウハウをすでに蓄積しつつある、仮想通貨取引所の運営サイドなどと連携を選ぶのが賢明だと考えられる。
金融機関の密接な関わりが増え、仮想通貨がさらに普及していった時こそ、新たな需要と投資の機会が待っているだろう。
今後も、「銀行と仮想通貨」のホットな話題には、目が離せなくなりそうだ。
ぜひ投資家の方々にも、より注目をして頂きたい。

Profile
小林亮平
元メガバンク銀行員。
三菱UFJ銀行に3年9ヶ月勤務後、現在は仮想通貨ブログ「BANK ACADEMY」を運営。
月30万PV達成し、ソフトバンク系列のSBクリエイティブ社より電子書籍も出版。
銀行員時代は法人業務に従事、丸の内の本部経験もあり。
【著者HP】https://bank-academy.com/