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2021年総括。世界に衝撃を与えた暗号資産業界

2021年は暗号資産業界にとって大きな節目とも言える年になった。

暗号資産相場は年初から右肩上がりに上昇し、11月にはビットコインが過去最高値となる6万9000ドル(約785万円)を記録。イーサリアムや他主要アルトコインにおいても飛躍的に価格は上昇し、暗号資産市場が活況であることを印象付けた。

ビットコインの価格は最大で年初来から約2.6倍となった。一方、暗号資産市場全体の時価総額は年初来が約7700億ドル(約88兆円)であったのに対し、11月には3兆ドル(約330兆円)まで増加。約3.9倍もの市場拡大を見せた背景には、やはりイーサリアムなどのアルトコインの活躍が大きかったことがうかがえる。なかには今年に入り台頭した銘柄も多く見受けられ、今後に期待が集まる分野に関連した銘柄の高騰は目を引くものがある。その代表格とも言えるのが「NFT(非代替性トークン)」関連銘柄だ。

デジタル上にあるアイテムなどの所有権をブロックチェーンで証明することができるNFTは、暗号資産業界にとどまらず、国内外の多岐にわたる業界・分野で注目を集めた。国内においては2021年の「新語・流行語大賞」にノミネートされるなど、まさに今年の暗号資産業界を語る上で外せないトピックスになったと言える。

2021年後半から年末にかけては、Facebookが社名を「Meta」に変更し注力していく姿勢をみせた「メタバース」にも熱視線が注がれている。メタバースは仮想空間上でのコミュニケーションやゲームなどを指すもので、デジタルアイテムの所有権を証明することができるNFTとの相互性の高さに注目が集まっている。

多くの識者や様々な業界の大物らが指摘するように、今後メタバースは飛躍的に成長することが予見されている。この分野に関連し、NFTもさらに注目を集めていくことが予想されるため、2022年においても当面はホットワードとして業界の中心に位置することだろう。

2021年の暗号資産業界において歴史的かつ重大な出来事となったのは、エルサルバドルによるビットコインの法定通貨化だ。この構想がブケレ大統領の口から発せられた際には実現可能性に疑問符がついたが、その後の動きは早かった。

6月4日にビットコインのカンファレンスで言及すると、そのわずか5日後の6月9日には法案の可決にこぎつける。事前に入念な準備をしていたことも功を奏したのだろう。

9月に入り正式にビットコインが法定通貨になると、エルサルバドルではビットコインに関連した施設やマイナーの誘致などに積極的な姿勢を見せ始める。

ブケレ大統領の英断により、エルサルバドルの国益も増えつつある。今後もこの壮大な社会実験の動向に注目が集まるだろう。

エルサルバドルのようにビットコイン・暗号資産に前向きな国が顕著に見られた一方、締め付けを強化する国もまた増加した。その筆頭と言えるのが中国だ。

中国では兼ねてから暗号資産を取り締まる動きが見られていたが、急速にその圧が強まった。背景にあるのは中国のエネルギー問題、そしてデジタル人民元の存在だろう。

中国は今もなお、電力不安に悩まされている。水力発電が多い中国ではあるが、化石燃料を用いた発電も少なくないため、石炭不足は非常に大きな問題となっている。

一般に、ビットコインをはじめとした暗号資産のマイニングでは多くの電力を用いるとされている。これまで中国はビットコインのマイニングにおいて世界一という確固たるポジションを築いていたが、それもエネルギーがあってこそのものだ。そのエネルギーの供給が不安定な今、マイニングにメスを切り込むのは必然であったと言える。

そしてデジタル人民元は、いよいよローンチに向け最終段階に入りつつある。そのため、自国資産の流出につながり、さらにはデジタル人民元の普及を阻害しかねない暗号資産を厳しく排除しようと動いているのが現状だ。

暗号資産規制の強化により、中国でビットコインマイニングを行うマイナーは撤退・廃業を余儀なくされ、その影響からハッシュレートは一時2019年7月頃の水準まで急落した。それでも、各国へのマイナーの分散が進み12月下旬には再び最高水準にまでハッシュレートは回復している。

また将来的な目線で考えれば、マイナーが分散されたことにより、政治的背景や規制等によるリスクも分散化することにつながるため、ポジティブな見方をすることもできるだろう。

なおデジタル人民元については、世界経済に多大な影響力を持つ中国が通貨覇権を睨むことに対し、各国は警戒感を強めている。こうした背景から、今年に入りCBDC(中央銀行デジタル通貨)をめぐる動向が各国で非常に激しくなっており、導入に向け前向きな検討がなされている。大国のなかでも特にCBDC開発が先行している中国に追いつくべく、今後も加速度的に取り組みが行われていくことだろう。

2021年の重要トピックスの1つとしては、米国において史上初めてビットコインETF(上場投資信託)が承認されたことも挙げられる。

これまで米国では幾度となくビットコインETFの申請が行われてきたが、SEC(米証券取引委員会)が提示する要件を満たすことができず、却下され続けてきた。しかし、今年に入り暗号資産への知見を持つゲイリー・ゲンスラー氏がSEC委員長に起用されたことで風向きが変わった。同氏は「先物ベースのビットコインETFを支持する」と述べ、これによりビットコイン先物ETFの申請が相次いだ。その後、10月にProSharesのビットコイン先物ETFが承認され、暗号資産業界の悲願が達成された格好だ。

世界経済の中心である米国でビットコインETFが誕生したのは非常に大きな意義がある。ビットコインをETF化することにより、機関投資家などの投資窓口が拡大し、暗号資産市場に流入する資金も飛躍的に増加することが見込まれるからだ。

その一方で、まだ現物のビットコインETFについては承認されていない。SECは投資家保護の点で難色を示しており、実現に向けたハードルは依然として高いと言える。それでも、実現した際にはこれまで以上に暗号資産市場へ資金が流入してくることが予想されることから、引き続き大きな期待が寄せられるだろう。

2021年の暗号資産業界を振り返ったが、他にもミームコインの筆頭であるドージコインの高騰、イーロン・マスク氏率いるテスラ社によるビットコインの購入、さらには米暗号資産取引所コインベースのナスダック上場など、数多の話題があった。

2021年の暗号資産業界を言い表すならば、「認められた」という言葉が真っ先に出てくる。それはエルサルバドルにおけるビットコインの法定通貨化をはじめ、SECによるETFの承認やコインベースの上場でも同じことが言える。暗号資産の排除に動いた中国においても、自国経済の脅威になると「認めた」ため、規制を強化したと見ることができる。これらの出来事を鑑みれば、まさに暗号資産のステータスが世界的に上昇したと言えるのではないだろうか。

世界に衝撃を与えた2021年の暗号資産業界。2022年の暗号資産業界も著しい成長と発展を見せていくことだろう。