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2020年総括。歴史的な年となった暗号資産業界

2020年の暗号資産(仮想通貨)業界はまさに歴史的かつ激動の1年となった。

暴騰に暴落、半減期、DeFi(分散型金融)。決済に関連して大手企業の参入や各国のCBDC(中央銀行発行デジタル通貨)発行の検討など、休む間もなく時が過ぎ去っていった印象だ。

なかでも、ビットコインが過去最高値更新となる2万ドルを突破したことは極めて重要な出来事と言える。

ビットコインをはじめとした主要銘柄は1月の中東情勢不安の影響もあり、年初から高騰が目立った。しかし同時に、歴史的なパンデミックとも言える新型コロナウイルス・COVID-19の影響も非常に大きかった。

世界的に株価の大幅下落が相次ぎ、3月にはNYダウで3回ものサーキットブレーカーが発動。日経平均株価においても、年初に2万3,000円台から取引が始まったにも関わらず1万6,500円台まで下落するなど、新型コロナウイルスが世界経済に与えた影響は計り知れないものとなった。

暗号資産(仮想通貨)市場にも同様の出来事が起きた。

それまで80万円ラインを推移していたビットコインは、一夜にして40万円台まで暴落。他主要銘柄においても40〜50%ほどの急落が見られ、上昇気流に乗ろうとしていた矢先に2019年3月頃の水準まで下降してしまった。

だが、4年に1度の重要イベントであるビットコインの半減期を前に、暗号資産(仮想通貨)市場はすぐさまリターン。結果、ビットコインは主要指標に先行し約1ヶ月半で元の価格まで戻した。

その後、原油先物価格が史上初となるマイナス価格をつけるなど経済の混乱を垣間見る状況は続いたが、ビットコインは安定して右肩上がりの推移を見せ形だ。

8月頃からはDeFiが盛り上がりを見せた。

DeFiは日本語で「分散型金融」を指す管理者不要の非中央集権的サービスだ。

このサービスでは暗号資産(仮想通貨)の貸付、借入を行うことができ、貸付を行ったユーザーは利子を得ることができる。DeFiに関係した銘柄が大きな注目を浴び、この時期の暗号資産市場を席巻したのは火を見るより明らかであった。

それほど、DeFiの勢いは凄まじいものであったと言える。

現在は落ち着きを見せ、いわゆるブームのようなものは過ぎ去ったと言えるが、ブロックチェーンを用いた新たな金融のあり方を実現する可能性を秘めているだけに、今後も無視できない存在だ。

金融に関連して、新型コロナウイルスの影響で各国がCBDCの検討を本格的に始めたことも今年のトピックスの1つと言える。

その中でも、昨年から注目を集めていた中国のデジタル人民元(DCEP)は堅調に開発が進められており、噂されていた2022年の北京オリンピックでのお披露目も現実味を帯びてきた。

今年はバハマで「サンドダラー」、カンボジアで「バコン」といったCBDCが正式に運用されたが、経済規模で見た際にはやはり中国の動向が重要となってくる。

各国首脳は中国のCBDC発行に関する動きに警戒心を強めている状況だ。

しかし米国や日本などの後発組との差は歴然で、例え国際社会が中国包囲網を強めようとも、デジタル人民元の開発は間違いなく進み、そして絶大な影響力を持つことになる。

日本政府もCBDCの本格検討を始めると7月に発表し、日銀も具体的な実証実験のスケジュールを明らかにした。

来年の早い時期から検証を行うとのことで、こちらの動向も来年の肝となりそうだ。

話を暗号資産に戻すと、今年大きく変わったのは機関投資家の参入だろう。

世界的に暗号資産(仮想通貨)を取り巻く環境が整備され、さらに市場も拡大してきている。

そういった背景から、ビットコインを中心に暗号資産(仮想通貨)を「資産」の1つとしてポートフォリオに入れる企業が急速に増加している。

10月頃から始まったビットコイン価格の急伸も、米決済企業Squareが準備金としてビットコインを購入したという一報が始まりだった。そしてここまでの高騰につながった決定打はPayPalの参入だろう。

世界的な決済会社であるPayPalも10月に暗号資産(仮想通貨)業界への参入を正式に発表し、11月より正式にサービスを開始した。

3億人超のユーザーと2,600万店舗にも及ぶ加盟店を抱えるPayPalが暗号資産サービスを展開する意義は非常に大きい。暗号資産(仮想通貨)の認知向上につながるだけでなく、本来の用途である「決済手段」としての能力を発揮することができるからだ。

暗号資産(仮想通貨)サービスは現時点で米国ユーザーのみが利用できる状態だが、2021年には傘下のモバイルアプリを通じて全世界のPayPalユーザーが利用できる予定となっている。

さらには、PayPalに追随する形で他決済企業の参入も考えられる。

そうなれば、より暗号資産(仮想通貨)の需要は高まり、市場にもさらなる盛り上がりが見られることだろう。

目下、執筆時のビットコイン価格は280万円台を推移。一時300万円まで僅かに迫る展開を見せた。

アルトコインも少々遅れ気味に上昇しつつある状況ではあるが、2020年の最後に落とされた「SECによるリップル社訴訟」という爆弾を前にやや動きが鈍くなっているように見える。

ポジティブに捉えれば長年議論されてきたリップルの「有価証券問題」がついに解決することになるが、時価総額上位の位置を揺るぎないものにしてきた銘柄だけにその影響は大きい。

11月末から価格を大幅に上昇させ、一時は80円まで到達したリップルも、SECの訴訟の影響で即20円台へと急落した。

この問題に関しては2021 年早々、物議を醸すような一報が散見される可能性もある。リップルの下落が引き金となった「リップルショック」のような現象が再び起きる可能性もあるため、市場動向を常に注視し、続報にアンテナを貼っておく必要があるだろう。

2020年という年はあらゆる面において特別であった。

新型コロナウイルスのパンデミックもそうだが、米大統領選や長期政権となった安倍政権の突発的な終焉、そしてオリンピックの延期など、国内外を問わず衝撃的な出来事が絶え間なく続いた。

そういった状況下で、既述した法定通貨や決済手段、そしてマスクの着用や感染症対策に伴う生活様式の変化が見られた。

まさに2020年は「時代の転換期を迎えた年」であると言えるだろう。

その中でビットコインが高騰し、他暗号資産(仮想通貨)においても多種多様な需要から注目を浴びたというのは極めて重要なことだ。

ビットコインの認知が一気に広がったキプロス危機時のように、世界経済に重大な変化が起きた際、その価値が発揮されるということが改めて証明されたのではないだろうか。

昨年の総括では「2020年は暗号資産業界の行く末を左右する年になる」と断言したが、結果的に暗号資産史に刻まれる年となったのは間違いない。

2020年は有為転変とも言える情勢であったが、世の中が再び平穏を取り戻す過程で、暗号資産(仮想通貨)やブロックチェーンが重要な役割を担うとともに、2021年が業界にとってさらなる飛躍の年となることを強く願うばかりだ。