月間暗号資産

  • HOME
  • KNOWLEDGE
  • 誰でもわかる、暗号資産(仮想通貨) 第8章

誰でもわかる、暗号資産(仮想通貨) 第8章

DeFi(ディファイ)とは?

今注目を浴びる分散型金融の正体に迫る

 コロナショックによる経済不安が叫ばれるなか、暗号資産(仮想通貨)市場は好景気に沸いている。7月末にはビットコインが、心理的な壁になっていた1万ドルを一気に突破。一時は120万円付近にまで高騰した。
 さらに時価総額ランキング2位のイーサリアムも8月に入ってから年初来最高値を記録。8月14日には46000円台にまで価格を上げている。前回イーサリアムが46000円台をつけたのが2018年8月であることを考えれば、直近2年間のなかでもっとも暗号資産市場が盛り上がった月であることがわかるだろう。

 そんな暗号資産市場を牽引しているのがDeFi銘柄と呼ばれる暗号資産たちである。DeFiとはいったいなんなのだろうか。

分散型金融(DeFi)とは?

 DeFiはDecentralized Financeの略語で、日本語では「分散型金融」と訳され
る。つまりDeFiとは、ブロックチェーンのネットワーク上に構築される金融関連のサービス・アプリケーション・エコシステムを指す。簡単に言い換えれば、
銀行や証券取引所、貸金サービスなどの既存の金融サービスをブロックチェーン上で行うことともいえる。

 ただしDeFiには従来の金融サービスと大きな違いがある。ブロックチェーン上で行うこと、つまり非中央集権型のサービスであるという点である。従来の金融サービスには、かならず管理者が存在する。送金には銀行が、証券取引所には証券会社が、といった具合に。

 一方、多くのDeFiは管理者不在の分散型サービスを志向している。誰でも利用でき、オープンで透明性が高いサービスを実現しようとしているのだ。管理者を必要とせず、非中央集権的でトラストレス(信頼を担保するものや組織を必要としない)なお金としてビットコインが存在するように、金融業界にもその思想を取り込もうとしているのだ。

 従来の金融サービスは、管理者の存在によって多くの制約を受けている。たとえば管理者が拠点にしている国の律に従って利用者を制限していることなどが挙げられる。一方、DeFiは誰もが自由にアクセスできる金融サービスを提供できるのだ。また、現在の金融サービスでは管理者の都合によってサービスを利用できる時間が制限されている。しかし管理者がいないDeFiは24時間いつでもアクセスできるサービスも実現可能なのだ。

 さらに利用者にとって重要なことは、手数料が従来のシステムよりもはるかに安価となるという点である。これらのメリットを持つDeFiは、従来の金融サービスでは不可能であった新たなサービスや、はるかに便利なサービスを作り上げる可能性があると期待されている。

なぜDeFiが話題になったのか?

 DeFiは広い意味では「ブロックチェーンを使っている金融サービス」全般を指す。とはいえ金融の範疇に含まれるものはあまりにも多いので、具体例としてレンディング(貸金)、と取引所について紹介する。

❶レンディング

 DeFiのレンディングとは、プラットフォームに対して暗号資産(特にETHがよく用いられる)を担保として預けることで、別の暗号資産(仮想通貨)を借りることができる仕組みである。担保が必要となるため一般的な借金とは仕組みが違う点には注意しよう。

 このようなサービスを利用する理由は、たとえばETHを担保としてステーブルコインを借り、他の暗号資産(仮想通貨)に投資する場合などがあげられる。この場合、自身が保有するETHを利確することなく資金を入手できることになる。代表例にはCompound、Aaveなどがある。

❷取引所

 暗号資産(仮想通貨)取引所も、管理者が存在する金融サービスの一種である。従来の取引所では、取引ペアの制限や手数料などが存在する。そこでブロックチェーン上で非中央集権的に稼働するDEX(分散型取引所)が誕生したのだ。

 ユーザーは取引所事業者に資産を預ける必要なく、自らのウォレットから他の人と直接取り引きができるようになる。代表的なDEXにはIDEX、Kyber Networkなどが挙げれる。

 これらのサービスだけではなく、たとえばステーブルコインや、DeFiサービ
スに流動性を提供する仕組みなどもDeFi銘柄と呼ばれている。DeFiへの注目が高まり、DeFiに関連する暗号資産(仮想通貨)が次々と高騰したのが、8月の暗号資産市場である。なお、多くのDeFiはイーサリアムをプラットフォームとしている。

 その結果、イーサリアムの有用性が証明され、需要がましたことでETHの高騰も引き起こしている。

DeFiブームと今後の展望

 ここまで紹介してきたとおり、既にDeFiに分類される多くのサービスが実際に稼働している。これらはDeFiの実用例であるだけではなく、ブロックチェーン及び暗号資産(仮想通貨)の実用例にもなっている。

「インターネットに次ぐ発明」ともいわれてきたブロックチェーンだが、実は実
用例はまだ多くはない。多くは暗号資産(仮想通貨)取引に関連するもので、ブロックチェーンや暗号資産本来の価値や有用性ではなく、金融商品のキャピタルゲインを求める投資家の間でのみ使われてきた。そこにキャピタルゲイン以外のメリット人々に提供するものとしてDeFiが登場したのだ。

 このような盛り上がりはかつて「ICOブーム」でも発生した。ICOで
は、将来性があり有望そうに思えるプロジェクトがホワイトペーパー(事業計画
書)を公開し、独自のトークンを販売して投資家から資金調達を実施した。そして独自に発行したトークンを各種取引所に上場し、投資者がそれを売却することでキャピタルゲインを得るという仕組みとなっていた。

 ICOブームといわれた2017年には、数々のICOが数億円単位での資金調達に成功し、次々と高騰していったことが記憶に新しいだろう。しかし、ICOには弱点があった。それは、具体的なプロダクトやサービスがない状態で多額の資金が投入された点である。より将来性があるように〝見せかけた〟プロジェクトが次々と乱立し、実際にはなんの成果を上げることもなく終了した例は枚挙にいとまがない。そして多くのICOコインは暴落し、ほぼ無価値になっていった。

 このようなICOブームの狂乱と比べてみると、DeFiにはプロダクトやサービスが存在するという違いがある。空虚な妄想を売っているのではなく、実際のサービスを提供してその実用性が資金を集めているのだ。そういった面では、ICOよりもブームとしての実態を持っている点はDeFiの強みといえるだろう。

 ただし、実態を伴っているとはいえ、現在の価格がその実態を正しく反映しているとは限らない点には注意が必要だ。暗号資産に限らず、あらゆる投資には投資家の心理が反映されるからである。価格が上がりそうだから買う。それによって価格が上がったので、さらなる買いが入る。

 このようなサイクルに入ったときには、実際の価値を無視して価格が上昇し続けてしまう。しかし実態を伴わないバブルはいつか終わる。
 すでに多くのDeFi銘柄が短期間で数倍、数十倍に高騰している現在、バブルはいつ弾けてもおかしくないのだ。もちろん、現在のDeFi銘柄の価格が「実際の価値よりも低く見積もられている」可能性も否定できない。しかし、永遠に価値が上がり続ける金融商品はこの世に存在しないということは、理解しておく必要があるだろう。